このページの目次
- 工事請負契約書とは?なぜ必要?
- テンプレートで作るときの落とし穴
- 建設業法19条の記載事項16項目
- 書き方 — 工事内容・工期・代金・支払
- 収入印紙はいくら?電子契約なら0円
- 下請契約で知っておきたいルール
- 電子契約は建設業法上使える?
- よくある質問(FAQ)と関連情報
1. 工事請負契約書とは?なぜ必要?
工事請負契約書は、建設工事の完成を引き受ける約束と、その報酬を支払う約束を書き残した書面です。民法上は請負契約(民法632条)にあたり、口約束でも契約そのものは成立するとされています。
ただし建設工事については、契約書面の交付そのものが建設業法で義務づけられています。建設業法19条1項は、請負契約の当事者が契約の締結に際して一定の事項を記載した書面を作成し、署名または記名押印して相互に交付しなければならないと定めています。
ここで押さえておきたいのは、次の2点です。
| 混同されやすい点 | 実際 |
|---|---|
| 500万円未満の軽微な工事なら書面は不要? | 建設業の許可が不要な工事であることと、19条の書面交付義務があることは別の話です。金額の大小で19条の義務が外れるとはされていません |
| 元請だけが作るもの? | 19条は請負契約の当事者に向けた規定で、下請契約にも及ぶとされています。受注する側にとっても書面は自分を守るものになります |
書面がないと困るのは、多くの場合は受注した側です。追加工事の代金を「言った・言わない」で争うことになり、支払時期の約束も残っていない。完成の判断基準も決めていないため、手直しの範囲が終わらない。これらはいずれも、着工前に一度決めて書き残しておけば防げる内容です。
2. テンプレートで作るときの落とし穴
「工事請負契約書 テンプレート」で探すと、Word や Excel のひな形は数多く見つかります。ダウンロードして社名と金額を差し替えれば、それらしい書面はできます。
問題は、できあがった書面に16項目の抜けがあっても、誰も教えてくれないことです。テンプレートは配布された時点の形のままで、次のような取りこぼしが起きやすいと言われています。
- 「工事を施工しない日または時間帯」の項目が、定めない場合でも記載すべき事項であることに気づかない
- 「価格等の変動に基づく請負代金の変更」の条項が、そもそもひな形に入っていない
- 出来高払いにしたのに、支払の時期と方法が具体的に書かれていない
- 検査の方法が書かれておらず、時期だけになっている
もう一つは、法改正への追随です。建設業法は近年も改正が続いており、配布されたままのひな形が現在の条文と食い違っていることがあります。ダウンロードした側からは、それを確かめる手がかりがありません。
このページのツールは、5つのステップに答えると、16項目のそれぞれについて対応する入力があるかどうかを画面の横に出し続けます。未入力のまま進むこともできますが、どこが空いているかは分かった状態で判断できます。
なお、この表示は記載事項に対応する入力の有無を示すもので、作成された書面が個別の取引において法令に適合するかどうかを判定・保証するものではありません。最終確認はご自身の責任で行い、必要に応じて行政庁・専門家にご確認ください。
配布形式の Word が必要な場合は、工事請負契約書テンプレートのページから雛形をダウンロードできます。入力式で作るならこのページのツール、手元で条文を書き換えたいなら Word、という使い分けになります。
3. 建設業法19条の記載事項16項目
建設業法19条1項が定める記載事項は、次の16項目です。かっこ内は本ツールで対応する入力です。
| # | 記載事項 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 工事内容 | 何をする工事か。工事名・工事場所と内容。詳細は別紙(見積書・図面・仕様書)を引く形が一般的です |
| ② | 請負代金の額 | 金額。消費税額を税抜額と区分して書くかどうかで、印紙税の判定基準が変わります(5章) |
| ③ | 工事着手の時期および工事完成の時期 | 着手日と完成日 |
| ④ | 工事を施工しない日または時間帯の定め | 定めるときはその内容。定めない場合もその旨を書きます |
| ⑤ | 前金払・出来形部分に対する支払の定め | 定めるときはその時期と方法。完成時一括なら定めなしとなります |
| ⑥ | 設計変更・着手の延期・中止の申出があった場合の取扱い | 工期の変更、代金の変更、損害の負担と、それらの算定方法 |
| ⑦ | 天災その他不可抗力による取扱い | 工期の変更、損害の負担と、その算定方法 |
| ⑧ | 価格等の変動・変更に基づく変更 | 資材価格や労務費が動いたときの代金または工事内容の変更 |
| ⑨ | 第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担 | 施工により近隣等に損害が生じたときの負担 |
| ⑩ | 注文者による資材提供・建設機械の貸与 | 定めるときはその内容と方法 |
| ⑪ | 検査の時期・方法、引渡しの時期 | 完成をどう確認して、いつ引き渡すか |
| ⑫ | 工事完成後の請負代金の支払の時期・方法 | 引渡しとの関係でいつ、どうやって支払うか |
| ⑬ | 契約不適合責任・保証保険等の措置 | 定めるときはその内容 |
| ⑭ | 履行遅滞・債務不履行の場合の遅延利息・違約金その他の損害金 | 遅れたときの取扱い |
| ⑮ | 契約に関する紛争の解決方法 | 協議、合意管轄など |
| ⑯ | その他国土交通省令で定める事項 | 省令で事項が追加されたときに反映されます |
「定めるときは記載」型の5項目
④⑤⑩⑬⑭は「定めをするときは、その内容を記載する」という書き方の項目です。定めない選択も取れますが、その場合も「定めを置かない」旨を書面に書いておくほうが、抜けと区別できます。本ツールは「定めない」を選んだときにも、その旨を書面に載せます。
⑥〜⑨は「算定方法」まで求められている
⑥⑦⑧⑨は、損害の負担だけでなくその額の算定方法まで書面に記載することとされている項目です。負担の割合を先に決めてしまう書き方もありますが、工事の内容も相手も毎回違うため、本ツールでは「甲乙が協議して定める」形の条項を既定にしています。これは自動で負担割合を決めない、という設計上の選択です。
4. 書き方 — 工事内容・工期・代金・支払
① 工事内容は「別紙参照」でよい
工事内容を書面のなかで項目・数量・単価まで書き切る必要はありません。実務では、工事名・工事場所・内容の概要を書面に書き、詳細は見積書・図面・仕様書を引いて「本契約と一体をなす」と添える書き方が広く使われています。
本ツールも同じ形をとります。参照する別紙を選ぶと、一体をなす旨が自動で書面に入ります。別紙そのものは作成しないため、見積書や図面は別に用意して、書面と一緒に取り交わしてください。
② 工期は着手日と完成日で特定する
着手の時期と完成の時期は日付で特定します。天候や近隣の事情で動くことがあるため、本ツールの書面には協議して変更できる旨の条項が入ります。
③ 請負代金は大字と算用数字を併記する
金額は、改ざんを防ぐために「金五百万円也」のような大字(だいじ)と算用数字を併記する書き方が慣行になっています。本ツールでは入力された金額から自動で併記します。
消費税額は税抜額と区分して書面に記載されます。これは読みやすさのためだけではなく、印紙税の判定基準に関わります(5章)。
④ 支払方式は3つから選ぶ
| 方式 | どんなときに使われるか | 19条⑤の扱い |
|---|---|---|
| 完成時に一括 | 工期が短く、金額も大きくない工事 | 前金払・出来形払の定めなし |
| 着手金+完成時 | 材料の手配や人員の確保が先に発生する工事 | 前金払の時期・方法を記載 |
| 出来高払い(2〜10回) | 工期が長い工事。進み具合に応じて受け取る | 出来形部分に対する支払の時期・方法を記載 |
出来高払いを選ぶ場合、決めておくのは3つです。何をもって出来高を確認するか(躯体工事の完了時など)、いくら支払うか(割合または金額)、確認から支払いまでの期間。本ツールでは回ごとにこの3つを入力し、割合なら合計100%、金額なら合計が請負代金と一致することを確かめます。
⑤ 検査は「時期」と「方法」の両方を書く
19条⑪が求めているのは、検査の時期と方法、そして引渡しの時期です。時期だけ書いて方法が抜けている書面は珍しくありません。立会いによる目視確認、施工前後の写真と施工記録の提出など、実際に行うことをそのまま書くのが分かりやすい形です。
⑥ 完成後の支払は引渡しとの関係で決める
引渡しと同時に支払う形と、引渡しから一定期間内に支払う形があります。下請契約の場合は、支払期日について建設業法上のルールがあるため、詳細は国土交通省の資料をご確認ください(6章)。
5. 収入印紙はいくら?電子契約なら0円
建設工事の請負契約書は、印紙税法の第2号文書(請負に関する契約書)にあたる課税文書です。建設業法に基づく請負契約書については軽減措置が設けられており、2027年3月31日までに作成される契約書には次の額が適用されます。
| 契約金額 | 印紙税額(軽減後) |
|---|---|
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上 100万円以下 | 200円 |
| 100万円超 200万円以下 | 200円 |
| 200万円超 300万円以下 | 500円 |
| 300万円超 500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超 1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 6万円 |
| 契約金額の記載なし | 200円 |
出典:国税庁タックスアンサー No.7108。上記は建設工事の軽減措置適用後・2027年3月31日までに作成される契約書の場合の額です。5億円を超える区分と最新の税額は印紙税の自動計算ツールで確認できます。個別の課税判断は税務署・税理士にご確認ください。
判定は税抜額か税込額か
第2号文書については、契約書に消費税額が税抜額と区分して明記されていれば税抜額を基準に判定できるとされています。「1,100万円(税込)」とだけ書けば1,100万円で判定され、「本体1,000万円+消費税100万円」と区分して書けば1,000万円で判定される、という差になります。区分の境目にあたる金額では、印紙税額が変わることがあります。
本ツールの書面は、消費税額を税抜額と区分して記載する形にしています。
2通作ると2通分かかる
契約書を2通作成して当事者双方が原本を保管する場合、2通それぞれに印紙税がかかります。片方を写しにすれば写しには課税されませんが、その場合は写しを持つ側に原本がありません。
電子契約なら0円
印紙税法が課税の対象としているのは「文書」です。電子データで作成・締結される電子契約書は課税文書に該当しないと国税庁も示しており、電子データを原本とする場合、契約金額に関わらず印紙税はかかりません。ただし、同じ内容を紙に印刷して取り交わせば、その紙が課税文書になります。
月に複数件の契約を交わす事業者ほど、この差は積み上がります。
6. 下請契約で知っておきたいルール
下請契約には、元請・下請の関係を踏まえた建設業法上のルールが置かれています。代表的なものとして、次のような規定の存在が知られています。
- 下請代金の支払期日:注文者から支払を受けたとき、または引渡しの申出を受けた日から一定期間内に支払うこととされています(例として、引渡しの申出から50日以内など)
- 不当に低い請負代金の禁止:通常必要と認められる原価に満たない金額での契約の締結が禁じられています
- 一括下請(丸投げ)の禁止
- 著しく短い工期の禁止
いずれも本ページでは存在の案内までとします。適用の範囲や具体的な期間の数え方は工事の実態によって変わるため、詳細は国土交通省の資料をご確認ください。個別の判断が必要な場合は、都道府県の建設業担当部局や専門家にご相談ください。
フリーランス新法との関係
2024年11月施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注時の取引条件の明示などを義務づけています。一方で、建設業法の適用がある建設工事の請負については、同法の適用が及ばないとされている論点があります。建設業法側に書面交付義務(19条)が置かれているためです。
ただし、一人親方が受ける仕事すべてが建設工事の請負に当たるわけではありません。どちらの法律の適用を受けるかは仕事の内容によって変わるため、判断が必要な場合は専門家にご確認ください。
基本契約を結んで個別の工事は注文書・請書でやり取りする形をとるなら、工事下請基本契約書テンプレート(建設業法19条の対照表つき)もあわせてご覧ください。
7. 電子契約は建設業法上使える?
建設業法は、19条1項・2項による書面の交付に代えて、相手方の承諾を得た電磁的措置によることを認めています(同法19条3項)。したがって、電子契約で工事請負契約書を取り交わすこと自体は想定された方法です。
押さえておく点は2つあります。
① 相手方の承諾が必要
電磁的措置によるには、あらかじめ相手方の承諾を得ることとされています。署名依頼のメールを送る前に、電子で取り交わすことについて相手方の了解を取ってください。本ツールで「電子契約で締結する」を選ぶと、電磁的措置によることを相互に承諾する旨の条項が書面に入ります。
② 技術的な要件がある
電磁的措置には、見読性の確保や改ざんの検知といった技術的な要件が定められています。ムスビサインは、AATL証明書による電子署名とRFC3161準拠の認定タイムスタンプを付与し、署名後に文書が変更されていないことを検証できる形で締結します。締結が完了すると、当事者双方に締結済みPDFと締結証明書が届きます。
なお、ここに書いたのは制度と当社の機能についての一般的な説明です。個別の取引における適法性を保証するものではありません。取扱いに迷う場合は、国土交通省または都道府県の担当部局にご確認ください。
保存についての注意
事業者が取引で受け取った契約書は、電子帳簿保存法上の保存対象となり得ます。締結済みのPDFは必ずダウンロードして保存してください。
8. よくある質問(FAQ)と関連情報
下の「よくある質問」に10問をまとめています。
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