このページの目次
- 業務委託契約書とは(請負と委任の違い)
- フリーランス新法で明示することとされた事項
- 契約書をもらえないときは自分から送る
- 書き方:業務内容・納期・検収・知的財産
- 報酬の決め方4方式と支払条件
- 個別契約と基本契約の使い分け
- 収入印紙は必要か
- よくある質問と関連情報
1. 業務委託契約書とは(請負と委任の違い)
業務委託契約書は、外部の事業者に仕事を頼むときの条件を書き残した書面です。「業務委託契約」という名前の契約類型が民法にあるわけではなく、実務上の呼び名として使われています。
民法の型でいうと、次の2つに分けて説明されることが一般的です。
| 型 | 何に対して報酬を払うか | 例 |
|---|---|---|
| 請負 | 仕事を完成させることに対して | ロゴの制作、サイトの制作、システムの開発 |
| 委任・準委任 | 業務を行うことに対して | 顧問・アドバイザリー、運用代行、事務代行 |
同じ「デザインの依頼」でも、成果物の完成を引き受ける形なら請負に近く、一定の時間や体制で作業することを引き受ける形なら準委任に近い、と整理されます。どちらの型かによって、検収の書き方、報酬の決め方、途中でやめるときの扱いが変わります。
本ツールは、この2つの型のどちらでも書面を作れるようにしています。成果物の完成を引き受ける形では検査と検収の条項が入り、業務の遂行を引き受ける形では業務完了の報告で区切る条項が入ります。
2. フリーランス新法で明示することとされた事項
2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律。以下「フリーランス新法」)により、従業員を使用しない個人や一人法人に業務を委託する事業者は、取引条件を書面または電磁的方法で明示することとされました。
明示することとされている事項は、公正取引委員会・厚生労働省の資料で次のように整理されています。
| # | 明示する事項 |
|---|---|
| 1 | 委託者・受託者の名称(商号・氏名) |
| 2 | 業務委託をした日 |
| 3 | 業務(給付・役務)の内容 |
| 4 | 給付を受領する日・役務の提供を受ける日/検査を行う場合の検査完了日 |
| 5 | 報酬の額(算定方法による記載を含む) |
| 6 | 報酬の支払期日 |
| 7 | 現金以外の方法で支払う場合などの事項 |
契約書にこれらを盛り込んで交付すれば、明示のための別の書面を用意しなくても済む形になります。逆に、業務の内容と報酬だけを書いた簡単な書面では、受領日や支払期日の記載が抜けることがあります。
本ツールでは、入力しながらこの7項目に対応する入力の有無を確認できます。受託する側が従業員を使用する法人・個人の場合は、法定の明示事項のチェックに代えて、一般的な記載推奨項目の一覧に切り替わります。
いずれも入力の有無を表示するもので、書面が同法その他の法令に適合することや、同法の適用があることを判定・保証するものではありません。適用関係や事項の細目は改正されることもあるため、詳細は公正取引委員会・厚生労働省の公表資料をご確認ください。
支払期日については、成果物等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定めることとされています。締日と支払日で定める場合、この期間に収まるかを確認しておくとよいとされています。
より詳しい解説はフリーランス新法と契約書の解説記事にまとめています。
3. 契約書をもらえないときは自分から送る
実務では、書面のないまま仕事が始まってしまうことがあります。口頭やチャットだけで条件を決め、条件の認識が合っていないまま作業が進むと、納品後に修正の範囲や報酬でやりとりが増えがちです。
明示の義務は発注する事業者側にあるとされていますが、書面が来ないときに受注する側から契約書を作って送ることを妨げるものではありません。自分で作った書面を送り、相手の署名をもらえれば、決めた条件が両者に残ります。
受注する側から送る場合、次の順で進めると必要な項目がそろいやすくなります。
- すでに口頭で決まっていること(業務の内容・報酬・納期)を書き出す
- 決まっていないこと(検収の期間・修正の回数・支払期日)を書面の空欄として残さず、相手に確認する
- 書面を送って署名をもらう
本ツールは、発注する側と受注する側のどちらからでも作成を始められます。条項の内容はどちら側で作っても同じで、変わるのは入力の順番と補足の説明だけです。
4. 書き方:業務内容・納期・検収・知的財産
業務委託契約書で行き違いが起きやすいのは、次の4か所だとされています。
業務の内容
どこまでが作業の範囲なのかを書きます。「Webサイトの制作」だけでは、ページ数も、公開後の修正が含まれるのかも分かりません。範囲に入らないことを併せて書いておくと、追加の依頼が来たときの判断がしやすくなります。
納期・契約期間
単発の業務なら納期、継続する業務なら契約期間と自動更新の有無を書きます。納期に間に合わないおそれが生じたときに、どうするか(通知して協議する)まで定めておく形が一般的です。
検収
成果物のある業務では、納入から何日以内に確認するかを決めます。期間内に発注者から連絡がないときは合格とみなす、という定めを置く例が多いとされています。あわせて、無償で対応する修正の回数を決めておくと、修正が続いたときの線引きがしやすくなります。
知的財産
成果物の権利をどう扱うかは、次の3つのいずれかで定められることが多いとされています。
| 型 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡 | 検収の完了と報酬の支払をもって著作権が発注者へ移る。あわせて著作者人格権を行使しないと定める例が多い |
| 利用許諾 | 著作権は受注者に残し、発注者は決めた範囲で利用できる |
| 定めない | 知的財産についての条項を置かない |
どちらが望ましいかは取引の内容と当事者の合意によります。本ツールでは職種ごとに使われることの多い型を初期値にしていますが、推奨はしていません。
5. 報酬の決め方4方式と支払条件
報酬の決め方は、実務では次の4つに整理できます。
| 方式 | 向いている業務 | 書面に書くこと |
|---|---|---|
| 固定報酬 | 成果物の完成を引き受ける業務 | 総額(分割払いなら各回の額) |
| 時間単価 | 稼働の提供を引き受ける業務 | 単価・想定稼働時間・超過分の精算方法 |
| 月額 | 継続的な相談対応・運用・事務 | 月額・含まれる業務の範囲・稼働の目安 |
| 成果報酬 | 成果の達成に対して支払う業務 | 成果の内容・算定方法・発生時点 |
報酬の額は、金額そのものではなく算定方法による記載でもよいとされています。時間単価や成果報酬では、単価と数量の掛け方、成果の定義を具体的に書いておくことが、記載の明確さにつながるとされています。
支払条件では、締日と支払日(毎月末日締め・翌月末日払いなど)、支払方法、振込手数料の負担を決めます。報酬額が税抜か税込かも、書面に書いておかないと後から読み方が分かれます。
6. 個別契約と基本契約の使い分け
継続して発注する取引では、基本契約と個別の発注書を組み合わせる形が使われます。
| 型 | 使い方 |
|---|---|
| 個別契約 | 単発の業務。業務の内容・納期・報酬を1通の契約書に書く |
| 基本契約 | 継続する取引。共通の条件を先に決め、個別の業務は発注書と受注書で確定する |
基本契約にすると、毎回の発注で決めるのは業務の内容・納期・報酬だけになり、秘密保持や知的財産の条項を繰り返し取り交わす必要がなくなります。
注意したいのは、基本契約で業務の内容を「個別契約で定める」とした場合、その内容は個別の発注のときに明示することとされている点です。基本契約を締結しただけでは、明示が済んだことにはなりません。
本ツールで基本契約を選ぶと、契約期間・自動更新・個別契約の成立方法(発注書と受注書の交付)の条項が入り、業務の内容と納期は「個別契約で定める」形に切り替えられます。
7. 収入印紙は必要か
業務委託契約書の印紙税は、契約の内容によって扱いが分かれるとされています。
| 書面の内容 | 印紙税の一般的な扱い |
|---|---|
| 請負に当たる内容(成果物の完成を引き受ける) | 第2号文書として、契約金額に応じた印紙税の課税対象になり得る |
| 継続的な取引の基本となる契約書 | 第7号文書として1通4,000円とされる場合がある |
| 委任・準委任に当たる内容 | 課税文書に当たらないとされている |
電子データを原本として締結する場合は、課税文書の「作成」に当たらないとされ、印紙は不要になるとされています。
個別の契約書がどの文書に当たるかは記載内容によって判断されるため、本ツールでは判定をしていません。金額から必要な印紙税額の目安を調べる場合は印紙税の自動計算ツールをご利用ください。判断そのものは税務署・税理士にご確認ください。
8. よくある質問と関連情報
このページの下のよくある質問に、書面がない場合の扱い、電子契約の有効性、下請法(中小受託取引適正化法)との関係などをまとめています。
職種ごとの論点は、それぞれのページで扱っています。Word形式のひな形が必要な場合は業務委託・請負契約のテンプレート一覧からダウンロードできます。