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注文請書に収入印紙は必要か|第2号文書の判定と注文書との関係

注文請書に収入印紙が要るのは、その文書が印紙税法上の契約書に当たるときです。請負か売買か、記載金額があるか継続するか、注文書側が課税文書として扱われる3つの形、電磁的記録で送った場合の扱いを国税庁の資料から整理しました。

公開日: (更新:

取引先から注文書が届き、こちらから注文請書を返す。この形で受注していると、返す書面に収入印紙を貼るのかどうかで手が止まります。相手の注文書には貼っていないのに自社だけ貼るのか、金額を書かなければ済むのか、PDFをメールで送る場合はどうなるのか。

先に答えを書きます。注文請書に印紙が要るかどうかは、その文書が印紙税法上の「契約書」に当たるかどうかで決まります。標題が「注文請書」であることは判断の材料になりません。順番としては、請負か売買か、記載金額があるか継続するか、注文書と注文請書のどちらが契約の成立を証明しているかを見ていきます。

根拠は、印紙税法・民法の条文と、国税庁タックスアンサーNo.7118および質疑応答事例です。税額そのものは記載金額で変わるので、金額の確認は計算ツールに任せます。

この記事の結論

  • 印紙税が課されるのは、印紙税法別表第一の課税物件の欄に掲げる文書(印紙税法2条)。標題ではなく記載内容で決まる
  • 別表第一の「課税物件表の適用に関する通則」5は、契約書に念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書も含むとしている。国税庁は、土木工事を請け負った際に作成する注文請書について、請負者のみが署名押印するものでも第2号文書に該当すると説明している(質疑応答事例「工事注文請書」)
  • 請負か売買かで扱いが分かれる。物品の売買契約は、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き「不課税文書」(質疑応答事例「請負と売買の判断基準(1)」)。印紙税法5条の非課税文書とは別の区分
  • 請負契約は、おおむね、記載金額がある場合は第2号文書、記載金額がなく継続するものは第7号文書(同「請負と売買の判断基準(2)」)
  • 注文書は通常は課税対象にならないが、No.7118が挙げる3つの形に当たれば契約書として扱われる。うち2つには「別に請書等を作成することが記載されているものは除かれる」というただし書きが付く
  • 電磁的記録は文書に含まれないため、書面の注文請書に代えて電子署名を付した電磁的記録をメール送信した事例では、印紙税は課税されないとされている(質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」)

目次

  1. 注文請書に印紙が要るのは、それが「契約書」に当たるとき
  2. 第一の分かれ目|その受注は請負か、売買か
  3. 第二の分かれ目|記載金額があるか、継続するか
  4. 注文書と注文請書、どちらが課税文書になるか
  5. 電磁的記録でやりとりした場合
  6. 注文請書と収入印紙に関するよくある質問
  7. まとめ|貼るかどうかは契約書に当たるかで決まる

1. 注文請書に印紙が要るのは、それが「契約書」に当たるとき

契約書と法令を確認するイメージ

印紙税がかかる相手は文書です。印紙税法2条は、その範囲をこう定めています。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

この別表第一に掲げられている文書が課税文書で、印紙税を納める対象になります。逆に言えば、そこに掲げられていない文書には印紙税がかかりません。「注文請書」という標題が付いているから課税される、という決まり方ではないということです。

では注文請書はどこに入るのか。手がかりは、別表第一の使い方を定めた「課税物件表の適用に関する通則」の5にある契約書の定義です。福岡国税局の文書回答事例(平成20年10月24日回答)のなかで、事前照会者が次のように引用しています。

契約の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。

請書のように当事者の一方だけが作成する文書も、当事者間の了解または商慣習に基づいて契約の成立等を証することとされていれば、印紙税法上の契約書に含まれます。双方の押印がないから契約書ではない、という整理にはなりません。

国税庁の質疑応答事例「工事注文請書」は、この点を注文請書について直接説明しています。

土木工事を請け負った際作成する「注文請書」は、請負契約の成立を証明する文書で、印紙税法上の契約書には念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書も含まれます

請負者のみが署名押印する当該文書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当します。

第2号文書は、別表第一に「請負に関する契約書」として掲げられている区分です。この事例が扱っているのは土木工事を請け負った際に作成する文書なので、標題が同じであればどれも同じ扱いになる、と読むことはできません。条文と事例の範囲で言えるのは、請負契約の成立を証明する目的で作成された注文請書は、受注側の署名押印しかなくても課税文書になりうる、というところまでです。

2. 第一の分かれ目|その受注は請負か、売買か

同じ様式の注文請書でも、請負の受注なのか物品の売買なのかで印紙税の扱いが変わります。民法632条は請負をこう定めています。

請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

売買は民法555条です。

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

仕事の完成に対して報酬を払うのが請負、財産権の移転に対して代金を払うのが売買、という違いになります。国税庁の質疑応答事例「請負と売買の判断基準(1)」は、この区別をどう見るかを次のように書いています。

請負契約か売買契約かの判断基準は、契約当事者の意思が、仕事の完成に重きをおいているか、物の所有権移転に重きをおいているかによって判断します。

ただし、この基準だけで割り切れる取引ばかりではありません。同じ事例は次のように続けます。

しかし、具体的な取引においては、必ずしもその判別が明確なものばかりとはいえません。したがって、印紙税法の取扱いでは、その判別が困難な場合には、次のような基準で判断することにしています

次の区分は、請負と売買そのものの定義ではなく、判別が困難な場合に使う基準として示されたものです。自社の取引がどちらか明らかなら、この表を持ち出す前に決着します。

請負契約に該当すると認められるもの

  • 注文者の指示に基づき一定の仕様又は規格等に従い、製作者の労務によって工作物を建設することを内容とするもの
  • 注文者が材料の全部又は主要部分を提供(有償、無償を問わない。)し、製作者がこれによって一定物品を製作することを内容としたもの
  • 製作者の材料を用いて注文者の設計又は指示した規格等に従い一定物品を製作することを内容とするもの
  • 一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするもの
  • 修理又は加工を内容とするもの

売買契約に該当すると認められるもの

  • 一定物品を一定の場所に取り付けることによって所有権を移転することを内容とするものであるが、取付行為が簡単であって、特別の技術を要しないもの
  • 製作者が工作物をあらかじめ一定の規格で統一し、これにそれぞれの価格を付して注文を受け、当該規格に従い、工作物を製作し、供給することを内容とするもの
  • あらかじめ一定の規格で統一された物品を、注文に応じ製作者の材料を用いて製作し、供給することを内容とするもの

見分けの軸は、注文を受けてから作るかどうかではありません。工作物の建設のように注文者の指示や仕様に従って労務を提供するもの、注文者が材料を出すもの、修理や加工が請負の側に並びます。逆に、あらかじめ規格を決めて価格を付けたものを注文に応じて供給する形は売買の側です。取り付けを伴う取引は両方に出てきていて、取付行為が簡単で特別の技術を要しないものが売買の側に置かれています。

売買なら「非課税」ではなく「不課税」

物品の売買として整理される場合の扱いを、同じ事例はこう書いています。

また、物品の売買契約になりますと、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き、不課税文書になります。

ここで用語を分けておきます。不課税文書は、そもそも別表第一の課税物件の欄に掲げられていないため印紙税がかからない文書です。一方の非課税文書は、印紙税法5条が定める区分です。

別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。

課税物件の欄に掲げられている文書のうち、印紙税を課さないと定められたものが非課税文書になります。印紙税法5条が挙げているのは、最初が「別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書」、次が「国、地方公共団体又は別表第二に掲げる者が作成した文書」です。契約金額が一定額に満たない契約書に印紙が要らないのは、このうち前者の経路になります。課税物件の欄には載ったうえで、非課税物件の欄で課税から外れる、という順序です。

印紙を貼らない結果は同じでも、たどる経路が違います。物品の売買の注文請書を「非課税だから貼らない」と説明すると、印紙税法5条の非課税文書に当たると言っていることになり、根拠がずれます。社内の判定メモやチェックリストに理由を残すときは、ここを分けて書いておくと後から読み直せます。

3. 第二の分かれ目|記載金額があるか、継続するか

前章で請負に当たると整理できた場合、次に見るのは所属する号数です。質疑応答事例「請負と売買の判断基準(2)」は、対応関係をこう説明しています。

印紙税法の通則の規定により、請負契約になりますと、おおむね、記載金額がある場合は階級定額税率が適用される第2号文書(請負に関する契約書)になり、記載金額のない請負契約で継続するものは、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)になります。

第7号文書は「継続的取引の基本となる契約書」の区分です。原文が「おおむね」と断っている点は落とせません。記載金額の有無と継続性だけで機械的に決まる、という書き方はされていません。同じ事例が示している対応関係を抜き出すと、次のようになります。

区分 契約の内容 所属号別
請負 継続する請負で、契約金額の記載のあるもの 2号
請負 継続する請負で、契約金額の記載のないもの 7号
請負 契約期間が3カ月以内で、かつ、更新の定めのないもの 2号
請負 単発(1取引)の請負 2号
売買 継続する売買 7号
売買 契約期間が3カ月以内で、かつ、更新の定めのないもの 不課税
売買 単発(1取引)の売買 不課税

同じ「契約期間が3カ月以内で、かつ、更新の定めのないもの」でも、請負では第2号文書の側、売買では不課税の側に置かれています。請負か売買かの判断が先に効く、という並びです。

ここで迷いやすいのが、取引そのものは毎月続いているのに、注文請書は受注のつど出しているという形です。注文請書が証明しているのは、その1回の受注についての契約の成立です。取引が続いていても、受注のつど出す注文請書は通常は「単発(1取引)の請負」の側で見ることになります。継続性が問題になるのは、その背後にある取引基本契約のほうです。

そのうえで金額の話になります。第2号文書の税額は記載金額によって変わります。自社の注文請書がいくらになるかは印紙税額の自動計算ツールで確認してください。ツール上の区分は「業務委託・制作・保守など(一般的な請負契約)」が第2号文書の本則にあたります(建設工事は別の区分です)。

一方、記載金額がなく継続する請負として第7号文書に当たる場合、この計算ツールでは判定できません。記載金額から税額を出す仕組みなので、第7号文書のカテゴリを持っていないためです。自社の注文請書がこちらに当たりそうなら、記載内容を示して所轄の税務署または税理士に確認してください。

4. 注文書と注文請書、どちらが課税文書になるか

契約書への押印を確認するイメージ

契約が成立する仕組みは民法522条が定めています。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。

同じ条文の2項は、方式についてこう続けます。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

注文書が申込み、注文請書が承諾に当たる形で契約は成立します。書面そのものは、法令に特別の定めがある場合を除き、成立の要件ではありません。印紙税がかかるのは、そのやりとりの過程で作られた文書のうち、契約書に当たるものです。契約が成立する仕組みそのものは電子契約の法的効力を支える3つの法律にまとめています。

注文書側の扱いを、国税庁タックスアンサーNo.7118は概要でこう書いています。

申込書、注文書、依頼書等(以下「申込書等」という。)と称する文書は、通常、印紙税の課税対象とはなりませんが、契約の成立を証明する目的で作成される文書は印紙税の課税対象となります。

「通常」という限定が付いています。注文書だから課税されない、と読むことはできません。No.7118は、申込書等と表示された文書のうち契約書に該当するものとして取り扱われる形を3つ挙げています。

(1) 契約当事者の間の基本契約書、規約または約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合におけるその申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証する文書を作成することが記載されているものは除かれます。

(2) 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されているその申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。

(3) 契約当事者双方の署名または押印があるもの

注文書と注文請書の書式そのものは注文書テンプレート注文請書テンプレートに置いています。

「別に請書を作成する」と書いてあるかどうかで分かれる

ただし後述のとおり、注文書に双方の署名押印がある場合はこの除外が効きません。まず押印欄を確認し、そのうえでこのただし書きを見る順番になります。

No.7118が挙げる3つの形のうち(1)と(2)には、別に請書等を作成することが記載されているものを除くというただし書きが付いています。この除外がどこまで効くかについて、質疑応答事例「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」はこう書いています。

この場合でも、申込書等の文書上に、さらに請書等を作成する旨が記載されていることが必要であり、請書等を作成する旨が記載されていないときは、申込書等も契約書として、また、請書等も契約書として課税されます

請書を作る運用にしていても、それが注文書の文面に書かれていなければ、注文書と注文請書の両方が課税されるという整理です。実務で効くのは、注文書のどこかに「別途、注文請書を差し入れる」といった一文があるかどうかになります。

注文書を作るのは発注側なので、この一文を書き足せるのは相手方です。受注側で動かせるのは、自社が発注する場面で使う自社の注文書と、取引先と結ぶ取引基本契約の成立条項の2つになります。後者は、相手から届く注文書が課税文書として扱われるかどうかを左右します。

質疑応答事例「工事注文書等」は、この分岐を実例で示しています。

次の工事注文書には、基本契約書に基づく申込みであることが記載されていますが、別途、請書(契約の成立を証明する文書)を作成することが記載されていますので、課税文書に該当しないものとして取り扱っています。

双方が署名押印した注文書には、この除外が効かない

(3)の形、つまり注文書に発注側と受注側の両方の署名押印がある場合は扱いが変わります。同じ「工事注文書等」の説明です。

契約当事者双方の署名押印がありますので、契約の申込みの事実を証明する一般的な申込書とは異なり、契約の成立の事実を証明する文書と認められ、第2号文書に該当することになります

別途、請書等の契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものであっても、契約の事実を証明する文書ですから第2号文書に該当します。

判定の軸は押印欄の数ではなく、契約当事者双方の署名または押印があることです。自社が注文書を出す側でもある場合は、その書式に受注側の押印欄まで設けていないかを確認してください。設けていれば、請書を別に作る旨を書いていても、注文書の側が第2号文書になります。

基本契約の書き方で、注文書の扱いが変わる

(1)が想定しているのは、一方の申込みにより自動的に契約が成立する形です。基本契約の書き方がこれと違えば、結論も変わります。質疑応答事例「基本契約に基づき下請業者に交付する注文書」が対象にしているのは、あらかじめ取引基本契約を締結している下請業者との間で、製造委託又は修理委託を発注する場合に交付する注文書です。この取引基本契約には、次の条項が置かれています。

個別契約は、甲より前条の取引内容を記載した注文書を乙に交付し、乙がこれを承諾することによって成立する。

この場合の注文書について、国税庁は次のように回答しています。

したがって、ご質問の文書は、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される申込文書であり、契約の成立等の事実を証明する文書ではありませんから、印紙税法上の契約書には該当しません。

注文書の交付だけでは個別契約が成立せず、受注側の承諾が要る書き方になっていれば、注文書は申込文書として扱われます。受注側から相談できるのは、多くの場合この基本契約の条項です。個別契約が注文書の交付だけで成立する書き方になっていれば、注文書の側が課税文書として扱われる余地が残ります。

受付印だけを押して返す場合

受け取った注文書に押印して返す運用でも、押印の目的によって扱いが分かれます。質疑応答事例「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」は、こう書いています。

その署名又は押印が意思の合致を証明する目的以外の目的でなされたことが明らかなもの、例えば、単なる文書の受付印と認められるものについては、契約書には該当しません

同じ箇所には、反対側の例も続けて置かれています。

頭金、初回金などの受領印の場合は、契約の成立に伴って受け取るものといえますから、契約書に該当することになります

判断は文書上から行われるため、押した印が受付印だと当事者が理解しているだけでは足りません。返す書面に何が書かれているか、その押印が何のためのものかとセットで見ることになります。

5. 電磁的記録でやりとりした場合

注文請書を紙で作らず、データで送る場合の扱いです。国税庁の質疑応答事例「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」は、課税対象の範囲をこう書いています。

印紙税の課税対象となるのは、課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれません。

この事例の前提になっている事実関係は、次のとおりです。

当社は建設工事を請け負っていますが、取引先から受注するに当たり、請負契約の成立を証するものとして書面で注文請書を作成することに代えて、受注する旨や請負内容等の取引情報を記録した電磁的記録に当社の電子署名を付したものを取引先に電子メールで送信しています

そのうえでの結論が、次の一文です。

したがって、おたずねの電磁的記録に印紙税は課税されません。

建設工事を請け負う会社が、書面の注文請書に代えて電磁的記録を送る、という事実関係に対する回答です。紙をあわせて交付する運用が残っている場合まで同じ結論になるとは書かれていません。

注文請書を電磁的記録に変換して送る場合を正面から扱った文書回答事例が、福岡国税局のもの(平成20年10月24日回答)です。事前照会者は、次の見解を示しています。

注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

理屈の根拠として引かれているのが、印紙税法基本通達第44条の整理です。相手方に交付する目的で作成される課税文書については、作成の時は交付の時であるとされています。交付がなければ作成にならない、という道筋です。

同じ見解には、続けて次のただし書きが置かれています。

ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。

これに対する福岡国税局の回答は「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。」でした。あわせて、この回答内容は福岡国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないと注記されています。

データで送れば常に印紙が要らない、という宣言ではありません。質疑応答事例も文書回答事例も、示された事実関係を前提とした回答として読む必要があります。

電子でのやりとりに切り替えないほうがよい場合

次のいずれかに当てはまるなら、印紙税を理由に急いで切り替えても、期待した効果になりません。

  • 取引先が紙の原本を求めていて、データを送ったあとに現物も交付する運用が残る。電子メールで送信した後に現物を別途持参するなどの方法で相手方に交付した場合は課税文書の作成に該当する、という整理が示されている
  • 自社の注文請書が物品の売買として整理される。もともと不課税文書なので、印紙税の面で減るものがない
  • 取引基本契約に、注文書と注文請書を書面で取り交わす旨が定められている。基本契約の定めをどう扱うかを、先に取引先と確認することになる。合意した内容を残す書式は契約変更覚書テンプレートにまとめています

6. 注文請書と収入印紙に関するよくある質問

Q1. 注文請書には必ず収入印紙が必要ですか?

A. 文書の内容で決まります。質疑応答事例「工事注文請書」は、土木工事を請け負った際に作成する注文請書について、請負契約の成立を証明する文書であり、請負者のみが署名押印するものでも第2号文書に該当すると説明しています。一方、物品の売買として整理されるものは、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き、不課税文書とされています。標題ではなく、請負か売買か、契約の成立を証明する目的で作られたかどうかで判断してください。

Q2. 注文書と注文請書の両方に印紙が要ることはありますか?

A. あります。No.7118が挙げる(1)(2)の形に当たる注文書は、契約書に該当するものとして扱われます。この除外について質疑応答事例は、請書等を作成する旨が記載されていないときは、申込書等も契約書として、また請書等も契約書として課税されると書いています。注文書の文面に「別途、注文請書を差し入れる」といった記載があるかどうかが分かれ目になります。

Q3. 物品を売る取引の注文請書は非課税ですか?

A. 国税庁は「不課税文書」と書いています。質疑応答事例「請負と売買の判断基準(1)」は、物品の売買契約について、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き不課税文書になるとしています。非課税文書は印紙税法5条が定める別の区分で、課税物件の欄に掲げられている文書のうち印紙税を課さないものを指します。印紙を貼らない結果は同じでも、根拠が違います。

Q4. 注文請書に金額を書かなければ印紙は不要になりますか?

A. 不要になるとは限りません。質疑応答事例「請負と売買の判断基準(2)」が示す対応関係では、単発(1取引)の請負で契約金額の記載のない契約書も第2号文書の側に置かれています。記載金額がなく継続する請負は第7号文書です。金額を書かないことで所属する号が変わることはあっても、課税されなくなるという整理にはなっていません。

Q5. 受け取った注文書に受付印を押して返しただけでも契約書になりますか?

A. 質疑応答事例「申込書、注文書、依頼書等と表示された文書の取扱い」は、署名または押印が意思の合致を証明する目的以外の目的でなされたことが明らかなもの、例えば単なる文書の受付印と認められるものについては契約書に該当しないとしています。判断は文書上から行われるため、返す書面に何が記載されているかとあわせて確認してください。

Q6. PDFをメールで送ったあとに、紙の注文請書を渡した場合はどうなりますか?

A. 福岡国税局の文書回答事例では、事前照会者の見解として、電子メールで送信した後に現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されると整理されています。福岡国税局は、照会に係る事実関係を前提とする限り差し支えないと回答しています。データと紙を両方渡す運用は、この点を確認してから決めてください。

Q7. 毎月いくつも注文請書を出しています。そのつど判定するのを減らせますか?

A. 減らせるのは、受注が請負で第2号文書に当たり、届く注文書の側は課税されない形で回っているケースです。この形なら印紙を貼る文書が注文請書に集まっているので、注文請書を電磁的記録でやりとりする運用に変えれば、紙の現物を交付するかどうかの判断がなくなります。ムスビサインのように、作成したPDFをアップロードしてメールで送るサービスもこの形です。一方、受注が物品の売買中心なら、もともと不課税文書なので印紙税の面では変わりません。まず自社の受注が請負と売買のどちらに寄っているかを確認してください。

7. まとめ|貼るかどうかは契約書に当たるかで決まる

自社の注文請書を判定する順番

  1. 受注の中身が請負か売買かを見る。売買として整理されるなら、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き不課税文書
  2. 請負なら、記載金額があるか、継続する契約かを見る。おおむね記載金額があるものが第2号文書で、税額は印紙税額の自動計算ツールで確認できる
  3. 届いた注文書に契約当事者双方の署名または押印があるかを見る。あれば、別に請書を作る旨が書かれていても注文書の側が第2号文書になる
  4. 双方の署名押印がないなら、注文書に別途請書等を作成する旨が記載されているかを見る。記載がなければ、注文書と注文請書の両方が課税される
  • 印紙税が課されるのは別表第一の課税物件の欄に掲げる文書(印紙税法2条)。標題が「注文請書」であることは判断材料にならない
  • 通則5は、契約書に請書など当事者の一方のみが作成する文書も含むとしている。請負契約の成立を証明する目的で作成された注文請書は、受注側の署名押印しかなくても課税文書になりうる(質疑応答事例「工事注文請書」)
  • 物品の売買契約は、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き不課税文書。印紙税法5条の非課税文書とは別の区分
  • 請負契約は、おおむね、記載金額があるものが第2号文書、記載金額がなく継続するものが第7号文書。第7号文書に当たりそうなら所轄の税務署または税理士に確認する
  • 注文書は通常は課税対象にならないが、No.7118の3つの形に当たれば契約書として扱われる。(1)(2)のただし書きは、別に請書等を作成する旨が注文書に記載されていて初めて効く

判断が要るのは、自社の取引が請負か売買かという入口と、注文書と注文請書のどちらに契約の成立を証明させているかという設計の2つです。後者は、書式と基本契約の文面を一度整えれば次回以降に持ち越せます。前者は取引ごとに変わるので、判定の理由を1行残す形にしておくと、同じ検討を繰り返さずに済みます。紙をやめる場合の進め方は電子契約の始め方5ステップにまとめています。

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本記事は令和7年4月1日現在の法令等に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談・法律相談に代わるものではありません。自社の注文請書・注文書が課税文書に当たるかどうか、どの号に所属するか、印紙税額がいくらになるかについては、記載内容を示して所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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