契約書のバックデート|日付を遡らせる前に見る条文と、遡及適用の書き方
契約書の日付を遡らせたい理由が税の期や印紙の時期なら、その決め方を置いているのは契約書の日付とは別の条文です。印紙税の納税義務が成立する時、収益がどの事業年度に入るか、罪名として挙がる条文が何を対象にしているかを、条文と国税庁の資料から整理しました。
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4月から動いていた業務委託の契約書が、できあがったのは6月だった。あるいは、取引先から「今期の売上に入れたいので、契約書の日付を3月末にしてほしい」と言われた。契約書に実際より前の日付を書くことをバックデートといいます。日付を遡らせるかどうかで手が止まるのは、こういう場面です。
先に答えを書きます。契約書の末尾に書く締結日は実際に締結した日にして、いつから適用するかは条項で別に決められます。契約の内容は当事者が決められるからです(民法521条2項)。
それでも日付そのものを動かしたくなるのは、動かしたい先が税の期か、印紙の時期だからです。この2つの決め方を置いているのは、契約書に書いた日付ではありません。税の期なら法人税法と所得税法、印紙の時期なら国税通則法と印紙税法が、それぞれ別の基準を置いています。根拠として引くのは、これらの条文と、国税庁の通達と質疑応答事例です。
この記事の結論
- 締結日は実際に締結した日を書き、適用開始日は条項で別に決められる(民法521条2項)
- 契約が成立するのは、相手方が承諾をしたとき(民法522条1項)。契約書に書く日付は、この条文が決めていることではない
- 推定されるのは文書が本人の意思で作られたこと(成立の真正)で、書かれた日付の正しさではない(民事訴訟法228条4項・電子署名法3条)
- 印紙税がかかる文書(課税文書)の納税義務が成立するのは、その作成の時(国税通則法15条2項)。「作成」の意義は印紙税法基本通達44条にある
- 収益の基準は、目的物の引渡し又は役務の提供の日(法人税法22条の2第1項)。同条2項が近接する日の扱いを別に置いている
- 刑法159条が対象にしているのは偽造・変造、刑法157条1項は公務員に対する虚偽の申立て。当たるかどうかは事実関係によるので弁護士に確認する
目次
- 契約書の日付と、契約が成立した日は別のもの
- 遡らせる前に決めるのは「いつから適用するか」
- 印紙税|納税義務が成立する時
- 法人税・所得税|どの期の収益になるか
- 罪名として持ち出される条文が、何を対象にしているか
- 自分で決められるものと、聞きにいくもの
- 契約書のバックデートに関するよくある質問
- まとめ|遡らせたい理由の側から順番を決める
1. 契約書の日付と、契約が成立した日は別のもの

契約がいつ成立するかは、民法522条1項が定めています。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
基準に置かれているのは、相手方が承諾をしたときです。契約書という書面に何年何月何日と書くかは、この条文が決めていることではありません。ここから「遡らせてよい」も「遡らせてはいけない」も出てきません。
方式については、同じ条の2項に定めがあります。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
「法令に特別の定めがある場合を除き」という限定が付いているので、方式が定められている契約は別に扱われます。それ以外については、書面があるかどうかで成立が左右される形にはなっていません。書面が証拠として問題になる場面は、次の条文が扱っています。
「日付が正しいこと」は推定の対象に入っていない
民事訴訟法228条1項は、文書を証拠として使う場面をこう定めています。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
「成立が真正である」とは、その文書が名義人の意思にもとづいて作成されたものである、という意味です。同じ条文の4項が、この証明の負担を軽くする推定を置いています。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
電磁的記録についても、電子署名法3条に同じ形の推定があります。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
括弧書きの限定は落とせません。推定が働くのは、これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなる電子署名が行われている場合です。
そして、3つの条文がそろって扱っているのは「成立の真正」です。文書に書かれた日付が正しいことは、推定の対象に入っていません。ここから「署名や押印があるので日付も正しいと推定される」とは出てきませんし、その裏返しの「日付が実際と違うので証拠として弱くなる」も出てきません。証拠力の話がどこまで法律で支えられているかは、有効性を支える3つの法律と裁判での証拠力にまとめています。
遡らせて動かしたいものは、どこで決まっているか
日付を遡らせたい動機ごとに、決め方を置いている条文を並べると次のようになります。
| 遡らせて動かしたいもの | 決め方を置いている条文 | 条文が基準にしているもの |
|---|---|---|
| 印紙税の納税義務がいつ成立するか | 国税通則法15条2項 | 課税文書の作成の時 |
| 法人の収益をどの事業年度に入れるか | 法人税法22条の2第1項・第2項 | 目的物の引渡し又は役務の提供の日(1項)、これに近接する日(2項) |
| 個人の収入金額をどの年に入れるか | 所得税法36条1項 | その年において収入すべき金額 |
| いつから適用するか | 民法521条2項 | 当事者が決めた契約の内容 |
いずれも、契約書に書いた日付を基準に置く形にはなっていません。2項が近接する日の例に挙げている「契約の効力が生ずる日」も、契約書の末尾に書く日付とは別のものです。
2. 遡らせる前に決めるのは「いつから適用するか」
「4月1日と書きたい」の中身が「4月から適用したい」なら、締結した日を動かさずに書ける形があります。契約の内容は当事者が決められます。民法521条2項です。
契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
「法令の制限内において」が条文に書かれています。当事者の取り決めで決められるのは当事者間の関係についてで、これを超えて課税関係や第三者との関係まで動かせる、とはこの条文からは出てきません。
そのうえで、契約書には締結した日と、いつから適用するかを別々に書けます。末尾の日付欄には実際に締結した日を書き、適用の開始は条項として置く形です。
遡及適用の記載例
さかのぼって適用することを遡及適用といいます。契約書の本体に置く場合は、次の形になります。
記載例:本契約は、[YYYY年MM月DD日]にさかのぼって効力を生じる。これにより、同日以降の当事者間の関係について、本契約の条件が適用されるものとする。
すでに結んだ契約を変更する場合は、覚書の側に同じ形を置きます。覚書の書式と、遡及適用したときに整理しておく項目は契約変更覚書テンプレートにまとめています。
ここで書けるのは当事者間の取り決めまでです。遡及適用の条項を置いたからといって、印紙税の納税義務が成立する時や、収益がどの事業年度に入るかの決まり方が動く、とはこの記事で引いた条文からは出てきません。
締結日と適用開始日を書き分けるのが向かない場合
- 相手方が「日付を〇月〇日にしてほしい」とだけ求めていて、何を動かしたいのかを確かめていない。動かしたいものが税の期や印紙の時期なら、書き分けても決まり方が動くとは、この記事で引いた条文からは出てこない
- すでに双方の押印が済んでいる。この場合は、締結済みの契約書をどう扱うかという別の論点になる
- 直したいのが、実際に締結した日を書き間違えたこと。これは適用開始日の取り決めではなく、記載を直す話になる
- 内容は決まっていて、締結だけが遅れている。相手方の返送を待っている段階なら、催促の側から片づくことがある
締結だけが遅れているなら、日付の書き方より先に締結を終わらせる手があります。ムスビサインは、契約書のPDFをメールのリンクから相手に署名してもらう形で送れます。
返送が来ないまま予定していた日付が過ぎていく場合の進め方は、催促の伝え方と、待ち時間をなくす方法にまとめています。
3. 印紙税|納税義務が成立する時
印紙税がかかる文書のことを課税文書といいます。納税義務がいつ成立するかは、国税通則法15条2項が税目ごとに定めています。
納税義務は、次の各号に掲げる国税(第一号から第十三号までにおいて、附帯税を除く。)については、当該各号に定める時(当該国税のうち政令で定めるものについては、政令で定める時)に成立する。
印紙税について同項が挙げているのは、次の時点です。
印紙税 課税文書の作成の時
納める義務を負うのは作成者です。印紙税法3条1項にこう書かれています。
別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。
「作成」は、日常語の「作った日」とは別の概念
「作成の時」が何を指すかは、国税通則法15条2項には書かれていません。国税庁の印紙税法基本通達がそこを補っています。44条です。
法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
単なる調製行為ではなく、課税事項を記載し、その文書の目的に従って行使することを「作成」としている書き方です。この通達の44条は、続く2項で「作成の時」を区分ごとに示しています。
契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 当該証明の時
国税庁の質疑応答事例「課税文書の作成時期及び作成者」は、同じ枠を示したうえで、この区分の例示に「各種契約書、協定書、約定書、合意書、覚書」を挙げています。
印紙税は、課税文書を作成した時に納税義務が成立し、その作成者が納税義務を負うことになります。
基準にされているのは作成の時であって、文書に書かれた日付ではありません。自社の文書がどの区分に当たるか、記載金額をどう見るかは、これとは別の判断になります。金額と税額は印紙税額の自動計算ツールと、所轄の税務署または税理士に確認してください。
質疑応答事例に付いている注記の読み方
引いてきた質疑応答事例には、次の注記が付いています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
前提としている事実関係が違えば、あてはめも変わるという書き方です。書面ではなく電磁的記録でやりとりした場合の扱いは電子契約に印紙税はかからない?にまとめています。
4. 法人税・所得税|どの期の収益になるか
「今期の売上に入れたい」という動機が出てきたら、見るのは法人税法22条の2です。この条文が基準に置いているのは実際に何がいつ行われたかであって、契約書に書いた日付ではありません。
第1項が置いている基準は、次のとおりです。
内国法人の資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下この条において「資産の販売等」という。)に係る収益の額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
目的物の引渡し又は役務の提供の日です。「別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き」という限定が付いていて、この条文だけで全部が決まる書き方にはなっていません。
同条2項は、これと並ぶもう1つの基準を置いています。
内国法人が、資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日その他の前項に規定する日に近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、同項の規定にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、別段の定め(前条第四項を除く。)があるものを除き、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
こちらの基準は「前項に規定する日に近接する日」で、条文がその例として挙げているのが「契約の効力が生ずる日」です。この基準に入るには、条文に書かれた条件がそろう必要があります。
- 一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従っていること
- 前項に規定する日に近接する日であること
- その事業年度の確定した決算において、収益として経理したこと
2項が挙げているのも「契約の効力が生ずる日」であって、契約書に書いた日付ではありません。効力をいつから生じさせるかは、さきに見たとおり条項で決める取り決めであって、契約書の末尾の日付欄に何と書くかとは別のことです。
個人事業主の場合に見るのは、所得税法36条1項です。
その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
こちらも「別段の定めがあるものを除き」が付いたうえで、「その年において収入すべき金額」という基準を置いています。どの年が「収入すべき」年に当たるかは、この条文だけでは決まりません。自社の取引がどの事業年度、どの年分に入るかは、所轄の税務署または税理士に確認してください。
5. 罪名として持ち出される条文が、何を対象にしているか

契約書のバックデートを調べると、私文書偽造や公正証書原本不実記載といった罪名が並びます。ここで示すのは、その条文が何を対象にしているかだけです。個別の事案がこれらに当たるかどうかは事実関係によるので、判断が要る場面では弁護士に確認してください。
刑法159条1項の柱書は、次のとおりです。
行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、(以下略)
各号は、書面についてのものと電磁的記録についてのものに分かれています。書面についてのものが1号です。
他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造し、又は偽造した他人の印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書等を偽造する行為
電磁的記録についてのものが2号です。
他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造し、又は偽造した他人の電磁的記録印章等を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を偽造する行為
同条2項は、変造について定めています。
他人が押印し若しくは署名した権利、義務若しくは事実証明に関する文書等又は他人が電磁的記録印章等を使用して作成した権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様とする。
3項も置かれています。
前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書等又は電磁的記録文書等を偽造し、又は変造した者は、(以下略)
3項があるので、159条は他人の印章や署名を使った場合だけを対象にしている、とは読めません。1項から3項までがいずれも対象にしているのは、偽造・変造という行為です。
並べて挙げられるもう1つが、刑法157条1項です。
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、(以下略)
要件に「公務員に対し虚偽の申立てをして」が入っていて、条文が見ているのは登記簿・戸籍簿その他の公正証書の原本の側です。
当たるか当たらないかは事実関係によります。弁護士に確認するときに何を示せばよいかは、このあとで整理します。
6. 自分で決められるものと、聞きにいくもの
ここまでで引いた条文のうち、当事者が決められるのは「いつから適用するか」だけです(民法521条2項)。残りは自社の取引の中身で決まるので、判断が要るときの持っていく先が分かれます。
| 迷っているもの | 持っていく先 | 一緒に示すもの |
|---|---|---|
| いつから適用するか | 自社で決められる(民法521条2項) | 契約書の条項として書く |
| 収益がどの期に入るか | 所轄の税務署または税理士 | 引渡し・役務の提供が実際に終わった日、適用開始日の取り決め、確定した決算での経理 |
| その文書の印紙 | 所轄の税務署または税理士 | その文書が何を証明する目的で作られるか |
| 罪名に当たるかどうか | 弁護士 | 遡らせたい理由、実際に締結した日、書こうとしている日付、相手方が求めている内容 |
表で分かれているのは、契約書に書いた日付ではなく、実際に何がいつ行われたかです。締結した日を実際の日で残しておけば、この確認はそのまま進みます。
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7. 契約書のバックデートに関するよくある質問
Q1. 取引はもう始まっているのに契約書がまだです。日付には何と書けばいいですか
A. 末尾の日付欄には、実際に締結した日を書けます。いつから適用するかは、条項として別に決められます。契約の内容は当事者が決められるからです(民法521条2項)。ただし条文には「法令の制限内において」と書かれているので、決められるのは当事者間の関係についてです。
Q2. 今期の売上に入れたいので、契約書の日付を期末にしてほしいと言われました
A. 決まり方を見ているのは、契約書の日付ではありません。法人税法22条の2第1項が基準に置いているのは、別段の定めがあるものを除き、目的物の引渡し又は役務の提供の日です。同条2項は近接する日を基準にする場合を別に定めていて、その例として挙げているのが「契約の効力が生ずる日」です。どちらも、契約書に書いた日付ではありません。自社の取引がどの事業年度に入るかは、所轄の税務署または税理士に確認してください。
Q3. 印紙の時期を前の月に合わせたいのですが、日付を遡らせれば変わりますか
A. 印紙税の納税義務が成立するのは、課税文書の作成の時です(国税通則法15条2項)。ここでいう「作成」は、課税事項を記載し、その文書の目的に従って行使することをいうとされています(印紙税法基本通達44条)。契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書については、作成の時は当該証明の時とされています。基準にされているのは作成の時であって、文書に書かれた日付ではありません。
Q4. バックデートは違法ですか
A. この記事で引いた刑法159条は、1項から3項まで、偽造・変造という行為を対象にしています。刑法157条1項は、要件に「公務員に対し虚偽の申立てをして」を置いています。対象にしているのは登記簿・戸籍簿その他の公正証書の原本です。個別の事案がこれらに当たるかどうかは事実関係によります。この記事では、当たる、当たらないのどちらも書けません。判断が要るなら、事実関係を示して弁護士に確認してください。
Q5. 双方が納得していれば、日付を遡らせても構いませんか
A. 契約の内容は当事者が決められます(民法521条2項)。ただし条文には「法令の制限内において」と書かれています。あわせて見るのは、当事者の取り決めが及ぶ範囲です。印紙税の納税義務が成立する時期は国税通則法15条2項が、収益の帰属する事業年度は法人税法22条の2が決めています。これらの決まり方を合意で動かせるとは、この記事で引いた条文からは出てきません。
Q6. 実際に締結した日を書き間違えました。これも同じ話ですか
A. 別の話になります。この記事が扱っているのは、実際と違う日付を意図して書くかどうかの場面です。書き間違いを直す手順は訂正印・捨印・変更覚書と作り直しの使い分けにまとめています。相手の承諾を取ってから直す順番と、直した結果できあがる文書が課税文書に当たるかどうかが、そちらの論点です。
Q7. 発注の書面を渡すのが遅れました。日付を遡らせて出してよいですか
A. 書面に書く日付を変えても、実際に交付した日が変わるわけではありません。印紙税の納税義務が成立する時も(国税通則法15条2項)、収益がどの事業年度に入るかも(法人税法22条の2)、契約書に書いた日付を基準に置く形にはなっていません。発注の書面を電子で交付するときの要件は発注書面を電子化する際の注意点にまとめています。
8. まとめ|遡らせたい理由の側から順番を決める
見る順番
- 遡らせて何を動かしたいのかを言葉にする。税の期か、印紙の時期か、いつから適用するかのいずれかであれば、次の2から4で見る条文が決まる
- いつから適用するかなら、締結した日は実際の日を書き、適用開始日を条項で決める(民法521条2項)
- 印紙の時期なら、納税義務が成立するのは課税文書の作成の時で(国税通則法15条2項)、「作成」の意義と「作成の時」の区分は印紙税法基本通達44条にある
- 税の期なら、法人税法22条の2第1項の基準と、同条2項の近接する日の扱いを見る。自社の取引がどこに入るかは所轄の税務署または税理士へ
- 罪名が気になるなら、条文が何を対象にしているかを確かめる。当たるかどうかは弁護士に確認する
引いた条文の要点
- 契約が成立するのは相手方が承諾をしたとき(民法522条1項)。契約書に書く日付は、この条文が決めていることではない
- 署名や押印、電子署名で推定されるのは成立の真正であって、書かれた日付の正しさではない(民事訴訟法228条4項・電子署名法3条)
- いつから適用するかは当事者が決められる(民法521条2項)。ただし「法令の制限内において」が条文に書かれている
- 印紙税の納税義務が成立するのは課税文書の作成の時(国税通則法15条2項)。「作成」は課税事項を記載し、文書の目的に従って行使すること(印紙税法基本通達44条)
- 収益の基準は目的物の引渡し又は役務の提供の日で、近接する日の扱いには条文上の条件が付く(法人税法22条の2)
- 刑法159条が対象にしているのは偽造・変造、刑法157条1項が対象にしているのは公務員に対する虚偽の申立て
判断が要るのは2つです。いつから適用するかを当事者でどう決めるか、そして自社の取引が税務上どの期に入るかです。前者は契約書と覚書の書き方でそろえられます。後者は取引ごとに変わるので、判断の理由を1行残しておくと、次の契約で同じ検討を繰り返さずに済みます。
郵送を待たずに、契約書を締結する
ムスビサインは、契約書のPDFをアップロードし、メールのリンクから相手に署名してもらう形で締結できる電子契約サービスです。郵送の往復を挟まずに締結できるので、締結までにかかる日数を短くできます。
毎月3件まで無料のフリープラン
ムスビサインは毎月3件まで無料で契約書を送れます。付与にはクレジットカードまたはSMS認証の登録が必要です。数え方は送信枠で、ファイルを1つ送るごとに枠を1つ使い、締結が成立したかどうかは問いません。取引先のアカウント登録は不要で、相手はメールのリンクから署名するだけで済みます。
まずは1本、いま止まっている契約書から送ってみてください。
本記事は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談・法律相談に代わるものではありません。自社の取引がどの事業年度に属するか、自社の文書が課税文書に当たるかどうか、個別の事案が刑法の各条文に当たるかどうかについては、所轄の税務署または税理士・弁護士にご確認ください。
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