【2026年版】フリーランス新法における契約書の書き方|発注時の明示義務7項目を弁護士解説
フリーランス新法における契約書の書き方を弁護士監修で解説。発注時に明示すべき7項目、書面・電磁的方法の要件、違反時の罰則、電子契約での効率的対応まで2026年最新版で完全ガイド。
「フリーランスに発注しているけれど、契約書はメールベースで済ませている。これって違法?」 「フリーランス新法が施行されたと聞いたが、具体的に何を契約書に書けばいいの?」 「明示義務を怠った場合、どんな罰則があるの?」
2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(通称:フリーランス新法、または特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスに業務を発注するすべての事業者に「取引条件の明示義務」を課しました。
この記事では、フリーランス新法 契約書の書き方を、条文の根拠を示しながら正確に解説します。明示すべき7項目、書面・電磁的方法の要件、違反時のリスクから、電子契約サービスを使った効率的な対応方法までを、発注側の実務目線でまとめました。
📌 本記事は、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省公表資料、政令・規則をもとに、弁護士監修で執筆しています。最終的な適否判断は、所轄行政機関または弁護士にご確認ください。
この記事の結論(先に要点だけ)
- フリーランス新法は、特定受託事業者(フリーランス)に業務委託する全事業者に取引条件の明示義務を課している
- 明示が必要な項目は政令で7つ(給付の内容、報酬額、支払期日など)に整理されている
- 明示は書面または電磁的方法(メール・電子契約等)で、発注時に直ちに行う必要がある
- 違反すると、勧告・命令・最大50万円の罰金、企業名公表などのリスクがある
- 電子契約サービスを使えば、テンプレート化により明示義務の漏れを大幅に減らせる
目次
- フリーランス新法とは|2024年11月施行の概要
- 対象となる「発注者」と「フリーランス」の定義
- 契約書(取引条件の明示)で記載すべき7項目
- 明示の方法|書面・電磁的方法の要件
- 7項目以外の発注者の義務(報酬支払・ハラスメント防止等)
- 違反した場合の罰則・リスク
- 電子契約サービスで効率的に対応する方法
- 実務対応チェックリスト
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:発注前の「明示」が最大の防衛策
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1. フリーランス新法とは|2024年11月施行の概要

フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、2023年4月28日に成立し、2024年11月1日に施行されました。所管は、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省の3省庁です。
立法目的は、フリーランス(特定受託事業者)と発注事業者の間の取引適正化と、フリーランスの就業環境整備にあります。
なぜ新法ができたのか
これまで、フリーランスへの発注は 下請代金支払遅延等防止法(下請法)で一部規制されていましたが、下請法は資本金区分(発注者:資本金1,000万円超 等)があり、資本金の小さい企業や個人事業主が発注者の場合は規制対象外でした。
フリーランス新法は、この資本金要件を撤廃し、「すべての発注事業者」を対象に取引条件の明示義務を課したのが、最大のポイントです。
法律の主な内容(概要)
| 項目 | 内容 | 所管 |
|---|---|---|
| 取引条件の明示義務(第3条) | 発注時に書面・電磁的方法で7項目を明示 | 公取委・中小企業庁 |
| 報酬支払期日(第4条) | 給付受領日から60日以内・できる限り短い期間 | 公取委・中小企業庁 |
| 禁止行為(第5条) | 受領拒否・報酬減額・買いたたき等の禁止 | 公取委・中小企業庁 |
| 募集情報の的確表示(第12条) | 募集情報を正確かつ最新の内容に | 厚労省 |
| 育児介護等への配慮(第13条) | 申出に応じて必要な配慮 | 厚労省 |
| ハラスメント防止(第14条) | 体制整備等の措置 | 厚労省 |
| 解除予告(第16条) | 6か月以上の継続業務委託の解除は30日前予告 | 厚労省 |
このうち、契約書(明示)に直接関わるのが第3条です。
2. 対象となる「発注者」と「フリーランス」の定義
フリーランス(特定受託事業者)とは(第2条第1項)
法律上の「特定受託事業者」は、業務委託の相手方である事業者のうち、次のいずれかに該当する者を指します。
- 個人であって、従業員を使用しないもの
- 法人であって、代表者以外に他の役員がおらず、かつ、従業員を使用しないもの
つまり、従業員を雇っていない個人・法人(いわゆる「ひとり事業者」)が対象です。
発注者(業務委託事業者・特定業務委託事業者)とは(第2条第5・6項)
発注者側は、自社の体制によって次の2区分に分かれ、課される義務の範囲が異なります。
| 区分 | 該当者 | 義務範囲 |
|---|---|---|
| 業務委託事業者 | 特定受託事業者に業務委託する事業者(従業員なし) | 第3条(明示義務)のみ |
| 特定業務委託事業者 | 上記のうち従業員を使用する事業者 | 第3条〜第16条すべて |
従業員を1人でも雇っていれば、フリーランス新法上のすべての義務が課されることになります。
「業務委託」の範囲
業務委託には、以下の取引が含まれます(第2条第3項)。
- 物品の製造・加工の委託
- 情報成果物の作成(プログラム、デザイン、原稿、動画、音楽など)
- 役務の提供(コンサルティング、講師、運送、その他サービス)
たとえば、ライターに記事執筆を頼む、デザイナーにロゴ制作を頼む、フリーランスエンジニアに開発を委託する、いずれも対象です。
3. 契約書(取引条件の明示)で記載すべき7項目
フリーランス新法 契約書の中核となるのが、第3条が定める「取引条件の明示義務」です。
📖 条文根拠:フリーランス新法第3条第1項 「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額その他の事項を…書面又は電磁的方法により明示しなければならない。」
具体的な明示事項は、施行規則第1条で7項目に整理されています。
明示が必要な7項目
| No | 項目 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1 | 業務委託事業者・特定受託事業者の名称 | 株式会社A/フリーランス山田太郎 |
| 2 | 業務委託をした日 | 2026年5月21日 |
| 3 | 特定受託事業者の給付の内容 | Webサイト用LPデザイン制作一式 |
| 4 | 給付を受領する期日 | 2026年7月15日 |
| 5 | 給付を受領する場所 | 発注者指定のクラウドストレージ |
| 6 | 検査をする場合の検査完了期日 | 受領日から7日以内 |
| 7 | 報酬の額および支払期日 | 30万円(税別)/受領日から30日以内 |
報酬額が確定できない場合の特則
報酬の額について、業務委託時に確定できない正当な理由がある場合は、報酬の算定方法を明示することで足ります(規則第1条第2項)。
例:時給制での開発業務 → 「時給5,000円(税別)、月末締め翌月末払い」のように記載。
「給付の内容」の書き方が最大のポイント
実務でトラブルになりやすいのが、3番目の「給付の内容」の記載です。曖昧な記載をすると、後から「ここまでが範囲」「いや含まれていない」と紛争になります。
悪い例:Webサイト制作 良い例:トップページ1ページ・下層ページ3ページ・スマホ対応・修正は2回まで・素材は発注者支給
「何を、どれだけ、どこまで」を具体的に書くのが鉄則です。
4. 明示の方法|書面・電磁的方法の要件
第3条は、明示の方法として書面または電磁的方法を認めています。
書面による明示
紙の発注書・契約書を作成して交付する従来の方法です。
電磁的方法による明示
次のいずれかの方法が認められています(規則第3条)。
- 電子メールその他のその受信をする者が使用する電子計算機に備えられたファイルに記録される方式(メール送信、電子契約サービス利用など)
- 磁気ディスク、CD-ROM等で交付する方式
つまり、電子メールにPDFを添付する、電子契約サービスで送信する、チャットツールで送るなども、要件を満たせばOKということです。
電磁的方法を使う場合の追加要件
電磁的方法を使う場合、フリーランスからファイル出力(印刷・保存)できる状態にしておく必要があります。具体的には、PDFファイルや、ダウンロード可能なクラウドリンクなど、フリーランス側で記録に残せる形式が求められます。
「発注時に直ちに」とは
第3条は「業務委託をした場合は、直ちに」明示することを求めています。原則として発注と同時、または発注直後に明示が必要です。
例外として、明示事項のうち「内容が定められないことにつき正当な理由があるもの」については、後日明示することが認められますが、定まり次第「直ちに」追加明示する義務があります。
5. 7項目以外の発注者の義務(報酬支払・ハラスメント防止等)
フリーランス保護新法 契約対応では、明示義務以外の規定も押さえておく必要があります。
報酬支払期日(第4条)
発注者は、フリーランスからの給付受領日から60日以内のできる限り短い期間内に報酬を支払う必要があります。「月末締め翌々月払い」など、60日を超える設定は違法となる可能性があります。
禁止行為(第5条)
特定業務委託事業者が継続的業務委託(政令で定める期間以上)を行う場合、次の行為が禁止されています。
- 受領拒否(フリーランスに責任がないのに受領を拒む)
- 報酬の減額(あらかじめ定めた額から減らす)
- 返品(フリーランスに責任がないのに返品する)
- 買いたたき(著しく低い報酬を不当に定める)
- 物の購入・役務の利用強制
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 不当な給付内容の変更・やり直し
これらは下請法の禁止行為と概ね同じ構造です。
募集情報の的確表示(第12条)
求人広告等で、フリーランスを募集する際には、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはなりません。
育児介護等への配慮(第13条)
6か月以上の継続的な業務委託において、フリーランスから育児・介護等と業務の両立のための申出があった場合、発注者は必要な配慮をする義務があります。
ハラスメント防止(第14条)
セクハラ・パワハラ・マタハラ等に対する相談体制の整備等、必要な措置を講じる義務があります。
解除予告(第16条)
6か月以上の継続的な業務委託を中途解除する場合、原則として30日前までの予告が必要です。
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6. 違反した場合の罰則・リスク

フリーランス新法違反のリスクは、以下のように段階的に重くなります。
ステップ1:勧告・指導
公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣が違反を認定した場合、まず勧告または指導が行われます。
ステップ2:命令
勧告に従わない場合、命令が出されます。
ステップ3:罰則(第24条等)
命令に違反した場合、または以下の場合には罰金が科されます。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 命令違反 | 50万円以下の罰金 |
| 検査拒否・虚偽報告 | 50万円以下の罰金 |
加えて、両罰規定により、行為者だけでなく法人にも罰金が科されます(第25条)。
ステップ4:企業名公表
命令に至った段階で、企業名・違反内容が公表される可能性があります。これにより、
- 取引先からの信頼低下
- 採用力の低下
- メディア報道による炎上リスク
など、罰金以上に経営インパクトの大きい二次被害が発生します。
民事上のリスク
フリーランスから損害賠償請求を受ける可能性もあります。明示義務違反は、契約内容を巡る紛争を招きやすく、訴訟リスクの温床となります。
7. 電子契約サービスで効率的に対応する方法
フリーランス新法 契約書対応を、紙ベースで手作業運用するのは現実的ではありません。電子契約サービスの活用が、最も合理的な選択肢です。
電子契約サービスの活用メリット
| 課題 | 電子契約サービスでの解決 |
|---|---|
| 明示7項目の記載漏れ | テンプレート化で漏れ防止 |
| 「直ちに」要件 | オンラインで即時送信 |
| フリーランスへの記録交付 | PDF自動配信 |
| 過去発注の検索 | 取引先・日付・金額で属性検索 |
| 担当者交代時の引継ぎ | 過去契約をクラウドで一元管理 |
テンプレート化のすすめ
発注パターンが似ている場合、業務種別ごとにテンプレートを作るのが効率的です。
- デザイン業務発注テンプレ
- ライティング業務発注テンプレ
- 開発業務発注テンプレ
- コンサルティング業務発注テンプレ
明示7項目を含む雛形を整備しておけば、発注のたびに項目を抜け漏れなく埋めるだけで完了します。
独自視点:「発注書」と「契約書」を分けない運用
実務では、発注書(明示書面)と契約書(基本契約・個別契約)を別々に管理している企業が多く、これが明示漏れの温床になっています。
おすすめは、「個別契約=明示書面」として一本化する運用です。電子契約サービスで個別契約書を送信する際に、明示7項目をテンプレートに組み込んでおけば、
- 発注書作成の手間がなくなる
- 明示漏れリスクがゼロに近づく
- 1ファイルで契約条件と明示事項が完結する
という、三重のメリットが得られます。
8. 実務対応チェックリスト
自社のフリーランス取引が新法に対応できているか、以下で点検してみてください。
明示義務(必須)
- 発注先がフリーランス(特定受託事業者)に該当するか確認している
- 自社が「業務委託事業者」「特定業務委託事業者」のどちらか把握している
- 発注時に7項目すべてを書面または電磁的方法で明示している
- 「給付の内容」を具体的に記載している
- 報酬の算定方法を明確にしている(額が確定できない場合)
- フリーランスがファイル出力できる形式で送付している
- 発注と同時または直後に明示している
その他の義務(特定業務委託事業者の場合)
- 報酬支払期日が受領日から60日以内になっている
- 禁止行為(買いたたき・減額等)を行っていない
- 募集情報を正確・最新に保っている
- ハラスメント相談窓口を整備している
- 継続契約解除時に30日前予告を行う体制がある
文書管理
- 明示書面・契約書を5年間保存できる体制がある
- 発注履歴を取引先別に検索できる
- 担当者交代時の引継ぎフローがある
9. よくある質問(FAQ)
Q1. メールで「発注お願いします、納期は◯日、報酬は◯円です」と送るだけでも明示義務を満たしますか?
A. 7項目すべてが記載されていれば、形式上は満たし得ます。ただし、給付の内容が曖昧だったり、検査期日や受領場所などが抜けていたりすると要件を満たしません。テンプレート化して漏れを防ぐのが安全です。
Q2. 口頭で発注した場合はどうなりますか?
A. 口頭発注のみでは明示義務違反となる可能性が高いです。発注した場合は「直ちに」書面または電磁的方法で7項目を明示する必要があります。
Q3. フリーランス側から「契約書は不要です」と言われた場合、明示しなくてもよいですか?
A. 明示義務は発注者側の法的義務であり、フリーランスの同意・不同意で免除されるものではありません。必ず明示する必要があります。
Q4. 単発の小規模発注(数千円程度)でも明示は必要ですか?
A. はい、金額の大小にかかわらず明示義務があります。少額発注こそ口頭で済ませがちですが、法令上は必須です。
Q5. 海外在住のフリーランスへの発注も対象になりますか?
A. 日本国内の事業者が発注する場合、原則として対象になり得ますが、適用関係は個別事情によります。具体的なケースは弁護士等の専門家にご確認ください。
Q6. 報酬支払期日の「60日以内」は、月末締め翌月末払いでもOKですか?
A. 給付受領日から起算して60日以内であれば適法です。「月末締め翌月末払い」は、月初に受領した分は約60日となるため、ぎりぎり適法のラインですが、できる限り短い期間とすることが法律上求められています。
Q7. 違反したらすぐに罰金になりますか?
A. いいえ、まず勧告・命令といった行政指導が先行します。命令違反などに至った場合に罰則が適用されます。ただし、企業名公表のリスクは命令段階で生じます。
10. まとめ:発注前の「明示」が最大の防衛策

ここまで、フリーランス新法 契約書の書き方と対応方法を解説してきました。要点を整理します。
- フリーランス新法は2024年11月施行、すべての発注事業者に明示義務を課す
- 発注時に「直ちに」7項目を書面または電磁的方法で明示する必要がある
- 「給付の内容」は具体的に書くことがトラブル防止の鍵
- 違反すると勧告・命令・罰金、企業名公表のリスクがある
- 電子契約サービスのテンプレート化で、明示義務対応を自動化できる
「フリーランス保護新法 契約に対応しなければいけないのはわかったが、毎回7項目を手書きするのは非現実的」——これが多くの発注者の本音だと思います。
そんな方にとって、明示義務項目を組み込んだ電子契約テンプレートを用意することが、最も現実的で効率的な解です。発注のたびに項目埋めるだけで、明示漏れリスクをほぼゼロにできます。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な事案については、所轄行政機関(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)、弁護士等の専門家にご相談ください。条文・通達の引用は執筆時点(2026年5月)のものです。最新情報は公正取引委員会の特設サイト等をご参照ください。
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