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工事下請基本契約書テンプレート・雛形|建設業法19条の対照表つき

工事下請基本契約書テンプレート(全30条)を無料ダウンロード。会員登録不要でWord形式のまま使えます。建設業法19条1項の号と各条の対照表、注文書・請書との切り分け、押印を省略できる3要件、印紙税の扱いまで実務目線で解説します。

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工事下請基本契約書テンプレート

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2026-09-07
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この工事下請基本契約書、印刷・郵送・押印なしでそのまま送れます。

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「いつも頼んでいる下請さんと、工事のたびにフルの契約書を作るのが重い」 「基本契約書の雛形は拾ったが、これで建設業法19条を満たせているのか自分では確かめられない」 「資材が上がったので単価を上げてほしいと言われたが、契約書に何も書いていない」

この記事では、継続的に発注する元請負人と下請負人が、工事ごとの注文書・請書と組み合わせて使う工事下請基本契約書のWordテンプレート(全30条)を、会員登録不要で配布しています。

この記事の結論

  • 配布するのは全30条の基本契約書。これ1通では建設業法19条1項の書面にならず、注文書・請書と2点で1組になる。
  • 国土交通省は、基本契約書に19条1項5号〜15号、注文書・請書に1号〜4号という切り分けを示している。対照表を第3章に置いた。
  • 基本契約書の締結時に3つの要件を相互に確認すれば、注文書・請書への署名や記名押印は必ずしも必要ない(第3条)。
  • 標準下請契約約款22条に相当する内容がない契約は19条1項違反とされている。第12条は消さない
  • 元請が特定建設業者なら、支払期日は入金から1か月と引渡しの申出から50日以内のいずれか早い期日(第17条)。
  • 振込手数料は、合意があっても下請代金から差し引けない(第19条)。
  • 紙なら国税庁の第7号文書で4,000円。3か月以内かつ更新の定めなしなら外れるが、自動更新を入れると外れない。

目次

  1. 工事下請基本契約書テンプレートの無料ダウンロード
  2. 基本契約書だけでは足りない|注文書・請書と2点で1セットにする
  3. 【対照表】建設業法19条1項の号と、配布テンプレートの条
  4. 空欄の埋め方|必ず決める欄と、使わないなら閉じてよい欄
  5. 注文書・請書のハンコをやめる|省略できる3つの要件
  6. 資材が高騰したときに金額を上げてもらう条文の作り方
  7. 下請代金はいつまでに払うか|1か月と50日のどちらが先か
  8. 振込手数料・安全協力費を引いてよいか(赤伝処理)
  9. 労務費・契約不適合責任・遅延利息|数字を入れる前に決めること
  10. 印紙税|基本契約書は第7号文書4,000円、注文請書は第2号文書
  11. 電子で交わすか、紙のままでよいか|承諾条項の埋め方
  12. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順
  13. よくある質問(FAQ)
  14. まとめ:基本契約書1通と注文書・請書で、毎回の契約事務を1枚に減らす

1. 工事下請基本契約書テンプレートの無料ダウンロード

配布しているのは、Word形式の工事下請基本契約書の雛形です(全30条)。継続的に工事を発注する元請負人と、それを請ける下請負人・一人親方との間で、共通する取引条件をあらかじめ決めておくための1通です。

会員登録不要・メールアドレス入力不要・そのまま編集できるWord形式

建設業法19条1項5号〜15号に対応(残る1号〜4号は注文書・請書側)

注文書・請書への署名押印を省略するための確認条項つき(第3条)

資材高騰時の事前通知と変更協議の手順を条文化(第11条・第12条)

赤伝処理の費目と算定根拠を書き出す欄つき(第19条)

電子契約に切り替えるときの事前承諾条項つき(第4条)

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継続取引ではなく、単発の工事を1つだけ請け負う・請け負わせるだけなら、基本契約を挟まずに1通で完結させるほうが早く済みます。その場合は工事請負契約書テンプレートを使ってください。

同じ相手と建設工事以外の取引(資材の売買や設計の委託)も続けるなら、取引基本契約書テンプレートを別に結ぶ形になります。

2. 基本契約書だけでは足りない|注文書・請書と2点で1セットにする

電子契約の法的有効性のイメージ

基本契約書を1通交わしただけでは、建設業法19条1項の書面になりません。同項は、契約の締結に際して各号の事項を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。工事内容も請負代金の額も工期も、工事ごとに違います。基本契約書には最初から書けません。

国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインは、この問題を3点セットで解いています。

  1. 基本契約書に、19条1項5号から15号までの事項を書き、当事者が署名または記名押印して相互に交付する
  2. 注文書・請書に、19条1項1号から4号までの事項その他必要な事項を書く
  3. 注文書・請書に、そこに記載のない事項は基本契約書の定めによる旨を明記する

3つめを落とすと、注文書・請書と基本契約書が1組の契約書面として扱われません。

配布テンプレートは第2条にこの明記を求める一文を置いてあり、注文書・請書の側にも同じ一文を入れておく必要があります。

個別契約側の雛形は注文書テンプレート注文請書テンプレートを2本セットで使ってください。

契約を途中で変えるときも、毎回フルの契約書を作り直す必要はありません。

国土交通省の課長通知は、変更の内容が注文書・請書の個別的記載事項に係るもののみである場合について、変更後の内容を明記した注文書・請書を交わす方法を認めています。工期が少し延びた、数量が増えて代金が変わった、という程度の変更なら、注文書・請書の交換で足ります。

配布テンプレートの第2条は、この場合を注文書・請書の交換で処理し、それ以外の事項を含む変更は書面に記載して相互に交付する、と2つに分けてあります。

なお、契約書面の交付は、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければならないとされています。基本契約書を先に交わしておく意味は、ここにもあります。着工前に用意するのが注文書・請書の2枚だけで済むからです。

3. 【対照表】建設業法19条1項の号と、配布テンプレートの条

国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、基本契約書に建設業法19条1項5号〜15号、注文書・請書に1号〜4号を書く形を示しています。この切り分けを、号の側から配布テンプレートの条を引ける表にしました。左が配布テンプレートの条、右が建設業法19条1項の号です。

配布テンプレート(基本契約書)の条 建設業法19条1項
第16条 前金払及び出来形部分に対する支払 第5号
第10条 設計変更、工事の中止等 第6号
第13条 不可抗力による工期の変更及び損害の負担 第7号
第12条 価格等の変動に基づく請負代金の額の変更 第8号
第14条 一般的損害及び第三者に及ぼした損害 第9号
第9条 工事材料の検査並びに支給材料及び貸与品 第10号
第15条 検査及び引渡し 第11号
第17条 工事完成後の請負代金の支払 第12号
第20条 契約不適合責任 第13号
第21条 履行遅滞、遅延利息及び違約金 第14号
第29条 紛争の解決/第30条 合意管轄 第15号

注文書・請書の側に残るのは、次の4つです。

注文書・請書に記載する事項 建設業法19条1項
工事内容 第1号
請負代金の額 第2号
工事着手の時期及び工事完成の時期 第3号
工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容 第4号

記載事項の数が資料によって食い違って見えるのは、法文とガイドラインで数え方が違うためです。

建設業法19条1項の法文には、第16号として「その他国土交通省令で定める事項」が置かれています。一方で国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、契約書面に記載しなければならない事項を①から⑮までの15の事項として整理しています。16号は省令に委任された枠であり、実務で数え上げるのは15の事項です。

この15項目そのものの逐条解説は、第2章で挙げた工事請負契約書テンプレートの記事に置いてあります。

💡 19条1項5号〜15号を埋めた基本契約書がWordで手に入ります

会員登録もメールアドレスの入力も要りません。上の対照表どおりに条を並べてあるので、自社の既存の契約書と1行ずつ突き合わせて、欠けている号だけを移植する使い方もできます。ダウンロードしたら、まず第3条・第4条・第27条の選択肢に印を付けてください。

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4. 空欄の埋め方|必ず決める欄と、使わないなら閉じてよい欄

配布テンプレートには、角括弧の記入欄と、いずれかを選ぶチェックボックスが入っています。全部を埋めなければ締結できない、というものではありません。性質が3つに分かれるので、その順に片づけてください。

電子契約の手順(アップロード→署名→送信)のイメージ

(1)必ず決める欄。空欄のままだと契約が動きません。

決める場所 何を決めるか 記入例
冒頭 甲・乙の商号と、許可行政庁・許可番号 登記どおりの商号、「国土交通大臣許可(般-00)第000000号」
第3条 注文書・請書に毎回ハンコをもらうか、省略するか 「注文書及び請書への署名又は記名押印を省略する」に印
第17条 締切日と支払日 「毎月末日締切」「翌月20日支払」
第20条 契約不適合責任の期間 元請契約に定める期限と同一の期間
第27条 契約期間と、自動更新にするかどうか 「令和8年4月1日から1年間」「自動更新する」に印
第30条 合意管轄の裁判所 3つの選択肢から1つに印
末尾 紙2部で交わすか、電磁的記録1通にするか どちらかに印

(2)取引実態に合わせて決める欄。自社の運用が決まってから埋めます。

決める場所 何を決めるか 記入例
第11条 資材高騰などの事前通知を受け取る窓口 「工事課」「購買部」など実在する部署名
第16条 前金払・出来形払を行うか。行うなら割合と支払期日 「出来形部分に対する支払を行う」に印、割合と期日を記入
第19条 下請代金から差し引く費目と、その算定根拠 「安全協力会費 算定根拠:請負代金の額の1パーセント」
第21条 違約金の率と、法定以外の遅延利息の率 年率

(3)使わないなら「使わない」側に印を付けて閉じる欄。消し込むのではなく、選択肢のうち使わない側を選びます。

決める場所 使わない場合
第4条(電磁的措置) 紙のまま交わすなら、種類・ファイル形式の欄を埋めない
第12条第6項(スライド条項) 「スライド条項を用いない。」に印を付ける。第1項から第5項はそのまま残す
第18条第6項(再下請負人への連鎖) 「次の定めは適用しない。」に印を付ける

第12条と第19条の記入例に出した数字は、あくまで書き方の例です。実際の品目・率・費目は、自社の元請契約と過去の取引実態から決めてください。第17条の支払日は第7章、第19条の費目は第8章、第27条の契約期間は第10章で、それぞれ決め方を扱います。第12条の第1項から第5項を消してはいけない理由は、次の第6章です

5. 注文書・請書のハンコをやめる|省略できる3つの要件

工事のたびに請書へ実印を押してもらい、返送を待つ。この待ち時間が着工前の書面交付を遅らせます。国土交通省の課長通知「注文書及び請書による契約の締結について」は、次の3つの要件をすべて満たすときは、注文書および請書への署名または記名押印は必ずしも必要としないとしています。

  1. 注文者が、消費者契約法2条1項に規定する「消費者」でないこと
  2. 基本契約書の締結時に、注文者と請負者が、建設業法令遵守ガイドラインの考え方に従い、対等なパートナーシップに基づく関係にあることを相互に確認すること
  3. 基本契約書の締結時に、注文者と請負者が、両者の間に反復継続的な取引実績が蓄積されていることを相互に確認すること

2つめと3つめは「基本契約書の締結時に相互に確認する」ことが要件です。あとから口頭で確かめても要件を満たしません。配布テンプレートは第3条をこの確認条項にしてあり、確認したうえで省略するか、これまでどおり押印するかをチェックボックスで選ぶ形にしました。

ここは「必ずしも必要としない」であって、押印が禁止されるわけではありません。同じ通知は、契約金額や工期等を勘案して双方が合意すれば、署名または記名押印することを妨げないとしています。金額の大きい工事だけは押印してもらう、という運用も取れます。配布テンプレートの第3条は、その余地を残してあります。

何回の取引があれば「反復継続的な取引実績」にあたるのか、という目安は示されていません。同じ課長通知にも、建設業法令遵守ガイドラインにも、回数や期間の基準は置かれていません。

相互に確認したうえで判断する要件なので、既に何度も工事を発注してきた相手から順に切り替えるのが無難です。

今回が初めての相手なら、まずは押印する側の選択肢を選んでおいて、取引が積み上がってから第3条を確認し直す形にできます。

押印の省略と印紙税は、別の話です。印紙税法の課税物件表の適用に関する通則5は、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書や、契約の当事者の全部もしくは一部の署名を欠く文書も「契約書」に含むとしています。押印をやめても、紙で作った注文請書には印紙が要ります。印紙を減らしたいなら、次の一手は押印の省略ではなく、注文書・請書そのものを電子にすることです(第11章)。

省略できるのは押印であって、書面の交付そのものではありません。同じ通知は、要件をすべて満たしたうえで電磁的措置を用いて注文書・請書を相互に交付する場合にも、建設業法19条3項の規定が適用されるとしています。押印をやめてPDFをメールで送る運用に切り替えるなら、次の第11章で扱う事前承諾が別途必要になります。

👉 一人親方・下請との契約を電子化した現場の事例

6. 資材が高騰したときに金額を上げてもらう条文の作り方

鋼材が上がった、燃料が上がった。着工後に原価が動いても、契約書に何も書いていないと切り出しにくくなります。価格変動について何も書いていない契約書は、それ自体が建設業法19条1項に違反するとされています。

国土交通省の建設業法令遵守ガイドラインは、請負代金額の変更について規定する建設工事標準下請契約約款22条に相当する内容が規定されていない契約は、建設業法19条1項に違反すると明記しています。配布テンプレートの第12条がこれに当たります。削除しないでください。

第12条は3層になっています。

1層目は、工期内に賃金または物価の変動により請負代金の額が不適当となったときに、協議して変更するという原則です(同約款22条1項に対応)。

2層目は、元請契約の側で賃金・物価の変動を理由に代金が変わったときに、相手方へ協議を求められるという通路です。

3層目が、令和7年12月2日改正の同約款22条3項に対応する部分で、建設業法20条の2第2項に規定する資材の価格の高騰その他の請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生したときに協議を求められる、という定めです。

もう一本、第11条があります。

建設業法20条の2第2項は、工期または請負代金の額に影響を及ぼす事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに注文者へ通知しなければならないとしています。

通知をしておくと、同条3項により、契約締結後に実際にその事象が発生した場合に、19条1項7号または8号の定めに従った変更協議を申し出ることができます。申出を受けた注文者は、申出が根拠を欠く場合その他正当な理由がある場合を除き、誠実に協議に応ずる努力義務を負います(同条4項)。

対象になる事象は、省令で限定されています。建設業法施行規則13条の16第2項は、20条の2第2項の事象を、天災その他不可抗力により生じるもののうち、①主要な資機材の供給の不足もしくは遅延または資機材の価格の高騰、②特定の建設工事の種類における労務の供給の不足または価格の高騰の2つに限っています。何でも通知すればよい、というものではありません。通知の方法も決まっており、同規則13条の17第2項は、建設業法20条1項の見積書を作成するときは情報を記載した書面を添付のうえ当該見積書を、作成しないときは当該情報を記載した書面を、それぞれ交付して行わなければならないとしています。

注文者の側にも通知義務があります。建設業法20条の2第1項の対象は、同規則13条の16第1項が、地盤の沈下・地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象と、騒音・振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象の2つとしています。配布テンプレートの第11条は、甲(元請負人)側の通知を第1項、乙(下請負人)側の通知を第2項に分けて置きました。

事前に通知していなかった場合はどうなるか。同ガイドラインは、20条の2第2項による事前通知がなかったことのみを理由に、元請負人が下請負人から申し出られた契約変更協議を拒む理由にはならないとしています。配布テンプレートは第11条でこれを明文化しました。下請側にとっては「通知していなかったから今さら言えない」と言われないための一文、元請側にとっては「協議は受ける」と決めておくための一文です。

💡 価格変動の協議手順まで条文になっているテンプレートです

会員登録は要りません。標準下請契約約款22条に相当する第12条と、20条の2の事前通知・変更協議に対応する第11条を最初から入れてあります。ダウンロードしたら、第11条の宛先部署と、第12条のスライド条項を使うかどうかを先に決めてください。

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7. 下請代金はいつまでに払うか|1か月と50日のどちらが先か

元請負人が特定建設業者である場合、下請代金の支払期日は、注文者から支払を受けた日から1か月を経過する日と、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日の、いずれか早い期日です。国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)がこの結論を示しています。2つの数字が出てくるのは、根拠が別の条文だからです。

そもそも自社が特定建設業者かどうかは、許可の種類で決まります。

建設業法3条1項2号は、発注者から直接請け負った建設工事について政令で定める金額以上の下請契約を締結して施工する者に特定建設業の許可を求めており、建設業法施行令2条はその金額を5,000万円(許可を受けようとする建設業が建築工事業である場合は8,000万円)としています。

手元で確かめるなら許可票を見るのが早いです。建設業法40条は店舗および現場ごとの標識の掲示を求めており、建設業法施行規則25条は、その記載事項の第1号を「一般建設業又は特定建設業の別」としています。

建設業法24条の3第1項は、元請負人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払または工事完成後における支払を受けたときに、その支払の対象となった建設工事を施工した下請負人に対し、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合および下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内かつできる限り短い期間内に支払わなければならないとしています。

起点が注文者からの入金であるだけでなく、払う額も入金額に連動します。

建設業法24条の6第1項は、元請負人が特定建設業者である場合の下請代金の支払期日を定めています。国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、この条について、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内かつできる限り短い期間内に期日を定めて支払わなければならないと説明しています。こちらは注文者からの入金の有無を問いません。

この50日には適用除外があります。24条の6第1項は、下請契約における請負人が特定建設業者または資本金の額が政令で定める金額以上の法人であるものを除いており、建設業法施行令7条の2はその金額を4,000万円としています。下請が特定建設業者であるか、資本金4,000万円以上の法人であれば、50日の側は働きません。相手が一人親方や中小の専門工事業者であれば、まず外れないと考えてください。

配布テンプレートの第17条は、この2つを並べたうえで、定める支払日は算出される期日のいずれか早い期日を超えないものとする、と閉じてあります。締切日と支払日を書き込むときは、この上限を超えないかを確かめてください。

なお、50日を定めているのは24条の6です。24条の5は不利益取扱いの禁止で、下請負人が国土交通大臣等・公正取引委員会・中小企業庁長官に通報したことを理由に取引停止などの不利益な取扱いをしてはならない、という別の条文です(配布テンプレートの第17条)。番号が近いので取り違えないでください。

支払の方法にも決まりがあります。建設業法24条の3は、同条2項で、下請代金のうち労務費に相当する部分について現金で支払うよう適切な配慮をしなければならないとしています。配布テンプレートも、同じ配慮を第17条に置きました。

8. 振込手数料・安全協力費を引いてよいか(赤伝処理)

安全協力会費、駐車場代、弁当がらのごみ処理費用。下請代金から差し引いている費目は、現場ごとに積み上がっていきます。国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、これらを差し引く行為を「赤伝処理」として整理し、次のものを挙げています。

  • 元請負人が一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用
  • 下請代金の支払に関して発生する諸費用
  • 下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の運搬処理費用
  • 駐車場代、弁当がら等のごみ処理費用、安全協力会費、建設キャリアアップシステムに係るカードリーダーの設置費用および現場利用料

赤伝処理そのものが直ちに問題になるわけではありません。ただし、書面化義務がかかる費目と、かからない費目が分かれています。同ガイドラインが、その内容や差引額の算定根拠等を見積条件や契約書面に明示する必要があるとしているのは、次の3つです。

  • 下請代金の支払に関して発生する諸費用
  • 元請負人が一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の労働災害防止対策に要する費用
  • 下請工事の施工に伴い副次的に発生する建設副産物の処理費用

この3つを契約書面に記載しなかった場合は建設業法19条に、見積条件に明示しなかった場合は同法20条3項に違反するとされています。

一方、駐車場代、弁当がら等のごみ処理費用、安全協力会費、建設キャリアアップシステムに係るカードリーダーの設置費用および現場利用料については、同ガイドラインは、建設業法19条の規定による書面化義務の対象とならないものとしたうえで、後日の紛争を回避する観点から書面化して相互に取り交わしておくことが望ましいとしています。

「毎月の安全協力会費を引いているが契約書には何も書いていない」という状態は、それだけで19条違反になるわけではありません。書面化は、義務としてではなく紛争予防として効きます。

書面化義務の外にある費目でも、やり方によっては別の条文に触れます。

同ガイドラインは、双方の協議・合意がないまま元請負人が一方的に諸費用を下請代金から差し引く行為等について、建設業法18条の請負契約の原則を没却することとなるため、その情状によっては同法28条1項2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当するおそれがあるとしています。

問われるのは「書いたかどうか」だけでなく「合意があったかどうか」です

配布テンプレートの第19条は、費目ごとのチェックボックスと算定根拠の記入欄をセットにしました。義務の有無で欄を分けてはいません。差し引く予定のものは全部、印を付けて算定の方法まで書き込むほうが、あとの説明が楽になります(書き方は第4章の記入例)。書いていない費目は差し引けない、と第19条の中で閉じてあります。

振込手数料だけは別扱いです。同ガイドラインは、振興基準において、合意の有無にかかわらず銀行口座への振込手数料を中小受託事業者に負担させ代金から差し引いてはならないとされている点に留意しなければならない、としています。合意があるから引いてよい、という費目ではありません。配布テンプレートは、第17条で振込手数料を甲(元請負人)の負担とし、第19条でも合意の有無にかかわらず差し引かないと重ねて書いてあります。

建設工事の下請負に取適法(旧下請法)は適用されないのに、なぜ「中小受託事業者」という語が出てくるのか。根拠が取適法ではなく、受託中小企業振興法の振興基準だからです。

同ガイドラインは、振興法について、建設工事の請負が適用されない取適法よりも対象となる取引の範囲が広くなっていると説明し、建設工事における中小受託事業者とは建設工事の請負契約の元請負人・下請負人が該当するとしています。

取適法の外にいても、振興基準は届きます。

差引きの総額にも歯止めがあります。建設業法19条の3第1項は、取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とすることを禁じています。費目を1つずつ契約書に書いたとしても、引いた結果が原価割れになる設計は取れません(第19条)。

9. 労務費・契約不適合責任・遅延利息|数字を入れる前に決めること

配布テンプレートには、年数と率を書き込む空欄が並んでいます。何年・何パーセントと書くかは、法令が一律に決めているものと、自社で決めてよいものが混ざっています。

第18条(適正な労務費の確保)は、建設工事標準下請契約約款2条の2に対応する条文です。同約款2条の2第1項は、請負代金内訳書に明示される労務費が、労務費に関する基準を踏まえた適正な労務費であることを元請負人と下請負人が確認する、としています。この「労務費に関する基準」は、建設業法34条2項に基づいて中央建設業審議会が作成・勧告するもので、既に決定・公表されています。同基準は、建設業法34条に基づく労務費に関する基準として、公共工事・民間工事を問わず全ての取引段階における建設工事の請負契約において適正な労務費を確保することを目的とすると自ら位置づけています。基準の中身は契約書に書き写すものではないので、配布テンプレートにも記載していません。第18条に印を付ける前に、基準そのものを開いて自社の請負代金内訳書と突き合わせてください。

第18条は必須の条文ではありません。中央建設業審議会は、このコミットメント条項を契約当事者の任意で利用できる選択条項として標準約款に追加したとしています(改正部分の施行日は、第三次・担い手3法の全面施行日である令和7年12月12日)。配布テンプレートは第18条第6項に、再下請負人まで同じ義務を連鎖させるかどうかの選択肢を置きました。

第20条(契約不適合責任)の年数は、自社では決められません。同約款47条は、契約不適合責任期間の年数について、原則として元請契約における契約不適合責任の期限に相応する数字を記入するという注を置いています。元請契約より短く切ると、元請から追及される期間だけ自社が丸ごと被ります。手元の元請契約を開いてから記入してください。第20条には「甲と甲の注文者との間の請負契約に定める契約不適合責任の期間と同一の期間」という選択肢も用意しました。

期間の起算には、もう1つ論点があります。民法637条1項は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しないときは、追完請求・報酬減額請求・損害賠償請求・契約解除ができないと定めています。同約款47条7項は、この規定を契約不適合責任期間について適用しないとしています。配布テンプレートの第20条で、適用しないか適用するかを選べる形にしました。

新築住宅は別枠です。住宅の品質確保の促進等に関する法律94条1項は、住宅新築請負契約について、引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分等の瑕疵の担保責任を請負人に負わせています。同条2項は、これに反する特約で注文者に不利なものを無効としています。年数を短く書いても効きません。第20条の末尾がこれに当たります。

第21条(履行遅滞、遅延利息及び違約金)の率のうち、1つだけ法定です。建設業法24条の6第4項は、特定建設業者が引渡しの申出の日から起算して50日以内に下請代金を支払わなかったときに、未払金額について、当該申出の日から起算して50日を経過した日から支払をする日までの日数に応じ、国土交通省令で定める率を乗じた金額を遅延利息として支払わなければならないとしており、建設業法施行規則14条がその率を年14.6%と定めています。起算点は、自社が第17条で定めた支払期日の翌日ではありません。支払期日を50日より手前に置いていても、この法定の遅延利息が動き出すのは50日を経過した日からです。特定建設業者の場合の率は、これより低く書けません(第21条)。違約金の率と、それ以外の場合の遅延利息の率は、当事者間で決めます。

10. 印紙税|基本契約書は第7号文書4,000円、注文請書は第2号文書

印紙は基本契約書と注文請書の2か所で問題になります。判定は別々です。

基本契約書は第7号文書です(継続的取引の基本となる契約書)。国税庁は、第7号文書に当たる文書の例として「下請基本契約書」を挙げ、営業者間で請負に関する複数の取引を継続して行うために共通の取引条件を定める契約書としています。税額は1通につき4,000円です。契約金額をいくらにしても、この額は変わりません。

契約期間を短くすれば外れる、という話には条件が付きます。国税庁は、契約期間が3か月以内で更新の定めのないものは第7号文書から除かれるとしています。

ここで効くのが「更新の定めのないもの」です。国税庁の質疑応答事例は、3か月以内の契約期間が定められていても、更新の定めが併せて記載されているものは「契約期間が3か月を超えるもの」として扱うとしています。

配布テンプレートの第27条で自動更新を選ぶと、契約期間を短く書いても第7号文書からは外れません。契約期間を短くして更新の定めも置かない設計は、更新のたびに結び直す事務と引き換えになります。

工事ごとの注文請書は、基本契約書とは別に判定します。国税庁は、工事請負契約書や工事注文請書を、請負に関する契約書(第2号文書)に該当するものとして挙げています。建設工事の請負に関する契約書には印紙税の軽減措置があり、対象は契約書に記載された契約金額が100万円を超えるものです。100万円以下のものは軽減措置の対象外で税額200円、契約金額が10,000円未満のものは非課税とされています。この軽減措置は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものに適用されます。

注文請書側の判定は注文請書の印紙税、税額の一覧は印紙税額一覧表で確認してください。

💡 契約期間と印紙税の関係を織り込んだ第27条つき

会員登録不要でWord形式のままダウンロードできます。第27条は「自動更新する」「自動的には更新しない」を選ぶ形にしてあるので、印紙税の判定を意識して締結できます。電子で交わす場合の扱いは、次の章で説明します。

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11. 電子で交わすか、紙のままでよいか|承諾条項の埋め方

紙の契約から電子契約への移行イメージ

電子で交わす前に確かめることが1つあります。相手の承諾です。

建設業法19条3項は、書面の交付に代えて、相手方の承諾を得たうえで、国土交通省令で定める情報通信の技術を利用する方法を講じることができるとしています。

建設業法施行令5条の5第1項は、電磁的措置を講じようとするときに、あらかじめ相手方へ電磁的措置の種類および内容を示して、書面または電磁的方法による承諾を得なければならないとしています。

承諾を得ずに送っただけでは、書面の交付をしたことになりません。

では何を示せばよいのか。

建設業法施行規則13条の5は、示すべき「措置の種類及び内容」を2つに限っています。①規則13条の4第1項の措置のうち当事者が講じるもの、②ファイルへの記録の方式です。

国土交通省の電磁的措置ガイドラインは、①についてサービスの名称も示すことが望ましいとし、②の内容として契約書の電子データの形式、使用するソフトウェアの形式やバージョン、電子データに付す電子署名またはタイムスタンプの形式を挙げています。後者は望ましい示し方の例であって、法令が示すことを求めている項目は規則13条の5の2つです

配布テンプレートの第4条が、この2つを埋めるための欄になっています。「クラウドサービスを利用する方法」に印を付け、サービス名と「PDF形式」を書けば、示すべき内容は揃います。電子署名やタイムスタンプの形式まで書き込むかどうかは、任意です。

承諾を取る方法も決まっています。同ガイドラインは、書面、コンピュータ・ネットワークを利用する措置(電子メール、クラウドサービス)、電磁的記録媒体を利用する措置を挙げています。基本契約書の第4条に相手方が印を付けて締結すれば、書面または電磁的方法による承諾がそこで揃います。承諾書を別に作る必要はありません。

使う手段が満たすべき技術的基準は3つです。

建設業法施行規則13条の4第2項は、①相手方がファイルへの記録を出力して書面を作成できること(見読性)、②記録された契約事項等について改変が行われていないかどうかを確認できる措置を講じていること(原本性)、③相手方が本人であることを確認できる措置を講じていること(本人性)を求めています。

配布テンプレートの第4条は、この3つをそのまま引き写しています。

電子署名の方式について、国土交通省の電磁的措置ガイドラインは、当事者署名型(ローカル署名)・当事者署名型(リモート署名)・事業者署名型(立会人型)の3つを並べています。どれかが排除されているわけではありません。

ただし事業者署名型を使う場合、同ガイドラインは、当該電子署名が真の契約当事者により適切に付与されていることを証明する対応策として、2要素認証等を利用することが望ましいとしています。

使う予定のサービスがどの方式で、本人性をどう担保しているかは、第4条に書き込む前に確認してください。要件そのものの詳しい解説は建設業の電子契約にまとめてあります。

紙のままで足りる場合もあります。次のいずれかに当てはまるなら、無理に電子へ切り替える必要はありません。

  • 相手が電子契約を承諾しない。承諾は相手方の判断であり、こちらから強制できません。第4条のとおり、いったん承諾した相手が電磁的措置を受けない旨を申し出たときは、電磁的措置を講じてはいけません
  • CI-NETやグリーンサイトを既に使っている。国土交通省のガイドラインはCI-NET等による電子契約も認めており、運用中の仕組みがあるならそちらで足ります
  • 契約期間を3か月以内にし、更新の定めを置かない設計にした。この場合は基本契約書が第7号文書から外れるので、印紙代を動機にする理由は薄くなります。ただし工事ごとの注文請書は第2号文書として別に判定されるため、そちらの印紙は残ります

印紙税の面では、電子と紙で扱いが分かれます。国税庁は、印紙税の課税対象は課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしています。建設工事の注文請書を書面ではなく電磁的記録で送信する設例について示されたもので、基本契約書を電磁的記録として作成・保存する場合も同じ考え方になります。

福岡国税局の文書回答事例は、電子メールで送信した後に現物を別途交付した場合には課税文書の作成に該当し、現物に印紙税が課されるとしています。電子で送っておいて、あとから紙に印刷して相手に渡すと、その紙に印紙が必要になります。電子に切り替えるなら、控えの渡し方まで含めて電子で閉じてください。

ムスビサインは立会人型(事業者署名型)のクラウド型電子契約サービスで、締結時にPDF全体へAATL証明書による電子署名と総務大臣認定タイムスタンプを付与します。第4条に「クラウドサービスを利用する方法」として記入して使えます。方式が自社の運用に合うかどうかは、上の要件と照らして判断してください。

12. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順

ダウンロードしてから締結までは、3ステップです。

ステップ1:甲・乙と建設業許可を埋める

冒頭の角括弧に、元請負人(甲)と下請負人(乙)の商号を登記どおりに書きます。個人事業主や一人親方が相手なら氏名を書きます。許可行政庁と許可番号は第4章の表に挙げた書式で、軽微な建設工事のみを請け負うなど許可を受けていない相手のときは「なし」と書きます。

ステップ2:第4章の(1)(2)(3)の順に欄を埋める

必ず決める欄、取引実態に合わせて決める欄、使わないなら閉じる欄の順です。第20条の年数だけは、元請契約を開いてから決めてください。

ステップ3:注文書・請書の様式を用意して締結する

第2章で挙げた注文書テンプレートと注文請書テンプレートをダウンロードし、そこに記載のない事項は本契約による旨の一文が入っているかを確認します。ここまで済めば、以後の工事で回すのは注文書と請書の2枚だけになります。

13. よくある質問(FAQ)

Q1. 基本契約書を結べば、工事のたびに注文書・請書は不要になりますか?

A. 不要にはなりません。基本契約書に書けるのは建設業法19条1項5号から15号までで、工事内容・請負代金の額・着手と完成の時期・工事を施工しない日または時間帯(1号から4号)は工事ごとに決まります。国土交通省のガイドラインは、この4つを注文書・請書に記載する形を示しています。基本契約書で減るのは毎回作る書面の枚数であって、書面そのものではありません。

Q2. 契約期間を3か月にすれば印紙は貼らなくてよいですか?

A. 更新の定めを置かなければ、第7号文書から除かれます。ただし国税庁の質疑応答事例は、3か月以内の契約期間が定められていても更新の定めが併せて記載されているものは「契約期間が3か月を超えるもの」として扱うとしています。第27条で自動更新を選ぶと、期間を短くしても外れません。3か月ごとに結び直す事務と引き換えになる点を含めて判断してください。

Q3. 基本契約書に4,000円を貼ったら、毎回の注文請書にも貼るのですか?

A. 別々に判定します。国税庁の整理では、基本契約書は第7号文書として1通につき4,000円、工事ごとの注文請書は請負に関する契約書(第2号文書)として、その注文請書に記載された契約金額で判定します。契約金額が100万円を超えるものは軽減措置の対象、100万円以下は税額200円、10,000円未満は非課税です。二重に課税されているのではなく、文書ごとに別々に判定した結果です。

Q4. 電子で交わした基本契約書を、あとから紙に印刷して相手に渡してもよいですか?

A. 渡せますが、その紙に印紙が必要になります。福岡国税局の文書回答事例は、電子メールで送信した後に現物を別途交付した場合には課税文書の作成に該当し、現物に印紙税が課されるとしています。電子で締結したなら、控えの受け渡しも電子で閉じてください。

なお、印紙を減らすことが目的なら、効くのは工事ごとの注文請書のほうです。基本契約書の4,000円は1通きりですが、注文請書は工事のたびに第2号文書として判定されます。注文書・請書を電磁的記録で交わせば、そのつどの印紙が要らなくなります。

Q5. 下請代金は「受領から1か月以内」と「引渡しの申出から50日以内」のどちらですか?

A. 元請負人が特定建設業者なら、どちらか早いほうです。

建設業法24条の3第1項が注文者からの入金日から1か月以内、24条の6第1項が特定建設業者について引渡しの申出の日から起算して50日以内を求めており、国土交通省のガイドラインは、特定建設業者の支払期限は両者のいずれか早い期日になるとしています。第17条にこの上限を書いてあるので、締切日と支払日はその範囲内で決めてください。

ただし24条の6第1項には適用除外があり、下請契約における請負人が特定建設業者または資本金の額が政令で定める金額以上の法人であるものは除かれます。建設業法施行令7条の2はその金額を4,000万円としているので、下請が資本金4,000万円以上の法人であれば50日の側は働きません。

自社が特定建設業者かどうかの確かめ方は、第7章に書きました。

Q6. 振込手数料を下請代金から差し引いてよいですか?

A. 差し引けません。国土交通省のガイドラインは、振興基準において、合意の有無にかかわらず銀行口座への振込手数料を中小受託事業者に負担させ代金から差し引いてはならないとされている点に留意しなければならないとしています。合意があるかどうかを問いません。安全協力会費や駐車場代のように、協議・合意のうえで契約書面に内容と算定根拠を明示すれば差し引けるものとは扱いが違います。

Q7. 建設工事に取適法(旧下請法)は適用されますか。設計や工事図面の作成を外注する場合は?

A. 建設工事の下請負には適用されません。取適法2条4項の役務提供委託の定義が、建設業を営む者が請け負う建設工事の全部または一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除いており、公正取引委員会も建設工事に係る下請負には適用されないとしています。

一方で公正取引委員会は、建設業者が請け負った建築物の設計や内装設計、工事図面の作成を他の事業者に委託する場合は情報成果物作成委託に該当するとしています。設計や図面作成を外注するときは、この基本契約書ではなく、同法を前提とした書面が必要になります。

なお、取適法が適用されないことと、振込手数料を差し引けないことは両立します。振込手数料の根拠は取適法ではなく受託中小企業振興法の振興基準で、国土交通省のガイドラインは、振興法は建設工事の請負が適用されない取適法よりも対象となる取引の範囲が広く、建設工事における中小受託事業者とは建設工事の請負契約の元請負人・下請負人が該当すると説明しています(第8章)。

Q8. 契約書を交わさないまま着工してしまいました。どうすればよいですか?

A. 基本契約書と当該工事の注文書・請書を、いますぐ交わしてください。そのうえで、次の工事から着工前の交付に戻します。

建設業法19条1項は契約の締結に際して書面を相互に交付することを求めており、国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、契約書面の交付を、災害時等でやむを得ない場合を除き原則として下請工事の着工前に行わなければならないとしています。

既に発生している個別の事案について違反に当たるかどうかは、許可行政庁の判断や事情によります。処分の可能性が気になる場合は、弁護士にご確認ください。

Q9. 基本契約書を結んでいる相手に、請け負った工事をそのまま丸ごと回してもよいですか?

A. 一括下請負は禁止されています。建設業法22条1項は、建設業者が請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならないとしています。

同条3項により、元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得た場合は1項・2項が適用されませんが、同条4項は、共同住宅を新築する建設工事についてこの例外を適用しないとしています。

配布テンプレートは第6条にこの禁止を置いてあります。基本契約書を結んでいても、禁止が外れることはありません。価格変動の協議を定めた建設工事標準下請契約約款22条とは別の条文なので、番号が同じ点に注意してください。

Q10. 解体工事を下請に出すときは、書く事項が増えますか?

A. 増えます。

国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(第12版)は、一定規模以上の解体工事等に係る下請契約について、建設リサイクル法13条により、①分別解体等の方法、②解体工事に要する費用、③再資源化等をするための施設の名称及び所在地、④再資源化等に要する費用の4つを、19条1項の15の事項に加えて書面に記載し相互に交付しなければならないとしています。

対象になる規模は、建設リサイクル法施行令2条が、建築物に係る解体工事は床面積の合計80平方メートル、建築物に係る新築または増築の工事は500平方メートル、それ以外の建築物に係る新築工事等は請負代金の額1億円、建築物以外のものに係る解体工事または新築工事等は請負代金の額500万円と定めています。

この4事項の記載先は基本契約書ではなく注文書・請書です。配布テンプレートの末尾に、4事項と対象規模をまとめた表を付けてあるので、解体を出す前にそこを見てください。

14. まとめ:基本契約書1通と注文書・請書で、毎回の契約事務を1枚に減らす

最後に、締結までにやることを順に確かめてください。

  • 配布する工事下請基本契約書は全30条。これ1通では建設業法19条1項の書面にならず、注文書・請書と2点で1組になる
  • 基本契約書に19条1項5号〜15号、注文書・請書に1号〜4号。注文書・請書には「記載のない事項は基本契約書による」旨を明記する
  • 3つの要件を締結時に相互に確認すれば、注文書・請書への押印を省略できる(第3条)
  • 標準下請契約約款22条に相当する第12条は削除しない。事前通知がなくても変更協議は拒めない(第11条)
  • 元請が特定建設業者なら、支払期日は注文者からの入金から1か月と、引渡しの申出から50日以内の、いずれか早い期日を超えない(第17条)
  • 差し引く費目は内容と算定根拠を書き出す。振込手数料は合意があっても差し引けない(第19条)
  • 契約不適合責任の年数は元請契約に合わせる。新築住宅は10年で、短く書いても効かない(第20条)
  • 紙なら第7号文書4,000円。電子にするなら、相手の事前承諾を第4条で取り、控えも電子で閉じる

まず1通を締結してしまえば、以後の工事で回すのは注文書と請書だけになります。

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本記事で解説した工事下請基本契約書テンプレート(全30条)を、Word形式で配布しています。

注文書・請書との関係を明記 — 記載のない事項は本契約による旨を第2条に置いてあります

支払期日の上限を条文化 — 第17条で1か月と50日以内の早いほうを超えない設計です

契約不適合責任・遅延利息の選択肢つき — 第20条・第21条で元請契約に合わせて決められます

契約期間と自動更新を選ぶ形 — 第27条で印紙税の判定を意識して締結できます

紙・電子のどちらでも締結できる末尾書式 — 記名押印と電子署名を選べます

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本記事および配布テンプレートは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な事案の適法性や、印紙税の判定については、弁護士・税理士にご確認ください。

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