契約書の訂正方法|訂正印・捨印・変更覚書と作り直しの使い分け
契約書の誤記を直すとき、その場で訂正するか、変更契約書(覚書)にするか、作り直すかで備えが変わります。訂正の方式が定められている文書との違い、捨印を押すかどうかの判断材料、変更契約書の印紙税を条文と国税庁の資料から整理しました。
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押印まで済んだ契約書の日付が1日ずれていた。送り返してもらった契約書に誤字が残っている。こういうとき、その場で直すのか、覚書を作るのか、作り直すのかで手が止まります。
先に答えを書きます。直せるかどうかを決めているのは、訂正の作法ではなく、相手が変更に同意しているかどうかです。そのうえで見るのは2つです。直そうとしている文書に訂正の方式が定められているか、直した結果できあがる文書に印紙税がかかるかです。
二重線で消して訂正印を押すのか、修正液を使ってよいのか。判断の手がかりになるのは、訂正の方式が条文で定められている文書です。登記の申請書と自筆証書遺言には、直し方そのものが定められています。以下ではその形を示したうえで、契約書に同じ形を当てはめると何が示せるようになるかを整理します。根拠は、民法・民事訴訟法・不動産登記規則・刑法の条文と、国税庁の質疑応答事例です。
この記事の結論
- 直せるのは、相手が承諾したときだけ。自分の手元の分だけ書き換えても変更にはならない(民法522条1項)
- 先に確かめるのは、その文書に訂正の方式の定めがあるか。自筆証書遺言は、その形でなければ変更の効力を生じない(民法968条3項)
- 登記に関する書面の形に揃えておくと、どこを誰が直したかを文書の上で示せる。字数と範囲を記載し、その部分に押印し、元の文字は読める状態で残す(不動産登記規則45条2項)
- 直す箇所が契約上重要な事項なら、変更契約書(覚書)にする。課税対象かは表題ではなく変更する事項で決まる(質疑応答事例「変更契約書」)
- 原契約が電子契約だと、書面で変更したときの記載金額が「増加分」ではなく「変更後の合計額」になるとされた事例がある(同「電磁的記録(電子契約)に係る…変更契約書の記載金額」)
目次
- 直せるかどうかは、相手が変更に同意しているかで決まる
- まず確かめる|その文書に、訂正の方式の定めがあるか
- 登記に関する書面について定められている形
- 捨印を押すかどうか
- 変更契約書(覚書)にする場合の印紙税
- 電子で結んだ契約を、書面の変更契約書で変更したとき
- 契約書の訂正に関するよくある質問
- まとめ|直し方より先に、同意と文書の種類を見る
1. 直せるかどうかは、相手が変更に同意しているかで決まる

契約の内容を決めているのは当事者です。民法521条2項は、こう定めています。
契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
いったん結んだ契約の内容を変えることも、この範囲に入ります。ただし決めるのは双方です。民法522条1項は、契約の成立をこう定めています。
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
申込みと承諾がそろって契約になる、という形です。内容の変更も同じで、直したい旨をこちらから伝え、相手が承諾したときに変更になります。押印済みの契約書に自社だけで手を入れても、相手が承諾していなければ契約の内容は変わりません。契約が成立する仕組みと、それを支える法律は電子契約の法的効力を支える3つの法律にまとめています。
直した跡が意味を持つのは、あとで争われたとき
契約書を訴訟で証拠として使う場面については、民事訴訟法228条1項が定めています。
文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
「成立が真正である」とは、その文書が名義人の意思にもとづいて作成されたものである、という意味です。誰が作った文書かで争いになると、ここを証明する必要が出てきます。同じ条文の4項は、その負担を軽くする推定を置いています。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
署名または押印があれば、真正に成立したものと推定される形です。直した箇所についても、誰の意思で直したのかを署名や押印で残しておけば、その部分について同じ材料をそろえたことになります。訂正印を押す形に意味があるのは、契約の効力の要件だからではなく、この証明の場面で使えるからです。
直し方の選択肢は3つ
| どの形にするか | 選ぶ場面 | そろえておくこと |
|---|---|---|
| その場で訂正する | 誤字や日付の書き間違いなど、契約上の重要な事項に当たらない直し | 訂正した箇所への双方の押印。双方の手元にある契約書の記載をそろえる |
| 変更契約書(覚書)を交わす | 契約金額・支払方法・契約期間など、契約上の重要な事項を変更する | 変更する事項が課税文書に当たるかの確認。原契約との対応が読み取れる書き方 |
| 契約書を作り直す | 直す箇所が多い。相手方の手元にある分に同じ訂正を入れられない | 差し替えることについての双方の合意(民法522条1項)。元の契約書をどう扱うかの取り決め |
どれを選んでも、相手が承諾しなければ内容が変わらない点は共通です。変更契約書にした場合の印紙税と、作り直しに切り替える目安は、このあとで扱います。
2. まず確かめる|その文書に、訂正の方式の定めがあるか
契約の方式については、民法522条2項に定めがあります。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
読み落とせないのは「法令に特別の定めがある場合を除き」の部分です。契約は原則として方式を要しませんが、方式が定められている文書もあります。直し方を考える前に確かめるのは、手元の文書がそちらに当たるかどうかです。
定めがある例の1つが、自筆証書遺言です。民法968条3項は、その変更の方式をこう定めています。
自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
場所の指示、変更した旨の付記、署名、変更場所への押印の4つがそろわなければ、その効力を生じないと書かれています。効力を生じないとされているのは、この変更についてです。遺言書の全体が無効になると書かれているわけではありません。自筆証書遺言の書式と、その訂正方式のとおりに直す手順は自筆証書遺言書テンプレートに置いています。
もう1つの例が、登記の申請書その他の登記に関する書面です。契約書を直すときの形を考える手がかりになるのは、こちらのほうです。
3. 登記に関する書面について定められている形
不動産登記規則45条1項は、書面に記載する文字についてこう定めています。
申請書(申請情報の全部を記録した磁気ディスクを除く。以下この款(第五十三条を除く。)において同じ。)その他の登記に関する書面に記載する文字は、字画を明確にしなければならない。
続く45条2項が、訂正の方式です。
前項の書面につき文字の訂正、加入又は削除をしたときは、その旨及びその字数を欄外に記載し、又は訂正、加入若しくは削除をした文字に括弧その他の記号を付して、その範囲を明らかにし、かつ、当該字数を記載した部分又は当該記号を付した部分に押印しなければならない。
この場合において、訂正又は削除をした文字は、なお読むことができるようにしておかなければならない。
書かれているのは3点です。
- 訂正・加入・削除をした旨と、その字数を欄外に記載する。または訂正した文字に括弧その他の記号を付して範囲を明らかにする。これでどこを直したかが分かる
- 字数を記載した部分、または記号を付した部分に押印する。これで誰が直したかが分かる
- 訂正・削除した文字は、なお読むことができるようにしておく。これで何から直したかが分かる
契約書で同じ形にしておくと、何が示せるか
これは登記に関する書面についての規定で、契約書に適用される規定ではありません。契約書は、法令に特別の定めがある場合を除き方式を要しない文書なので、この形にしなければ直せない、というものでもありません。それでも同じ形にしておくと、あとで成立の真正を争われたときに、どこを誰が直したかを文書の上で示せる形になります。元の文字を読める状態で残しておけば、直す前に何が書かれていたかもあわせて示せます。
修正液や貼り紙で元の記載を覆ってしまうと、このうち直す前に何が書かれていたかが読み取れなくなります。訂正の跡をどこまで残すかは、この点をどう見るかで決まります。
双方の手元にある契約書をそろえる
自社の手元にある分だけを直すと、双方の手元にある契約書で記載が食い違います。相手方が保管している分にも同じ訂正を入れ、内容をそろえておく形になります。手元にある契約書の呼び分けと部数の考え方は契約書の正本と副本の違いにまとめています。
この手間は、書面の現物を双方が持ち合っている形だから生じます。ムスビサインのように電子で締結する場合、双方が参照するのは同じ記録なので、片方だけ直した状態になりません。
その場で直すのが向かない場合
次のいずれかに当てはまるなら、訂正で片づけるより、変更契約書を交わすか作り直すほうが早く終わります。
- 直す箇所が多い。訂正の跡だらけの契約書は、どれが有効な記載かを読み取りにくくなる
- 相手方の手元にある分に同じ訂正を入れられない。回収して押印までもらう手間が、作り直す手間を超えることがある
- 直すのが契約上の重要な事項に当たる。この場合は印紙税の扱いも変わるので、後述する変更契約書の形で残すほうが整理しやすい
- 訂正の方式が定められている文書に当たる。自筆証書遺言のように方式がそろわないと変更の効力を生じないものは、書き直す方法もある
4. 捨印を押すかどうか

契約書の記載を直すには、相手の承諾が要ります(民法522条1項)。捨印は、この承諾を、どこをどう直すかが決まる前に示しておく押印です。押した時点では、何に同意したことになるのかが文書の上で決まっていません。
押すかどうかを決めるのは、押す側です。訂正が必要になった時点で改めて承諾する形でも、契約の内容は変更できます。捨印は、その承諾を先に済ませておくための押印であって、契約の成立や変更のために要る押印ではありません。先に済ませない場合は、訂正が出るたびに承諾を取り直す手間が増えます。
同意する範囲を捨印のそばに書き添えておく方法があります。範囲が書かれていれば、あとから文書を見る人にも、どこまでの訂正について承諾があったのかが読み取れます。
変造については、刑法159条2項に定めがあります。
他人が押印し若しくは署名した権利、義務若しくは事実証明に関する文書等又は他人が電磁的記録印章等を使用して作成した権利、義務若しくは事実証明に関する電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様とする。
変造は、すでにある文書に手を加えて内容を変えることを指す語です。条文は、他人が押印または署名した権利・義務・事実証明に関する文書を変造した者も、私文書偽造と同様に処罰すると定めています。個別の事案がこれに当たるかどうかは、事実関係によります。捨印を押した書類で意図しない訂正がされた場合にこの条文がどう働くかは、その事案の事実関係を見ないと決まりません。
押印を求められたら、確かめるのは2つです。何に同意したことになるのか、そして同意する範囲を書き添えられるかどうかです。
5. 変更契約書(覚書)にする場合の印紙税
その場で直すのをやめて、変更契約書や覚書を交わす形にすると、印紙税の論点が出てきます。印紙税がかかる文書のことを課税文書といいます。国税庁の質疑応答事例「変更契約書」は、変更の意味をこう整理しています。
通則5に規定する「契約の内容の変更」とは、既に存在している契約(以下「原契約」といいます。)の同一性を失わせないで、その内容を変更することをいいます。この場合において、原契約が文書化されていたか、単なる口頭契約であったかは問いません。
原契約が書面だったか口頭だったかは問われません。口頭で決めていた契約を書面の変更契約書で変更する場面でも、変更の判断は同じ枠に入ります。文書としての扱いについては、質疑応答事例「請負契約書の変更契約書」が次のように書いています。
すでに存在している契約の同一性を失わせないで、その内容を変更する変更契約書及び契約の内容として欠けている事項を補充する契約書についても、通則5の規定により、印紙税法上の契約書に該当することになります。
課税されるのは「重要な事項」を変更するもの
すべての変更契約書が課税されるわけではありません。同じ質疑応答事例「変更契約書」は、線引きをこう説明しています。
法は、契約上重要な事項を変更する変更契約書を課税対象とすることとし、その重要な事項の範囲は基通別表第2に定められていますが、ここに掲げられているものは例示事項であり、これらに密接に関連する事項や例示した事項と比較してこれと同等、若しくはそれ以上に契約上重要な事項を変更するものも課税対象になります。
印紙税法の取扱いでは、変更したときに課税対象となる事項を「重要な事項」と呼び、その範囲を印紙税法基本通達の別表第2に定めています。ここで落とせないのは「例示事項であり」という書き方です。別表第2に並んでいないものでも、これらに密接に関連する事項や、同等かそれ以上に重要な事項の変更は課税対象になると書かれています。
重要な事項は号ごとに違います。質疑応答事例「請負契約書の変更契約書」が第2号文書(請負に関する契約書)について挙げているのは、次の事項です。
印紙税法の取扱いでは、契約の変更及び補充の場合に、課税の対象とする重要な事項を基通別表第2に定めており、第2号文書の重要な事項は次のとおりになります。
- 請負の内容(方法を含みます。)
- 請負の期日又は期限
- 契約金額
- 取扱数量
- 単価
- 契約金額の支払方法又は支払期日
- 割戻金等の計算方法又は支払方法
- 契約期間
- 契約に付される停止条件又は解除条件
- 債務不履行の場合の損害賠償の方法
これは第2号文書についての範囲です。自社の原契約が別の号に所属するなら、見る一覧も別になります。
表題を「覚書」にしても、判断は中身で決まる
同じ質疑応答事例は、支払方法を変更する覚書について、こう結論づけています。
工事請負契約書にすでに定められている重要な事項である支払方法を変更するものですから、第2号文書(請負に関する契約書)に該当することになります。
表題を「覚書」や「念書」にしても、それだけで課税から外れる形にはなりません。逆に、重要な事項に当たらない変更なら、表題が「変更契約書」でも課税文書にならない場合があります。質疑応答事例「反社会的勢力排除条項を追加する変更契約書」が扱っているのは、工事下請基本契約書の解除権の条項に反社会的勢力に関する発生事由を追記した事例です。
ご質問の文書は、変更契約に定めた解除事由が発生しても、「原契約を解除することができる」と定められているものであり、必ずしも契約が解除されるものではありません。
したがって、第2号文書の重要事項である「契約に付される解除条件」には該当しませんので、ご質問の文書は、課税文書に該当しません。
これは、解除できると定めるだけの条項だったというその事案についての判断です。反社会的勢力排除条項を追加する変更契約書がいつでも課税されない、という整理ではありません。条項の書き方が変われば、あてはめも変わります。
質疑応答事例の読み方
引いてきた事例には、いずれも次の注記が付いています。
この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。
自社の変更契約書が事例と同じ形かどうかは、原契約の号、変更する事項、文書の書き方で決まります。記載金額と印紙税額は、印紙税額の自動計算ツールと、所轄の税務署または税理士に確認してください。
変更契約書の書式は契約変更覚書テンプレートに置いています。課税文書に当たるのに印紙を貼らずに出してしまった場合の扱いは収入印紙を貼り忘れたらにまとめています。
ここまでの判断が必要になるのは、変更を書面で残す場合です。原契約と変更をどちらも電子で取り交わす場合は、記載金額の見方そのものが変わります。ムスビサインのように電子で締結するサービスを使う場合の扱いは、このあとで整理します。
6. 電子で結んだ契約を、書面の変更契約書で変更したとき
原契約を電子契約で結んでいて、変更だけ書面で取り交わす形があります。この形については、国税庁の質疑応答事例が2つ用意されています。分かれ目になるのは記載金額(印紙税額を決める基準になる、その文書に記載された金額)で、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかかどうかで見る金額が変わります。
質疑応答事例「電磁的記録(電子契約)に係る契約金額等を記載した変更契約書の記載金額」が前提にしている事実関係は、次のとおりです。
電磁的記録(電子契約)により請負契約を締結した工事について、請負金額を増額する場合に、取引先からの要望により、書面で変更契約書を取り交わす場合があります。
この事例の変更契約書には、当初契約の契約日や表題を引用したうえで、変更前の契約金額と増加金額が記載されています。この2つが書かれているかどうかが、あとで結論を左右します。
まず、引用の扱いです。質疑応答事例「変更契約書に電磁的記録(電子契約)を引用する旨の記載がある場合」は、こう整理しています。
一の文書で、その内容に原契約書、約款、見積書その他当該文書以外の文書を引用することが記載されている場合、引用されている他の文書の内容は、その文書に記載されているものとして内容を判断することとされていますが、印紙税法上、電磁的記録は文書に含まれませんので、電磁的記録(電子契約)の内容が変更契約書に記載されているものとして判断することはできず、変更契約書に記載してある内容のみに基づき判断を行うことになります。
書面同士なら、引用された文書の内容も判断に入ります。引用先が電磁的記録だと、印紙税法上は文書に含まれないため、この経路が使えません。判断は、書面の変更契約書に書いてある内容だけで行われます。
記載金額が「増加金額」ではなく「合計額」になる
増額する場合の原則が、次の2つです。
契約金額を増額する場合、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更契約書に増加金額が記載されている場合には、増加金額が課税文書の記載金額とされています。
また、変更後の金額(当初契約金額と変更金額とが記載されていること等により変更後の金額が算出できるときを含みます。)が記載されており、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかでない場合は、変更後の金額が課税文書の記載金額とされています。
増加金額だけを記載金額として見る形に入るのは、2つの条件がそろったときです。変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更契約書に増加金額が記載されていることです。明らかでない場合は、変更後の金額が記載金額になります。
本事例では、変更契約書において当初契約(電子契約)の契約日や表題を引用していますが、印紙税法上、電磁的記録は文書に含まれないことから、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかである場合には該当せず、変更前の契約金額及び増加金額を記載していることから、変更後の金額(当初契約金額と増加金額の合計金額)が記載金額となります。
当初契約金額と増加金額の合計金額が記載金額になる、という整理です。同じ増額でも、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかかどうかで、記載金額として見る金額が変わります。原契約を電磁的記録で結んでいる場合は、この条件に該当しないと整理されています。原契約の締結方法を電子に切り替えた事業者が、変更だけ書面で取り交わす運用を残していると、ここで想定と違う結果になります。
書き添えておくと、これは請負契約を電子で締結し、書面の変更契約書で増額した事例に対する回答です。電子契約の変更が必ず不利になる、という話ではありません。契約金額を増額しない変更や、変更契約書も電子で取り交わす場合は、前提となる事実関係が違います。
書面の変更契約書を前提にしないやり方
変更契約書も含めてやりとりを電子で完結させれば、書面の変更契約書に記載金額をどう書くかという論点そのものが出てきません。ムスビサインは、変更契約書のPDFをアップロードし、メールのリンクから相手に署名してもらう形で締結できるサービスです。相手方のアカウント登録は不要で、原契約の締結方法と変更の締結方法をそろえられます。
ただし、電子でやりとりすれば印紙税がかからない、と一律に言えるわけではありません。電磁的記録と印紙税の関係は電子契約に印紙税はかからない?にまとめています。
この切り替えが向かない場合
- 取引先が書面の変更契約書を求めている。書面で取り交わす前提が動かないなら、記載金額の見方を先に確認するほうが実益がある
- 原契約が書面で結ばれていて、そこに契約金額も記載されている。変更前の契約金額等を記載した文書がある形なので、電子に切り替える理由は印紙税の側からは出てこない
- 変更する事項が重要な事項に当たるかどうかがまだ決まっていない。課税文書に当たるかどうかで見る金額が変わるので、判断の順番が逆になる
7. 契約書の訂正に関するよくある質問
Q1. 契約書の誤記は、二重線を引いて訂正印を押せばよいですか?
A. 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式は要りません(民法522条2項)。まず確かめるのは、直そうとしている文書に特別の定めがあるかどうかです。登記に関する書面については、訂正の旨と字数を欄外に記載するか、記号を付して範囲を明らかにし、その部分に押印すると定められています。訂正した文字は、なお読むことができるようにしておくとも定められています(不動産登記規則45条2項)。契約書でも同じ形にしておけば、あとで成立の真正を争われたときに、どこを誰が直したかを文書の上で示せます。
Q2. 相手に断らずに、こちらで直してもよいですか?
A. 内容の変更は、相手が承諾したときに成立します(民法522条1項)。承諾を得ずに手を入れても、契約の内容は変わりません。刑法159条2項は、他人が押印または署名した権利・義務・事実証明に関する文書を変造した者も、私文書偽造と同様に処罰すると定めています。個別の事案がこれに当たるかどうかは事実関係によりますが、相手の承諾を取ってから直す順番は変わりません。
Q3. 取引先から捨印を求められました。押しても大丈夫ですか?
A. 捨印は、どこをどう直すかが決まる前に、訂正への承諾を示しておく押印です。押した時点では、何に同意したことになるのかが文書の上で決まりません。同意する範囲を捨印のそばに書き添えておく方法があるので、何のために必要なのかを相手に確かめてから決めてください。押すかどうかを決めるのは押す側です。訂正が必要になった時点で改めて承諾する形でも変更はできるので(民法522条1項)、押さない形も選べます。その場合は、訂正が出るたびに承諾を取り直す手間が増えます。
Q4. 覚書という表題にすれば、印紙は不要になりますか?
A. なりません。質疑応答事例「請負契約書の変更契約書」は、工事請負契約書に定められている重要な事項である支払方法を変更する覚書について、第2号文書に該当するとしています。表題ではなく、変更する事項が重要な事項に当たるかどうかで決まります。標題と課税文書の関係は注文請書に収入印紙は必要かでも整理しています。
Q5. 担当者や住所の変更でも、変更契約書に印紙が必要ですか?
A. 重要な事項に当たるかどうかで決まります。質疑応答事例「変更契約書」は、重要な事項の範囲は基通別表第2に定められているとしています。ただし、そこに掲げられているものは例示事項であり、密接に関連する事項や同等以上に重要な事項の変更も課税対象になると続けています。別表第2に載っていないから課税されない、という読み方はできません。自社の変更が当たるかどうかは、変更する事項と原契約の号を示して所轄の税務署または税理士に確認してください。
Q6. 電子契約で結んだ契約を、書面の覚書で増額した場合はどうなりますか?
A. 質疑応答事例「電磁的記録(電子契約)に係る契約金額等を記載した変更契約書の記載金額」では、変更後の金額(当初契約金額と増加金額の合計金額)が記載金額になるとされています。印紙税法上、電磁的記録は文書に含まれないため、変更前の契約金額等を記載した文書が作成されていることが明らかである場合に該当しない、という整理です。この条件に該当し、かつ変更契約書に増加金額が記載されている場合は増加金額が記載金額とされるので、同じ増額でも結果が変わります。
Q7. 遺言書を書き間違えた場合も、同じように直せますか?
A. 自筆証書遺言には方式の定めがあります。民法968条3項は、加除その他の変更について、遺言者が場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないと定めています。効力を生じないとされているのはその変更についてであり、遺言書の全体が無効になると書かれているわけではありません。方式をそろえられるかどうかで、書き直す判断もあります。
8. まとめ|直し方より先に、同意と文書の種類を見る
直し方を決める順番
- 直そうとしている文書に、訂正の方式を定めた規定があるかを確かめる。自筆証書遺言(民法968条3項)はその例で、登記に関する書面(不動産登記規則45条2項)も定めがある
- 相手に変更を申し込み、承諾を得る。承諾がなければ内容は変わらない(民法522条1項)
- その場で直す場合は、どこを誰が直したかが文書に残る形にする。元の文字を読める状態で残し、双方の手元にある契約書の記載をそろえる
- 直すのが契約上の重要な事項に当たるなら、変更契約書を交わすか、契約書を作り直す。課税文書に当たるかどうかは表題ではなく中身で決まる
- 原契約を電子契約で結んでいて、書面の変更契約書で増額する場合は、記載金額として見る金額が変わる
要点はこうです。
- 契約の内容は当事者が決められる(民法521条2項)が、変更が成立するのは相手が承諾したとき(民法522条1項)
- 契約は、法令に特別の定めがある場合を除き方式を要しない(民法522条2項)。定めがある例が自筆証書遺言と登記に関する書面
- 登記に関する書面の訂正方式は、字数の欄外記載または記号による範囲の明示、その部分への押印、訂正した文字を読める状態で残すこと(不動産登記規則45条2項)
- 訂正の跡を残す意味は、成立の真正を証明する場面(民事訴訟法228条1項)で、どこを誰が直したかを示せることにある
- 捨印は、何に同意したことになるのかが文書の上で決まらない押印。範囲を書き添える方法がある
- 重要な事項を変更する変更契約書は課税対象で、別表第2の事項は例示(質疑応答事例「変更契約書」)
- 原契約が電子契約なら、書面の変更契約書の記載金額は変更後の合計金額とされた事例がある
判断が要るのは、相手の承諾を取る順番と、直した結果できあがる文書が課税文書に当たるかどうかの2つです。前者は毎回同じ手順で回せます。後者は変更する事項ごとに変わるので、判断の理由を1行残しておくと、次の変更で同じ検討を繰り返さずに済みます。
変更契約書のやりとりを、月3件無料で試す
ムスビサインは、原契約から変更契約書まで、同じ形で締結できる電子契約サービスです。書面を郵送して訂正印をもらう往復を、メールのリンクで完結させられます。
毎月3件まで無料のフリープラン
ムスビサインは毎月3件まで無料で契約書を送れます。付与にはクレジットカードまたはSMS認証の登録が必要です。数え方は送信枠で、ファイルを1つ送るごとに枠を1つ使い、締結が成立したかどうかは問いません。取引先のアカウント登録は不要で、相手はメールのリンクから署名するだけで済みます。
まずは1本、変更覚書から送ってみてください。
本記事は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務相談・法律相談に代わるものではありません。自社の変更契約書が課税文書に当たるかどうか、記載金額と印紙税額、訂正の跡をどこまで残すかの判断については、所轄の税務署または税理士・弁護士にご確認ください。
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