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店舗譲渡契約書テンプレート・雛形|個人事業主の営業許可は承継届で足りる

店舗譲渡契約書テンプレート(全32条+別紙3本)を無料ダウンロード。会員登録不要でWord形式のまま使えます。個人事業主が店を営業ごと引き継ぐ型で、飲食店の営業許可を承継届で引き継ぐ書き方、賃貸人の承諾を停止条件にする第7条、屋号と債務の関係、印紙税の判定まで解説します。

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店舗譲渡契約書テンプレート

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2026-09-07
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「居抜きで店を譲ることになったが、造作の売買契約書でいいのか営業ごと渡す契約書がいるのか分からない」 「営業許可は取り直しだと書いてあるサイトと、そのまま引き継げると書いてあるサイトがある」 「引渡し日は決まったのに、大家さんの承諾がまだ出ていない」

営業許可は取り直しではありません。2023年12月13日から、飲食店営業許可は承継届で引き継げます(食品衛生法第56条第1項)。

この記事では、店舗の造作も在庫も営業権もまとめて譲り渡すための店舗譲渡契約書のWordテンプレート(全32条+別紙3本)を、会員登録不要で配布しています。

この記事の結論

  • 配布するのは営業ごと譲り渡す型の全32条。造作・什器だけの売買なら別の型になる。
  • 2023年12月13日から、飲食店の営業許可は廃業届と新規申請ではなく承継届で足りる(食品衛生法第56条第1項)。
  • 承継届に添える「その事実を証する書面」は、この契約書の写しが担う(食品衛生法施行規則第67条の2)。
  • 賃貸人の承諾が出ないと本件譲渡は効力を生じず、手付金が全額戻る。第7条を停止条件にしてある(民法第612条第1項)。
  • 敷金は譲受人に引き継がれない(民法第622条の2第1項第2号)。第9条で3択にした。
  • 屋号をそのまま使うと、譲受人が譲渡人の債務まで負う(商法第17条第1項)。
  • 個人事業主の競業避止に効くのは会社法ではなく商法第16条。
  • 印紙税は、造作だけの売買なら不課税、営業の譲渡を含むと第1号の1文書。

目次

  1. 店舗譲渡契約書テンプレートの無料ダウンロード
  2. この契約書が要るのは「営業ごと渡す」ときだけ|3つの型の切り分け
  3. 【条文一覧】配布テンプレート全32条は、どの揉め事に効くか
  4. 譲渡するもの・しないものを別紙で特定する|第2条・第3条と別紙1〜3
  5. 譲渡代金は総額だけ書くと計算できない|第4条の内訳欄
  6. 大家の承諾が取れないと全部が飛ぶ|第7条を停止条件にする
  7. 敷金・保証金は譲受人に引き継がれない|第9条の三択
  8. 2023年12月13日から、営業許可は「承継届」でよくなった|第14条・第15条
  9. 屋号をそのまま使うと、前の店の支払いまで負う|第18条
  10. 従業員・競業避止・原状回復の埋め方|第21条・第22条・第10条
  11. 引渡し後に揉める2つ|第24条の契約不適合責任と第19条・第20条の精算
  12. 店舗譲渡契約書の印紙税|営業の譲渡は第1号の1文書
  13. 紙のままで足りる場合と、電子で交わす場合
  14. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順
  15. よくある質問(FAQ)
  16. まとめ:空欄を埋めて、引渡し日までに1通交わす

1. 店舗譲渡契約書テンプレートの無料ダウンロード

配布しているのは、Word形式の店舗譲渡契約書の雛形です(全32条+別紙3本)。店を畳む側と、その店をそのまま引き継いで営業を始める側とが、引渡し日までに1通交わすための書面です。

会員登録不要・メールアドレス入力不要・そのまま編集できるWord形式

賃貸人の承諾を停止条件にした第7条つき — 承諾が出なければ本件譲渡は効力を生ぜず、手付金が全額戻ります

営業許可の承継届に添付できる書き方(第14条第3項)

譲渡代金を4区分に割り付ける内訳欄つき(第4条第2項)

別紙1〜3で「渡すもの」と「渡せないもの」を分けて特定

屋号を引き継ぐかどうかで結論が変わる第18条(商法第17条への手当てつき)

👉 店舗譲渡契約書テンプレートを無料ダウンロード(会員登録不要)

営業は続けず、店内の造作や厨房機器だけを個別に売り渡すのであれば、動産の売買契約書のほうが早く済みます。その場合は造作譲渡契約書テンプレートを使ってください。賃貸人の承諾書の書式が別紙に付いています。

2. この契約書が要るのは「営業ごと渡す」ときだけ|3つの型の切り分け

規模・用途に合わせてサービスを選ぶイメージ

最初に決めるのは金額でも引渡し日でもありません。何を渡す取引なのかです。ここを決めないと、印紙が要るかどうかも、保健所に何を出すかも決まりません。

型は3つに分かれます。

造作・什器だけを売る 造作+営業権を渡す(本テンプレート 会社の事業を譲渡する
渡すもの 厨房機器・内装などの動産のみ 動産、在庫、営業権、屋号、賃借権、顧客情報 会社が営む事業の全部または重要な一部
自分への質問 物だけを売るのか 債権債務・取引先・従業員・許認可まで含めて、一体で移すのか 同じ問いを、会社が営む事業の単位で問う
印紙税(印紙税法) 不課税(課税物件表の20種類に当たらない) 別表第1 第1号の1文書 別表第1 第1号の1文書
営業許可 承継されない(譲受人が自分で取る) 飲食店・美容所は承継届で承継(食品衛生法第56条・美容師法第12条の2)。古物商など承継の規定が無い許認可は譲受人が新たに取得(第14条) 同じ区別が働く
株主総会 不要 譲渡人が株式会社でなければ不要 会社法第467条の決議を検討する
使う書面 動産の売買契約書 本テンプレート 事業譲渡契約書

真ん中の列が、この記事で配っているテンプレートです。第1条第2項に「造作及び什器備品のみを個別に売買するものではなく、本件事業の営業そのものの譲渡である」と書いてあり、以降の条文はすべてこの前提で組んであります。

どの列に入るかは、屋号を引き継ぐかどうかでは決まりません。

国税庁は、営業の譲渡の「営業」を、営業活動を構成している動産、不動産、債権、債務等を包括した一体的な権利、財産としてとらえられるものとしたうえで、営業活動における一部門であっても、財産的組織体として譲渡する限りにおいては、営業の譲渡に含まれますとしています。

判定軸は、財産的組織体として渡しているかどうかです。屋号を変えて心機一転のつもりでも、仕入先も従業員も予約も丸ごと引き継ぐなら、真ん中の列に入ります。

左の列を選ぶなら、条文は動産の売買として組み直すことになります。営業権も屋号も渡さないので、第14条以下の許認可も第18条の屋号も出番がありません。前章で挙げた造作譲渡契約書テンプレートが対応する型です。

右の列は、譲渡人が株式会社である場合の話です。会社法第467条第1項は、株主総会の決議による承認を求める主語を「株式会社」としています。個人事業主が自分の店を1つ譲るときには適用されません。

譲渡人が会社であるときは、決議の要否と手続を先に確かめる必要があるので、事業譲渡契約書テンプレートを見てください。

3. 【条文一覧】配布テンプレート全32条は、どの揉め事に効くか

条文の並びは、譲渡の段取りの順です。何を渡すか(第2条・第3条)を決め、いくらで渡すか(第4条〜第6条)を決め、大家の承諾を取り(第7条〜第10条)、引き渡し(第11条〜第13条)、役所へ届け(第14条・第15条)、引き継ぎ(第16条〜第23条)、後始末を決める(第24条〜第32条)という順に読めます。

見出し どの揉め事に効くか
第1条 目的 「造作を売っただけ」「店ごと買ったつもりだった」の食い違い
第2条 譲渡の対象 厨房機器も込みだと思っていた、という認識のずれ
第3条 譲渡対象から除外するもの リース中の製氷機を引き渡してしまう事故
第4条 譲渡代金及びその内訳 総額しか書かず、消費税と在庫の精算が計算できない
第5条 手付金 破談したときに手付を返すのか返さないのか
第6条 支払方法及び支払期日 入金前に鍵を渡してしまう
第7条 賃貸人の承諾及び停止条件 大家の承諾が出ないまま引渡し日が来る
第8条 賃貸借の承継方法 地位の譲渡か新規契約かが曖昧なまま賃料条件が変わる
第9条 敷金・保証金の取扱い 敷金が代金に含まれているのかどうか
第10条 原賃貸借契約上の義務の引継ぎ及び原状回復 退去時の原状回復を誰が負うのか
第11条 引渡し及び立会い 鍵の本数、メーターの数値、動かない設備
第12条 引渡しまでの善管注意義務 契約後に設備を持ち出される、営業を止められる
第13条 危険負担 引渡し前の火災・水漏れ
第14条 許認可の承継及び協力 承継届に添付する書類が譲渡人から出てこない
第15条 官公署への届出及びその費用 消防署・税務署への届出が漏れる
第16条 引継ぎ及び説明 教えてもらえるはずだったレシピと仕入先
第17条 表明及び保証 差押えや未払賃料が後から出てくる
第18条 屋号(商号)の使用及び債務の不承継 前の店の買掛金を請求される
第19条 債権債務の帰属及び精算 譲渡日をまたぐ賃料・光熱費
第20条 商品在庫及び消耗品の引継ぎ 期限切れの食材まで買わされる
第21条 従業員の取扱い 従業員が当然に移ると思い込む
第22条 競業避止義務 譲渡人が近所で同じ店を開く
第23条 顧客・取引先の引継ぎ及び不勧誘 予約サイトや地図サービスのアカウントが移らない
第24条 契約不適合責任 引渡し後に空調が壊れていたと分かる
第25条 秘密保持 交渉中の事実が従業員や取引先に漏れる
第26条 解除 代金が入らない、営業許可が失効した
第27条 損害賠償及び違約金 賠償の範囲と上限が決まっていない
第28条 反社会的勢力の排除 相手方の属性が後から判明する
第29条 権利義務の譲渡禁止 引渡し前に第三者へ転売される
第30条 費用の負担 印紙代、移管費用、承諾料を誰が出すか
第31条 協議 条文に書いていない事項の扱い
第32条 合意管轄 遠方の裁判所に呼ばれる

別紙は3本です。別紙1が造作・内装設備・什器備品目録、別紙2が商品在庫・消耗品目録、別紙3が譲渡対象から除外する物件一覧です。本文で「別紙1に掲げるもの」と書いておき、品目の特定は別紙に逃がす構造にしてあります。

💡 全32条+別紙3本を、Word形式のままダウンロード

会員登録もメールアドレスの入力も要りません。条文はダウンロード後にそのまま編集できます。使わない条を削るときは、他の条から参照されていないかだけ確かめてください(第7条・第22条は他の条から何度も参照しています)。

👉 店舗譲渡契約書テンプレートを無料ダウンロード

4. 譲渡するもの・しないものを別紙で特定する|第2条・第3条と別紙1〜3

引渡しの当日に立ち会うと、話がずれていた箇所がまとめて出てきます。「この製氷機も入っていると思っていた」「食器は持って帰るつもりだった」という類です。第2条と第3条は、この当日の口論を契約の時点に前倒しするための条文です。

第2条第1項は、譲渡の対象を7つに分けて並べています。

造作・内装設備・什器備品(別紙1)、商品在庫・消耗品(別紙2)、営業権(のれん)、屋号(第18条第1項で引き継ぐと決めた場合に限る)、顧客リストやレシピ・仕入条件、賃借権または賃貸借契約上の地位、そして固定電話番号・ウェブサイト・SNSアカウント・予約サイトの店舗アカウントです。

最後の1つは忘れられがちですが、移せないと開店初日に予約が入りません。移管の手順は第23条第2項に書き出してあります。

別紙1は、品名だけでは足りません。行の埋め方はこうです。

品名:業務用冷蔵庫/型式・仕様:○○社 RS-120/数量:2台/設置場所:厨房中央/備考:冷凍室の温度が下がりにくい(第24条第4項により告知)

第24条第4項は、故障や不具合のある設備を譲渡日までに書面で告知するよう譲渡人に求めています。備考欄に書いた不具合は、引渡し後に「聞いていない」と言われません。逆に、書かなかった不具合は第24条第2項の「知りながら告げなかった事実」になり得ます。

渡せないものは、渡さないと書くだけでは足りません。第3条第2項は、売買が財産権を相手方に移転する契約であること(民法第555条)を確認したうえで、譲渡人が所有権を持たない物件を譲渡対象にできないとしています。リース中の製氷機、所有権留保付きで買った券売機、大家が設置したエアコン。これらは別紙3で名指しして除外します。

別紙3には、リースの契約番号と残債務の額、そして引渡し後の扱いまで書きます。第3条第3項が用意している選択肢は3つです。

  • 譲渡人がリース契約を終了させ、または残債務を完済して、物件を撤去する
  • 譲渡人がリース会社の承諾を得て、契約上の地位を譲受人に移す(残債務を誰が負うかを併記する)
  • 譲受人がリース会社と新たに契約を結ぶ

どれも譲渡日までに片が付かないことがあります。第3条第4項は、その場合に物件の扱いと譲渡代金への影響を協議すると定めています。代金を決めてから発覚すると値引き交渉になるので、別紙3は契約書の署名より前に埋めてください。

5. 譲渡代金は総額だけ書くと計算できない|第4条の内訳欄

「造作込みで一式いくら」で握ってしまうと、契約書を書く段階で止まります。消費税を計算できないからです。

国税庁の質疑応答事例は、営業の譲渡について、課税資産と非課税資産を一括して譲渡するものと認められるから、課税資産と非課税資産の対価の額を合理的に区分して課税することになる、としています。根拠は消費税法施行令第45条第3項です。総額しか書いていない契約書は、この区分ができていません

第4条第2項は、総額を次の4行に割り付ける形にしてあります。

  • 造作、内装設備及び什器備品の対価
  • 商品在庫及び消耗品の対価
  • 営業権(のれん)の対価
  • その他(内容を記入)の対価

在庫の金額は、契約の時点では確定しません。第4条第5項が、商品在庫と消耗品の対価は第20条の実地棚卸により確定した金額で精算すると定めています。契約時には見込みの額を書き、引渡し日の棚卸で確定させ、差額を第20条第5項で精算する流れです。

印紙税でいう記載金額は、内訳の合計ではありません。国税庁の印紙税法基本通達は、営業譲渡契約書の記載金額を、営業活動を構成している動産や不動産等の金額ではなく、その営業を譲渡することについて対価として支払われるべき金額としています。第4条第1項の総額がこれに当たります。内訳を細かく分けても、印紙の判定に使う金額は総額のままです。

消費税の額は第4条第4項に別枠で書きます。譲渡人が免税事業者であるときは同項の額を零とし、総額に消費税相当額を含むものとして扱う一文を入れてあります。適格請求書発行事業者かどうかは第17条第3項で表明する形にしたので、譲受人はここを見れば仕入税額控除の扱いを判断できます。

6. 大家の承諾が取れないと全部が飛ぶ|第7条を停止条件にする

代金も引渡し日も決まり、保健所にも相談を済ませた。それでも大家が首を縦に振らなければ、この取引は成立しません。

民法第612条第1項は、賃借人が賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡すことも賃借物を転貸することもできないと定めています。同条第2項は、これに違反して第三者に賃借物を使用または収益させたときに、賃貸人が契約を解除できるとしています。承諾を取らないまま鍵を渡すと、譲受人は買ったばかりの店から出ていくことになります。代金は払い済みです。

そこで第7条第1項は、賃貸人の書面による承諾を得ることを本件譲渡の停止条件にしました。承諾が出るまで譲渡そのものの効力が生じない、という組み方です。手付金(第5条)や承諾を取りに行く義務(第7条)は、承諾が出る前から効きます。

第7条第3項には、承諾を得る期限を書きます。第7条第4項は、その期限までに承諾が得られなければ停止条件は成就しないものとし、本件譲渡は効力を生ぜず本契約は当然に終了する、譲渡人は手付金その他受領した金員の全額を無利息で返す、としています。第7条第5項で、この場合に損害賠償を請求できないことも決めてあります(故意に承諾の取得を妨げた場合を除く)。

承諾の期限を空欄のまま締結しないでください。この1行が抜けると、条件が成就しない状態がいつまでも続きます。

承諾料を求められることがあります。第7条第6項に承諾料を負担する者を書く欄を置き、額について協議が調わないときは契約を続けるかどうかを協議する、としてあります。

承諾の期限は、引渡し日から逆算して決める

承諾に何日かかるかを示した統計はありません。目安を置く代わりに、引渡し日から動かせない期日を引いていきます。残った幅が、承諾に使える時間です。

  • 従業員を引き継がず、譲渡人が労働契約を終了させるなら、解雇の予告は少なくとも30日前です(労働基準法第20条第1項)
  • 原賃貸借契約に期間の定めがあり、更新の時期が近いなら、更新をしない旨の通知は期間の満了の1年前から6月前までの間に出す必要があります(借地借家法第26条第1項)
  • 期間の定めのない賃貸借なら、解約の申入れはいつでもできます(民法第617条第1項)。建物の賃貸借では、申入れから3箇月で終了します
  • 東京都で防火対象物使用開始届出書を出すなら、使用を開始する日の7日前までです(東京都火災予防条例第56条の2)
  • 承継届も、第18条の登記または通知も、期限は「遅滞なく」です。日付では決まりません

手付金は「承諾が出なかったとき」と「気が変わったとき」で戻り方が違う

第5条第4項に1行1択があります。手付金を解約手付とするか、しないかです。解約手付とすると、譲受人は手付金を放棄して、譲渡人は手付金の倍額を現実に提供して、それぞれ契約を解除できます。ただし相手方が履行に着手した後はできません。解約手付としないほうを選べば、手付金は代金の一部の前払としてだけ働き、放棄や倍返しによる解除はできなくなります。

第7条の停止条件で戻るのは、承諾が出なかった場合です。解約手付は、承諾とは関係なく気が変わった場合の話で、場面が違います。第5条第3項は、条件が成就しなかったときに手付金を全額返すと定めているので、この2つを混同したまま「手付は返さない」と口約束しないでください。手付金の額は業種と代金の額で変わるため、テンプレート側では空欄にしてあります。

承諾の中身は2ルートに分かれます(第8条)

大家が「いいですよ」と言ったとき、その中身は2つに分かれます。第8条第1項の選択肢です。

  • 原賃貸借契約上の地位を譲渡する方法。民法第539条の2は、契約上の地位を譲渡する合意をした場合において相手方が承諾したときに、地位が移転すると定めています。賃料も契約期間も原契約のまま引き継げます
  • 譲渡人が解約し、譲受人が大家と新たに契約する方法。この場合、第8条第3項により、新しい賃貸借契約の締結をもって第7条の条件が成就したものとして扱います

後者は条件が変わることがあります。賃料の値上げ、保証会社の利用、契約期間の短縮。第8条第4項は、条件が原契約と異なることになったときに譲渡代金その他の条件を協議し、協議が調わなければ譲受人が解除できるとしています。手付金は全額戻ります。

原賃貸借契約そのものの読み方は賃貸借契約書テンプレートにまとめてあります。承諾を取りに行く前に、原契約の譲渡・転貸の条項と中途解約の予告期間だけは確認してください。

7. 敷金・保証金は譲受人に引き継がれない|第9条の三択

譲受人からよく出るのが「敷金は代金に入っているんですよね」という確認です。入っていません。契約書に書かなければ、どちらの持ち物でもない宙ぶらりんの金額になります。

民法第622条の2第1項第2号は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときに、賃貸人が敷金の残額を賃借人に返還しなければならないとしています。返還先は譲渡人です。譲受人には引き継がれません。譲受人は、大家に対して改めて敷金を差し入れる立場になります。

最高裁判所も、昭和53年12月22日の判決で、賃借権が旧賃借人から新賃借人に移転され賃貸人がこれを承諾した事案について、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は新賃借人に承継されるものではないと解すべきである、と判断しています。この判決の事案は土地の賃借権ですが、建物については民法第622条の2第1項第2号が同じ結論を明文で置いています。

第9条第1項は、この帰結を条文の中で確認しています。

第9条第2項の選択肢は3つです。

  • 譲受人が譲渡人に、譲渡代金とは別に敷金等の相当額を支払う。あわせて、譲渡人の敷金返還請求権を譲受人に譲渡し、大家の承諾を得る
  • 敷金等の相当額を譲渡代金の総額に含める。別途の支払いはしない
  • 敷金等の授受はしない。譲渡人は大家から返還を受け、譲受人は大家に新たに差し入れる

3つめが最も単純ですが、譲受人の手元資金が一時的に大きく減ります。1つめと2つめの違いは、同じ金額をどこに置くかです。代金とは別に払うか、代金の総額に混ぜるか。総額に混ぜると、印紙税の記載金額が膨らみます。

3つめを選ぶときは、譲渡人の側にも確認が要ります。大家から戻る額は、差し入れた満額とは限りません。

民法第622条の2第1項は、受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた債務の額を控除した残額を返還する、としています。未払賃料や原状回復の費用が引かれた後の額が戻ります。第9条第3項は、原賃貸借契約に償却(解約引き)の定めがあれば、その額を控除した残額を基準にすると決めています。

額を確かめるために、第9条第4項で、譲渡人が敷金等の名目・額・償却の条件・未払賃料の有無・充当された額を書面で交付することにしてあります。この書面が事実と違っていたときだけ、譲受人は代金の減額を請求できます(第9条第5項)。

1つめを選ぶときは、手続がもう1つ増えます。譲渡人の敷金返還請求権を譲受人へ移す部分です。

民法第467条は、債権の譲渡が、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができないとし、その通知または承諾は確定日付のある証書によらなければ債務者以外の第三者に対抗することができないとしています。大家に口頭で「いいですよ」と言われただけでは、大家の債権者に差し押さえられたときに負けます。

第9条は、通知または承諾を確定日付のある証書で行い、その方法と費用の負担を譲渡日までに協議して定める形にしました。確定日付の付与は公証役場で行う手続です。契約書を電磁的記録で締結する場合であっても、これとは別に行います。

返還の場面そのものの詰め方は敷金返還合意書テンプレートを参照してください。

8. 2023年12月13日から、営業許可は「承継届」でよくなった|第14条・第15条

電子契約の法的有効性のイメージ

検索して出てくる解説の多くは、「飲食店営業許可は譲渡では引き継げないので、譲渡人が廃業届を出し、譲受人が新規に申請して審査を受ける」と書いています。この説明は、いまの法律とは違います

食品衛生法第56条第1項は、許可を受けた者が当該営業を譲渡したときに、営業を譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。相続・合併・分割と同じ扱いです。

厚生労働省のリーフレット「事業譲渡に関する手続が整備されました」も、2023(令和5)年12月13日から、譲受人は新たな許可の取得等を行うことなく届出により営業者の地位を承継することになる、と案内しています。

廃業届も、申請手数料も、審査の待ち時間も要りません。

ただし、経過措置があります。2023年12月13日に施行された改正食品衛生法の附則は、施行日である2023年12月13日より前に営業の譲渡があった場合の譲受人には、第56条を適用しないとしています。古い記事が間違っているのではなく、当時は正しかったというだけです。譲渡日が施行日より前かどうかで扱いが分かれます。

承継届に添付する「その事実を証する書面」が、この契約書です

食品衛生法第56条第2項は、地位を承継した者が、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて、都道府県知事に届け出なければならないとしています。

何を書いて何を添えるかは、省令に落ちています。食品衛生法施行規則第67条の2は、届出書の記載事項として、届出者の氏名・生年月日・住所、営業を譲渡した者の氏名・住所、営業の譲渡の年月日、施設の許可の番号と許可を受けた年月日を挙げ、届出書には営業の譲渡が行われたことを証する書類を添付しなければならない、としています。

つまり、譲渡があったことを第三者が読んで分かる書面が要ります。当事者が誰か、どの店舗か、いつ譲渡したのか、何を譲り渡したのかが、契約書1通から読み取れる必要があります。

配布テンプレートの冒頭に「店舗の表示」の欄(屋号・所在地・業種・営業許可番号・許可を受けた保健所・有効期限)を置き、第1条第3項に譲渡日を書く欄を置いてあるのは、このためです。

静岡市は、添付する契約書に譲渡人の氏名・住所(法人であれば名称・代表者名・主たる事業所の所在地)が記載されていることを求めています。署名欄の住所を空欄のまま締結しないでください。

第14条第3項は、契約書の写しを「その事実を証する書面」として用いることに両当事者が同意する、と定めています。あわせて、譲渡人が原本証明その他届出に必要な手続に協力する旨も置いてあります。窓口が何かを求めたときに、譲渡人と連絡が取れずに止まらないようにするためです。

譲渡人から集める書類は第14条第4項に列挙してあります。営業許可証、営業許可申請書と施設の図面の写し、食品衛生責任者の資格を証する書類の写し、衛生管理計画と手順書、直近の立入検査の結果を記載した書面です。譲渡人が店を畳んで連絡が取りにくくなる前に受け取ってください。

承継届の様式は、法令で決まっていません

食品衛生法施行規則第67条の2が定めているのは記載事項と添付書類だけで、届出書の様式は置かれていません。だから、様式も、添付書類の呼び方も、受付の方法も、自治体ごとに違います。実際に窓口の案内を見比べると、こうなります。

  • 静岡市は、添付書類を「譲渡が行われたことを証する契約書等の写し」としています
  • 埼玉県朝霞保健所は、譲渡する旨が記載された契約書等の画像(PDF、JPG、PNGファイルなど)を準備するよう案内しています。契約書等が存在しない場合に使う同意書の様式も配っています
  • 川崎市は、地位承継届をオンラインで出せるとしていますが、その対象を「当該システムで申請等した施設に限る」としています

契約書が無い場合の同意書を用意している窓口がある、ということは、契約書の写しが唯一の証明手段ではないということです。逆にいえば、この1通で通るかどうかも窓口ごとに違います。

第14条第5項に、譲渡日までに保健所へ相談する旨を入れてあるので、引渡し日を決める前に一度相談してください。厚生労働省のリーフレット「事業譲渡に関する手続が整備されました」も、譲渡人に対し、可能な限り管轄の保健所にあらかじめ相談するよう求めています。

引渡し後に、保健所の調査が1回入ります

2023年12月13日に施行された改正食品衛生法の附則は、都道府県知事が当分の間、営業の譲渡により地位を承継した者の業務の状況について、その地位が承継された日から起算して6か月を経過するまでの間に少なくとも1回調査しなければならないとしています。第14条第7項に、譲受人がこの調査に対応し、譲渡人が必要な情報を提供する旨を入れてあります。

承継の前後で許可や届出の内容は原則として変わりません。厨房のレイアウトを変える、業態を変える、といった場合は、変更の届出を別に検討することになります(第14条)。衛生管理の一義的な責任は、譲渡日以後は譲受人が負います(第16条第5項)。だからこそ第16条第2項で、衛生管理計画の中身と実施方法、設備の操作方法、定期的な点検や害虫駆除の取引先まで引き継ぐ形にしてあります。

美容室・リサイクルショップ・消防署

美容所も同じ構造です。美容師法第12条の2は、地位を承継した者が遅滞なくその事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出なければならないとしています。契約書の使い方は飲食店と変わりません。

中古品を扱う店舗は事情が違います。古物営業法には、食品衛生法第56条や美容師法第12条の2に相当する、営業の譲渡による地位の承継の規定が置かれていません。第14条は、こうした許認可について譲受人が自らの責任と費用で新たに取得または届出を行うものとし、その要否と手続をあらかじめ所轄の官公署に確認するとしています。古物商の許可については所轄の警察署に確認してください。

消防署への届出は自治体ごとに条例が違います。

東京都の場合、消防法施行令別表第1に掲げる防火対象物またはその部分を使用しようとする者は、使用を開始する日の7日前までに防火対象物使用開始届出書を消防署長へ届け出るものとされています(東京都火災予防条例第56条の2)。

届出の要否と期限は火災予防条例により異なるため、第15条第1項は、店舗の所在地を管轄する消防署に確認したうえで届け出る形にしてあります。引渡し日から逆算する項目です。

💡 保健所に持っていける形の店舗譲渡契約書

会員登録不要でWord形式のままダウンロードできます。冒頭の「店舗の表示」欄と第1条第3項の譲渡日を埋めれば、食品衛生法施行規則第67条の2が求める「営業の譲渡の年月日」と当事者が、契約書1通から読み取れる体裁になります。届出に必要な引継ぎ書類の一覧は第14条第4項にあります。

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9. 屋号をそのまま使うと、前の店の支払いまで負う|第18条

看板も食器も券売機もそのままなら、屋号も変えずに続けたくなります。常連が離れないからです。ただし、屋号を残すと請求書の宛先も残ります。

商法第17条第1項は、営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合に、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負うとしています。

前の店主が払っていない酒屋の買掛金、リース料、税金。屋号を変えなかったというだけで、譲受人に請求が届きます。

第3条第1項で買掛金を譲渡対象から除いていても、第18条第3項で「譲渡日の前日までの債務は承継しない」と当事者間で確認していても、債権者に対しては別です。

外す方法は決まっています。商法第17条第2項は、営業を譲渡した後遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には第1項を適用しないとし、譲受人と譲渡人から第三者に通知した場合も、その通知を受けた第三者について同様とするとしています。第18条第4項は、この2つを選択式にしました。

  • 譲受人が、譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記を行う
  • 譲受人と譲渡人が、譲渡人の債権者に対し、書面で通知する(譲渡人は譲渡日までに債権者の名称と連絡先の一覧を交付する)

登記は誰に対しても効きます。通知は、通知を受けた債権者にだけ効きます。通知を選ぶなら、一覧から漏れた債権者には効かないということです。第18条第4項の措置に要する費用の負担は第18条第5項に書く欄を置きました。

「遅滞なく」なので、あとで思い出したときでは間に合いません。引渡しの当日にやることのリストへ入れてください。

免責の登記は、譲受人が申請します

登記のほうを選んだ場合の手続です。この登記は「営業又は事業の譲渡の際の免責の登記」といいます。商業登記法第31条は、この登記を譲受人の申請によってするとし、申請書には譲渡人の承諾書を添付しなければならないとしています。申請するのは譲り受けた側ですが、譲渡人の協力なしには出せません。譲渡人が店を畳んで連絡が取れなくなる前に、承諾書を受け取ってください。

個人商人の場合、この登記は商業登記規則第53条により、譲受人の商号の登記記録にすることとされています。

ここで手が止まるのが、商号を登記していない個人商人です。商法第11条は、商人は、その商号の登記をすることができる、としています。義務ではありません。

登記していない人が免責の登記だけを単独で申請できるかどうかは、規則の文言からは読み取れないので、申請書の書式と手続は営業所の所在地を管轄する法務局に確認してください。

費用も先に見ておきます。免責の登記の登録免許税は、1件につき1万8千円です(登録免許税法別表第一)。屋号(商号)も引き継いで商号の登記を取得するなら、商号の新設または取得による変更の登記として、別に1件につき3万円がかかります。

屋号を引き継ぐときに落ちやすいのが、商号の譲渡そのものの登記です。商法第15条第2項は、商号の譲渡は、登記をしなければ第三者に対抗することができない、としています。免責の登記とは別の登記です。第18条第9項に、商号の登記の有無を確認し、登記があるときはその移転の登記について協議する、と置いてあります。

2年が過ぎると、譲受人だけが残ります

もう1つ、期間の問題があります。

商法第17条第3項は、譲受人が同条第1項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任が、営業を譲渡した日後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、その期間の経過時に消滅するとしています。譲受人が商法第17条第1項で責任を負う状態のまま2年が過ぎると、譲渡人はもう責任を負わず、譲受人だけが残ります

第18条で譲受人から譲渡人への求償を定め、2年の期間が過ぎた後に譲受人が弁済を求められた場合にも譲渡人が求償に応じる、と書き足してあるのはこのためです。

屋号を使わないほうを選んだ場合は、第18条第1項の2つめに印を付けます。譲受人は譲渡日以後速やかに、看板・メニュー・印刷物・ウェブサイト・SNSアカウントの表示を変えることになります。譲渡人が引き続きその屋号を別の場所で使いたいときは、第18条で条件を協議します。

10. 従業員・競業避止・原状回復の埋め方|第21条・第22条・第10条

引渡しの前後で決めそこねやすい3つを、まとめて扱います。

従業員は自動的には移りません(第21条)

民法第625条第1項は、使用者が労働者の承諾を得なければその権利を第三者に譲り渡すことができないとしています。店舗の譲渡で労働契約が当然に移ることはありません。

労働契約が定めによって承継されるのは会社分割の場合です。会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律は、第1条で会社分割が行われる場合の労働契約の承継等について会社法の特例を定めるものとし、第3条で、分割契約等に承継会社等が承継する旨の定めがある労働契約が分割の効力発生日に承継されるとしています。店舗の譲渡はこの法律の対象外です。

そこで第21条第2項は2択にしました。譲受人が、雇用を希望する従業員に対して譲渡日までに労働条件を提示して雇用契約を申し入れる形か、従業員を引き継がず、譲渡人が自らの責任で労働契約を終了させるか、です。

前者を選んだ場合、年次有給休暇などで勤続期間を通算するかどうかを第21条で決めます。譲渡日の前日までの賃金・社会保険料は譲渡人が払い、譲受人は承継しません(第21条第3項)。

従業員へいつ何を説明するかは、第21条であらかじめ協議する形にしてあります。

競業避止で効くのは、会社法ではなく商法です(第22条)

譲渡人が数百メートル先で同じ業態の店を開いたら、譲受人が買った営業権は消えます。

ここで引かれるのは会社法第21条なのですが、主語を見てください。会社法第21条の主語は「事業を譲渡した会社」です。譲渡人が個人事業主なら、この条文は当てはまりません。当てはまるのは商法第16条で、こちらの主語は「営業を譲渡した商人」です。第22条第2項に、譲渡人が会社なら会社法第21条、商人である個人事業主なら商法第16条と書き分けてあります。

別段の定めを置かなければ、法定の範囲が働きます。同一の市町村(特別区を含み、地方自治法第252条の19第1項の指定都市では区または総合区)と、これに隣接する市町村の区域内で、譲渡した日から20年間、同一の事業を行ってはならない、という範囲です。政令指定都市では市域の全部を押さえられるわけではない、という点が見落とされます。

契約でこれより短くも長くもできますが、上限があります。商法第16条第2項と会社法第21条第2項は、同一の営業または事業を行わない旨の特約の効力を、譲渡した日から30年の期間内に限るとしています。

なお期間や地域をどう決めても、不正の競争の目的をもって同一の事業を行うことは、商法第16条第3項・会社法第21条第3項により禁じられたままです。

第22条第1項の選択肢は3つです。商法第16条第1項・会社法第21条第1項が定める範囲をそのまま選ぶ、地域は法定のままで年数だけ決める、地域も年数も自分で決める。

年数の欄は空欄で配っています。決め打ちを避けているのはテンプレートだけではありません。中小企業庁が中小M&Aガイドラインの参考資料として公表している事業譲渡契約書のサンプルも、競業避止義務の期間を「クロージング日以後○年間」と空欄にしています。業種と商圏と代金の額によって答えが変わるからです。

第22条第3項で、名義を借りての営業や、レシピ・仕入先情報の第三者提供まで禁止行為に含めてあります。

原状回復は、退去のときに効いてきます(第10条)

居抜きで渡す取引の前提は、譲渡人が造作を撤去しないことです。第10条第3項は、大家が承諾することを条件として譲渡人が原状回復を行わないとしたうえで、大家が譲渡人に原状回復を求めたときは譲渡人が自らの費用で行う、と書いてあります。

問題は譲受人が退去するときです。

第10条第4項は、譲受人が引き継いだ造作についても、原賃貸借契約に別段の定めがない限り、自らの費用で原状回復すると定めています(原賃貸借契約に別段の定めがある場合まで否定するものではありません)。前の店主が付けた内装を撤去する費用まで、譲受人が負うことになります

だから第10条第2項で、退去時の原状回復の範囲と費用負担の定めを含めて原賃貸借契約の内容を書面で開示させます。

造作買取請求権も確認します。

借地借家法第33条は、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作について、賃貸借の終了時に時価での買取りを請求できるとしています。ただし同法第37条が強行規定として掲げているのは第31条・第34条・第35条で、第33条は入っていません。特約で排除できるということです。原賃貸借契約に排除特約があれば、引き継いだ造作を大家に買い取らせることはできません。

第10条第5項で特約の有無を選択式にしたうえで、その確認に当たっては譲渡人が原賃貸借契約書の該当箇所を示す、と第10条第6項に定めました。「たぶん無かったと思う」で通さないための一文です。

事業用店舗の原状回復に、住居用のような公的ガイドラインはありません。費用負担区分の詰め方は原状回復に関するテンプレートを見てください。

11. 引渡し後に揉める2つ|第24条の契約不適合責任と第19条・第20条の精算

引渡しが終わってから連絡が来るのは、たいてい次の2つです。設備が壊れていた、という話と、お金の割り振りの話です。

壊れていた設備を誰が直すか(第24条)

第24条第1項は3択です。

  • 現状有姿で引き渡し、契約不適合について責任を負わない。譲渡人にとって最も軽い形です
  • 引渡しの日から一定期間内に通知した契約不適合に限り、修補または代金の減額を請求できる(損害賠償と解除はできない)。期間の月数は空欄です
  • 民法の定めるところによる

1つめを選んでも、譲渡人が丸ごと免れるわけではありません。第24条第2項は、責任を負わないとした場合であっても、譲渡人が知りながら告げなかった事実については適用しないとしています。第24条第4項で故障や不具合を書面で告知させ、別紙1の備考欄に書き写す運用にしてあるのは、この2つを噛み合わせるためです。告知したものは免責され、隠したものは免責されません

1つめを選ぶなら、第24条第3項で譲受人に引渡し前の点検を認めています。厨房設備は動かしてみないと分かりません。立会いの日程を第11条第2項の引渡し立会いとは別に取ってください。

3つめの「民法の定めるところによる」を選ぶときは、もう1つ効いてくる条文があります。商法第526条(買主による目的物の検査及び通知)です。

商人どうしの売買では、買主に目的物の検査と通知の義務が課されます。居抜きでその店の商売を始める譲受人は商人なので、この規定が働く場面になります。

第24条第5項に、商法第526条を適用するかしないかの1行1択を置きました。中小企業庁の事業譲渡契約書サンプルは、「本契約に商法第526条の規定は適用されないものとする」と明文で外しています。どちらを選ぶにせよ、印を付けてから引き渡してください。

なお、第17条の表明保証に違反した場合は、第17条第4項により第24条第1項の免責が適用されません。差押えや未払賃料のような「そもそも事実と違う」類は、現状有姿を選んでいても責任が残ります。契約不適合責任の一般的な組み方は売買契約書テンプレートで扱っています。

賠償の上限と違約金(第27条)

第27条第3項は、賠償の額の上限を第4条第1項の譲渡代金の総額とするか、上限を設けないかの2択です。公表された相場はありません。中小企業庁の事業譲渡契約書サンプルも、補償の上限額を「合計損害額○○円を上限とする」と空欄のまま配っています。代金の総額を上限にしておけば、少なくとも受け取った額を超えて賠償する形にはなりません。

第27条第4項の違約金の欄は、書くか書かないかで意味が変わります。民法第420条第3項は、違約金を賠償額の予定と推定するとしています。額を書けば、実際の損害がそれより小さくても大きくても、原則としてその額になります。第27条第5項で、違約金の額を超える損害が生じたときは超える額を請求できる形にしてありますが、これは第27条第2項の損害の範囲と第27条第3項の上限の中での話です。

譲渡日をまたぐお金(第19条・第20条)

第19条第1項は、譲渡日の前日までに生じた債権債務は譲渡人に、譲渡日以後に生じたものは譲受人に帰属するとしています。賃料・共益費・電気・ガス・水道・通信・リース料・保守料は、第19条第2項で譲渡日を基準に日割り精算します。譲渡日の分は譲受人の負担と決めてあるので、当日の光熱費で迷いません。

第19条第4項は、前受金の条文です。前受金、予約金、商品券、食事券、回数券、ポイント。譲渡日の前に売った回数券は、引渡し後に譲受人の店へ持ち込まれます。選択肢は2つです。譲受人が引き継ぎ、譲渡人が相当額を支払うか代金から控除する形か、譲受人は引き継がず、譲渡人が譲渡日までに払戻しを済ませる形か。どちらも選ばずに引き渡すと、店頭で断る役が譲受人に回ります

在庫は第20条です。譲渡日に立会いのうえ実地棚卸を行い、品目と数量を確定して別紙2に書きます。単価は第20条第3項の3択(譲渡人の仕入価格/仕入価格に一定の率を乗じた額/品目ごとに協議)で、率の欄は空欄です。

賞味期限や消費期限を過ぎたもの、期限が引渡し後まもなく到来するもの、品質が劣化しているものは棚卸の対象から外し、譲渡人が自らの費用で処分します(第20条第4項)。

第4条第2項の見込み額との差額は、第20条第5項で不足する側が支払います。

12. 店舗譲渡契約書の印紙税|営業の譲渡は第1号の1文書

印紙が要るかどうかは、造作・什器だけを売るのか、営業ごと譲り渡すのかで決まります。表題では決まりません。国税庁は、文書の内容判断を、その文書の名称・呼称や形式的な記載文言によるのではなく、記載されている文言などの実質的な意味を汲み取って行うとしています。「店舗譲渡契約書」と書いてあるから課税、ではありません。

営業の譲渡を含むと、第1号の1文書になります

国税庁の印紙税額一覧表は、第1号文書の1つ目に「不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書」を挙げています。営業の譲渡がここに入っています。

印紙税法基本通達は、この「営業の譲渡」を、営業活動を構成している動産、不動産、債権、債務等を包括した一体的な権利、財産としてとらえられる営業の譲渡をいい、その一部の譲渡を含むとしています。

国税庁は質疑応答事例でも、営業活動における一部門であっても、財産的組織体として譲渡する限りにおいては営業の譲渡に含まれます、としています。複数の店舗のうち1店舗だけを譲る場合でも該当し得るということです。

なお同一覧表は、無体財産権を、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権としています。商号(屋号)が入っています。第18条第1項で屋号を引き継ぐほうを選ぶと、この面からも第1号文書の側に寄ります。

税額は記載金額の区分で決まります。記載金額は、造作や在庫の内訳の合計ではなく、その営業を譲渡することについて対価として支払われるべき金額です。配布テンプレートでは第4条第1項の総額がこれに当たります。

以下は、国税庁の印紙税額一覧表による第1号文書の税額です。

記載された契約金額 印紙税額(1通につき)
1万円未満 非課税
1万円以上10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1千円
100万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

同一覧表が軽減措置として案内しているのは、不動産の譲渡に関する契約書と建設工事の請負に関する契約書です。営業の譲渡に関する契約書は、この軽減措置の対象に含まれていません。負担する者は第30条第1項で決めます(折半/譲渡人/譲受人の3択)。

営業を渡さない場合は「不課税」です

営業を渡さず、厨房機器と内装だけを売る契約書は、扱いが変わります。国税庁は、課税文書に当たる要件の1つとして、印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項が記載されていることを挙げています。動産の売買契約書は、この20種類のどれにも当たりません。したがって課税文書ではなく、印紙は要りません。

これは「非課税」ではありません。非課税は、印紙税法第5条により印紙税を課さないこととされているもので、課税物件表に掲げられたうえで税額が生じないという意味です。国税庁の印紙税額一覧表にある「1万円未満は非課税」がこちらに当たります。2つは別物なので、言い換えないでください。

領収の文言を書き足さないでください

代金を受け取った旨を契約書に書き足すと、金銭の受取書としての性質を併せ持ちます。

国税庁の一覧表は、第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものについて、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書とならないとしています。少額の譲渡でも印紙が必要になるということです。

配布テンプレートの第6条は、譲渡人が代金を受領したときに契約書とは別に領収書を作成して交付する、としています。1通で兼ねないでください。

判断に迷うときは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

💡 印紙税の判定を意識した条文構成

会員登録不要でWord形式のままダウンロードできます。第4条第1項に記載金額となる総額、第4条第2項に消費税の区分用の内訳、第6条第6項に領収書を別に作る旨、第30条第1項に印紙代の負担者を置いてあります。書面で作成しないときの扱いは第30条第4項にあります。

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13. 紙のままで足りる場合と、電子で交わす場合

紙の契約から電子契約への移行イメージ

先に、紙のままで構わない場合を挙げます。この取引には、電子に寄せないほうが早い事情がいくつかあります。

保健所の窓口が紙の写しを求める場合。承継届の受け方は窓口ごとに違います。前の章で挙げた3つの窓口も、契約書等の画像(PDF、JPG、PNGファイルなど)を用意させるところ、オンラインの申請システムで地位承継届を出せるが対象を「当該システムで申請等した施設に限る」としているところ、添付書類を「契約書等の写し」としているところに分かれました。電子署名の付いたPDFが受理条件になるかどうかを示した公的な文書は見当たりません。紙で出すことになるなら、印刷して持参すれば済みます。第14条第5項の事前相談のときに、提出の方法もあわせて聞いてください。

相手方が電子での締結に同意しない場合。店を畳む側は、これで事業を終える個人オーナーであることがあります。パソコンでの手続に不慣れであれば、無理に電子へ寄せる意味はありません。配布テンプレートの末尾は、紙を2部作成して記名押印する形と、電磁的記録に電子署名を付す形の2択にしてあります。

造作・什器だけの譲渡に切り替えた場合。動産の売買契約書は印紙税法の課税物件表の20種類に当たらず不課税なので、印紙代を理由に電子化する動機がそもそもありません。

逆に、電子で交わしたほうが早いのは次の場合です。譲渡人がすでに遠方へ転居している、または引渡し日までに会って押印する日程が取れない場合と、譲渡人がこれで事業を終えるため、書面のやり取りに使える時間が限られている場合です。

ムスビサインは立会人型(事業者署名型)のクラウド型電子契約サービスで、電子署名法第3条に対応しています。締結時にAATL(Adobe Approved Trust List)証明書による電子署名と、総務大臣認定タイムスタンプを付与します。

そして受領者(署名する相手)はアカウント登録が不要で、メールのリンクから登録なしで署名できます。店を畳む譲渡人に、アカウントを作ってもらう説明から始めなくて済みます。

書面で作成しない場合、第30条第1項の収入印紙の負担の定めは適用されません(第30条第4項)。末尾の締結方法の欄で電磁的記録のほうを選び、第30条第1項の選択には印を付けずに残す形になります。

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14. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順

ダウンロードしてから引渡しの当日までは、5ステップです。

ステップ1:冒頭の「店舗の表示」を埋める

屋号、所在地(建物名と部屋番号まで)、業種、営業許可番号、許可を受けた保健所の名称、営業許可の有効期限。承継届に添付することを考えて、店舗が一意に特定できるところまで書きます。甲が譲渡人、乙が譲受人です。

ステップ2:型を決める空欄から順に埋める

配布テンプレートの末尾に、埋める順を書いてあります。

店舗の表示、第1条第3項(譲渡日)、第8条第1項(賃貸借の承継方法)、第7条第3項(承諾の期限)、第4条(代金と内訳)、第5条(手付金)、第6条(支払期日)、第9条(敷金等)、第16条(引継ぎ)、第18条(屋号)、第21条(従業員)、第22条(競業避止)、第24条(契約不適合)の順です。

前の条で決めたことが、そのまま次の条の判断材料になります。賃貸借の承継方法を決めないと承諾の中身が決まらず、屋号を決めないと第2条の譲渡対象が確定しません。

この順番は「決める順」であって、空欄の全部ではありません。

1行1択の□は、17の条に計50あります。□があるのは、第3条・第5条・第8条・第9条・第10条・第15条・第16条・第17条・第18条・第19条・第20条・第21条・第22条・第24条・第27条・第30条・第32条です。これに末尾の締結方法の2択が加わります。

記入欄の[ ]は、本文に約60、別紙に約79あります。別紙の分は目録の行なので、行を足したり消したりして使ってください。

ステップ3:別紙3本を先に埋める

別紙1(造作・什器備品)と別紙3(除外する物件)は、締結の前に埋めてください。別紙3が空のまま署名すると、リース物件を引き渡す約束をしたことになります。別紙2(在庫)は引渡し日の実地棚卸で確定するので、締結時は空欄のままで構いません。

ステップ4:締結する

第32条の合意管轄に印を付け、末尾の締結方法(紙で作成するか、電磁的記録か)を選んで署名します。契約書の写しを何通か手元に置いておくと、窓口ごとの添付に使えます。

ステップ5:引渡しの当日にやることを、この順で潰す

引渡し日は、書類ではなく現物が動く日です。第11条第2項の立会いで確認するのは、次の項目です。

  • 別紙1・別紙2の記載と現物を照合し、設備を実際に動かして稼働を確認する(第11条第2項)
  • 鍵とカードキーの本数を数えて引き渡す(第11条第3項)
  • 電気・ガス・水道のメーターの数値を読む。日割り精算の起点になります(第19条第2項)
  • 実地棚卸を行い、品目と数量を確定して別紙2に書く(第20条第1項)。期限切れの食材は対象から外す(第20条第4項)
  • 前受金・商品券・回数券の一覧を突き合わせる(第19条第4項)
  • 別紙3のリース物件が撤去されているか、契約の承継が済んでいるかを見る(第3条第3項)
  • 引渡確認書を作り、双方が署名または記名押印して各1通を保有する(第11条第4項)

譲渡人の私物が残っていたら、その場で持ち帰ってもらいます。残された物は、第11条第6項により期間を定めて搬出を催告したうえでなければ処分できません。リース物件・所有権留保付きの物件・大家所有の設備は、催告しても譲受人が処分できない扱いです。

締結後は、譲渡日後遅滞なく承継届(第14条第2項)、第18条第4項の登記または通知、第15条第1項の各届出、という順で進みます。

15. よくある質問(FAQ)

Q1. 飲食店の営業許可は、譲り受けたら取り直しですか?

A. 取り直しではありません。食品衛生法第56条第1項は、許可を受けた者が当該営業を譲渡したときに、譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。

厚生労働省のリーフレット「事業譲渡に関する手続が整備されました」も、2023(令和5)年12月13日から、譲受人は新たな許可の取得等を行うことなく届出により営業者の地位を承継することになる、としています。

ただし改正法の附則により、施行日である2023年12月13日より前に営業の譲渡があった場合の譲受人には適用されません。譲渡日がいつになるかで扱いが分かれます。

Q2. 承継届に添付する「その事実を証する書面」は、この契約書で足りますか?

A. 足ります。ただし提出の前に、保健所への確認が要ります。

食品衛生法第56条第2項は、地位を承継した者が遅滞なくその事実を証する書面を添えて届け出なければならないとし、食品衛生法施行規則第67条の2は、届出書に営業の譲渡が行われたことを証する書類を添付しなければならないとしています。配布テンプレートの第14条第3項は、契約書の写しをこの書面として用いることに両当事者が同意する形にしてあります。

もっとも、同規則は届出書の様式を定めておらず、様式・添付書類・受付方法は自治体ごとに異なります。契約書が無い場合の同意書を配っている窓口もあります。譲渡日を決める前に、管轄の保健所へ確認してください。

Q3. 大家さんが承諾してくれないときは、どうなりますか?

A. 停止条件が成就せず、本件譲渡は効力を生じません。本契約は当然に終了し、手付金その他受領した金員が全額戻ります(第7条第4項)。第7条第5項で、この場合に相手方へ損害賠償その他の金銭を請求できないことも決めてあります(故意に承諾の取得を妨げた場合を除く)。

承諾を取らずに引き渡す選択はありません。民法第612条第1項が賃貸人の承諾なく賃借権を譲渡することを禁じ、同条第2項が、違反した場合に賃貸人が契約を解除できるとしているためです。買った側が営業を続けられなくなります。

Q4. 屋号をそのまま使いたいのですが、前の店の借金まで負いますか?

A. 何もしなければ負います。商法第17条第1項は、譲渡人の商号を引き続き使用する譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負うとしています。

外すには、同条第2項のとおり、営業を譲渡した後遅滞なく、責任を負わない旨を登記するか、譲渡人と譲受人から債権者へ通知します。通知は、通知を受けた債権者にだけ効きます。第18条第4項でどちらを行うかを選んでください。

なお、譲受人が同条第1項により責任を負う場合には、譲渡人の責任は譲渡した日後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては消滅するので(同条第3項)、その後は譲受人だけが残ることがあります。第18条第6項に求償の定めを置いてあります。

Q5. 敷金は譲渡代金に含まれますか?

A. 契約書で決めない限り含まれません。民法第622条の2第1項第2号は、賃借人が適法に賃借権を譲り渡したときに、賃貸人が敷金の残額を賃借人(譲渡人)に返還するとしています。譲受人には引き継がれません。

第9条第2項で、代金とは別に譲受人が譲渡人へ支払う、代金の総額に含める、授受せず譲受人が大家へ新たに差し入れる、の3つから選びます。

総額に含める形を選ぶと、印紙税の記載金額が膨らみます。どの形が有利かは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

Q6. 従業員はそのまま引き継げますか?

A. 自動的には移りません。民法第625条第1項は、使用者が労働者の承諾を得なければその権利を第三者に譲り渡すことができないとしています。

労働契約が定めによって承継されるのは会社分割の場合で、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律第3条がその仕組みを定めています。店舗の譲渡は対象外です。

第21条第2項のとおり、譲受人が雇用を希望する従業員へ譲渡日までに労働条件を提示して雇用契約を申し入れる形になります。

Q7. 印紙はいくらですか。営業を渡さず設備だけを売るなら要りませんか?

A. 営業の譲渡を含む契約書は第1号の1文書で、税額は第4条第1項の総額の区分によります(国税庁の印紙税額一覧表による。この記事の「店舗譲渡契約書の印紙税」の章に表を載せています)。

造作・什器だけを個別に売る契約書は、課税物件表に掲げられた20種類のどれにも当たらないため、不課税です。印紙は要りません。

ただし契約書に代金を受領した旨の文言を書き足すと扱いが変わります。国税庁は、第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書とならないとしています。領収書は第6条のとおり別に作ってください。

Q8. 競業避止は何年にすればよいですか?

A. 契約で何も定めなければ20年、契約で定める場合の上限は30年です。その間のどこに置くかは、配布テンプレートでも空欄にしています。

別段の定めを置かなければ、同一の市町村(特別区を含み、政令指定都市では区または総合区)と、これに隣接する市町村の区域内で、譲渡した日から20年間、同一の事業を行ってはならないとされています。特約を置く場合、その効力は譲渡した日から30年の期間内に限られます。

中小企業庁が公表している事業譲渡契約書のサンプルも期間を「○年間」の空欄にしており、公的に示された相場はありません。

適用される条文は、譲渡人が会社なら会社法第21条、商人である個人事業主なら商法第16条です(第22条第2項)。

Q9. 株式会社が店舗を1つ譲渡する場合、株主総会は必要ですか?

A. 譲渡する店舗が、その会社の事業の全部または重要な一部に当たるなら必要です。会社法第467条第1項は、株式会社が同項各号の行為をする場合に、効力発生日の前日までに株主総会の決議によって契約の承認を受けなければならないとしています。

決議の中身は、定款に別段の定めがない限り、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上に当たる多数です(会社法第309条第2項)。定款で定足数を3分の1以上に下げたり、賛成の割合を加重したりできるので、実際の要件は定款で確かめてください。

判定と手続は事業譲渡契約書テンプレートの記事で扱っています。個別の事案で決議が必要かどうかは、弁護士にご確認ください。

Q10. リサイクルショップを譲り受ける場合、古物商の許可はどうなりますか?

A. 古物営業法には、食品衛生法第56条や美容師法第12条の2に相当する、営業の譲渡による地位の承継の規定が置かれていません。

第14条第8項は、こうした許認可について譲受人が自らの責任と費用で新たに取得または届出を行うものとし、要否と手続をあらかじめ所轄の官公署に確認するとしています。古物商の許可は所轄の警察署に確認してください。

第14条第9項には、譲受人が新たに取得または届出を行う許認可を書き出す欄もあります。

16. まとめ:空欄を埋めて、引渡し日までに1通交わす

最後に、締結までに決めることを順に確かめてください。

  • 渡すのは造作だけか、営業ごとか。判定軸は財産的組織体として渡すかどうかで、屋号の有無ではない
  • 賃貸人の承諾を得る期限を第7条第3項に書く。空欄のまま締結しない
  • 賃貸借は地位の譲渡か新規契約か。第8条第1項で選ぶと、承諾の中身が決まる
  • 別紙3を先に埋める。リース物件と大家所有の設備は渡せない(民法第555条)
  • 譲渡代金は総額と内訳の両方を書く。内訳は消費税の区分用、総額は印紙税の記載金額
  • 敷金は譲受人に引き継がれない(民法第622条の2第1項第2号)。第9条第2項で3択から選ぶ
  • 営業許可は承継届で引き継ぐ。この契約書の写しが「その事実を証する書面」になる(第14条第3項)
  • 屋号を引き継ぐなら、第18条第4項の登記または通知を譲渡日後遅滞なく行う(商法第17条第2項)

書面が1通できれば、保健所も消防署も税務署も、同じ写しで回せます。引渡し日から逆算して、承諾の期限を先に埋めてください。

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敷金・保証金の3択(第9条第2項) — どちらが誰にいつ払うかが決まります

屋号を引き継ぐ場合の手当て(第18条) — 登記か債権者への通知かを選べます

競業避止の範囲を選ぶ形(第22条第1項) — 法定の範囲か、地域と年数を自分で決めるか

契約不適合責任の3択(第24条第1項) — 現状有姿か、期間限定か、民法どおりか

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本記事および配布テンプレートは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な事案の適法性や、印紙税・消費税の判定については、弁護士・税理士にご確認ください。

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