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無償譲渡契約書テンプレート・雛形|動産用の全25条と時価欄の書き方

無償譲渡契約書テンプレート(全25条・動産用)を無料ダウンロード。会員登録不要でWord形式のまま使えます。時価欄の埋め方、印紙が不課税になる範囲、渡す側の寄附金と受け取る側の受贈益、役員へ渡すときの給与と消費税、社内の決議まで解説します。

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無償譲渡契約書テンプレート

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2026-09-07
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この無償譲渡契約書、印刷・郵送・押印なしでそのまま送れます。

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「使わなくなった機械を取引先にあげることになったが、無償なので契約書に何を書けばいいのか分からない」 「退職する役員に社用車をそのまま渡す。稟議に添える書面を今日中に作らないといけない」 「子会社に備品を移すだけなのに、経理から『時価はいくらですか』と聞かれて止まっている」

この記事では、会社の車・機械設備・備品・什器・在庫といった動産を対価なしで相手に渡すときの無償譲渡契約書のWordテンプレート(全25条)を、会員登録不要で配布しています。対象は動産に限り、不動産・無体財産権・営業・船舶・航空機は含みません(第2条)。

この記事の結論

  • 動産専用の全25条。不動産・無体財産権・営業・船舶・航空機は対象外(第2条)。
  • 書面にする効果は民法550条。口約束なら、まだ履行していない部分を解除できる。
  • 一番重要な空欄は第4条の時価。寄附金も受贈益も消費税も、その時の価額で決まる。
  • 動産だけなら不課税。不動産・無体財産権・営業・船舶・航空機を足すと第1号の1文書、契約金額の記載がなければ200円。
  • 渡す側が法人なら、無償でも時価で譲渡したものとされる(法人税法22条の2第4項)。
  • 相手が役員なら給与の扱いになり、消費税のみなし譲渡も動く。個人に贈与税はかからない。
  • 取締役会設置会社で重要な財産の処分なら決議、役員へ渡すなら利益相反取引の承認が要る。
  • 車を渡すなら、移転登録は受け取った側が15日以内に申請する。

目次

  1. 無償譲渡契約書テンプレートの無料ダウンロード
  2. 無償譲渡と贈与|表題を変えても印紙税の判定は変わらない
  3. 口約束のままなら解除できる|書面にする唯一の効果
  4. 配布テンプレート全25条の一覧と、条ごとに決めること
  5. 空欄の埋め方|手を動かして決める10か所
  6. 現状有姿と契約不適合責任|「推定」を契約で確定させる
  7. 費用を相手負担にすると何が変わるか|負担付贈与の分かれ道
  8. 収入印紙|動産なら不課税、不動産・無体財産権・営業なら第1号の1文書
  9. 渡す側の法人税|無償でも時価で譲渡したものとされる
  10. 受け取る側|法人は受贈益、法人からもらった個人は贈与税ではなく所得税
  11. 相手が役員・従業員のとき|役員は給与と消費税のみなし譲渡、従業員は消費税の扱いが違う
  12. 社内で通すための手続|取締役会の決議と利益相反取引の承認
  13. 契約書だけでは終わらないもの|移転登録・登記・著作権の特掲
  14. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順
  15. よくある質問(FAQ)
  16. まとめ:無償かどうかより、時価・相手・負担の3点を書き残す

1. 無償譲渡契約書テンプレートの無料ダウンロード

配布しているのは、Word形式の無償譲渡契約書の雛形です(全25条)。車両・機械設備・備品・什器・棚卸資産といった動産を、対価を取らずに相手へ渡すときの1通です。渡す相手は、子会社でも、取引先でも、退職する役員でも、個人でも使えます。

会員登録不要・メールアドレス入力不要・そのまま編集できるWord形式

譲渡する物を1点ずつ特定する別紙「本件物件目録」つき(第2条)

経理と税務で必ず聞かれる時価の欄つき(第4条)

所有権の移転時期・引渡し・受領確認を分けて定めてある(第5条から第7条)

運搬・撤去・据付けの費用を誰が持つかを選ぶ形(第8条)

現状有姿で渡し、告知した事項を書き残す欄つき(第10条・第11条)

登録自動車を含む場合の移転登録の条項つき(第14条)

取締役会の決議・利益相反取引の承認の記録欄つき(第15条・第16条)

👉 無償譲渡契約書テンプレートを無料ダウンロード(会員登録不要)

1円でも対価を取るなら、この書面ではなく売買です。民法555条は、売買を、財産権の移転と代金の支払を約することによって効力を生ずる契約と定めています。金額を付けて渡すなら売買契約書テンプレートを使ってください。

親から子へ現金や不動産を渡すような、個人どうしで相続を見据えて財産を移す場面は、税金の仕組みがまるごと変わります。そちらは贈与契約書テンプレートの担当です。

2. 無償譲渡と贈与|表題を変えても印紙税の判定は変わらない

電子契約の法的有効性のイメージ

表題を「無償譲渡契約書」にしても「贈与契約書」にしても、印紙税の判定は変わりません。どちらの雛形を使えばよいのかで手が止まっているなら、ここで決着します。

国税庁は、課税文書に該当するかどうかの判断は文書に記載されている内容に基づいて行い、名称や形式的な記載文言によるのではなく、その文書に記載されている文言などの実質的な意味を汲み取って行うとしています。表紙の題を書き換えても、中身が変わらない限り結論は同じです。「贈与」という語を避けて「無償譲渡」と書いた契約書に、印紙が要らなくなるという効果はありません。

法律の側から見ると、贈与は譲渡の原因の1つという関係になります。

国税庁は、譲渡契約の原因として、売買、交換、贈与、代物弁済、法人等に対する現物出資、寄附行為等を挙げています。民法549条は、贈与を、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって効力を生ずる契約と定めています。

無償で物を渡し、相手がそれを受け取ることに同意している、という骨格は同じです。

配布テンプレートは、第1条に「本契約が無償の契約であり、乙が本件物件の譲渡を受けるにつき甲に対して何らの対価も支払わない」ことを確認する条項を置いています。題ではなく条文で、無償であることが読み取れる形にしてあります。

税金の扱いは、題ではなく渡す側と受け取る側が誰かで決まります。会社から会社へなのか、会社から役員へなのか、個人から会社へなのか。ここが分かれ目で、第9章から第11章で1つずつ扱います。個人から個人へ財産を渡す場面だけは、この記事の範囲から外れます。第1章で案内した贈与契約書テンプレートを見てください。

もう1つ、手前で確かめておくことがあります。所有権を相手に移すのか、使わせるだけなのかです。

無償で渡して自分の物ではなくするなら、この記事の無償譲渡です。無償で使わせて後で返してもらうなら、それは使用貸借で、返還の時期や使い方の制限を書く別の書式になります。

社用車を役員に貸すだけなら自動車使用貸借契約書テンプレートを使ってください。

3. 口約束のままなら解除できる|書面にする唯一の効果

「あげると言った、いや言っていない」で揉めるのは、渡す物が高価なときだけではありません。引き取りに行く日を決めた後で「やっぱりやめる」と言われると、そこまでの手配が無駄になります。

民法550条は、書面によらない贈与は各当事者が解除をすることができるとし、履行の終わった部分についてはこの限りでないと定めています。書面がないと、まだ履行していない部分については、渡す側も受け取る側も解除できてしまいます

「履行の終わった部分については、この限りでない」という後半も実務では効きます。すでに現物を引き渡した部分は、書面がなくても解除の対象から外れます。ただし、どこまで引き渡したかを後から証明できなければ、この救いは使えません。配布テンプレートが第6条で引渡しを定め、第7条で引き渡した年月日・品名・型式・製造番号・数量を書面で相互に確認させているのは、この証明を残すためです。

配布テンプレートの第19条は、この点を最初の1項に置いています。書面によらない贈与であることを理由として本契約を解除しない、と両者が確認する条項です。同条の残りは、相手が契約に違反したとき、支払を停止したり差押えを受けたりしたときの解除を定めています。無償で渡した後に相手が破綻したら、というのは別の話なので、条文を分けてあります。

4. 配布テンプレート全25条の一覧と、条ごとに決めること

Wordを開く前に、全体像を見てください。25条のうち、あなたが手を動かして決めるのは10条です。残りは、そのまま使える定型か、状況によって使う条項です。

定めていること あなたが決めること
第1条 無償で譲渡し、対価を支払わないことの確認 なし
第2条 譲渡する動産の特定(別紙の目録) 別紙に品名・型式・製造番号・数量・所在場所
第3条 対価が存在しないことの確認 なし
第4条 引渡しの時の価額(時価)の確認 金額を書くか、別途書面で確認するか
第5条 所有権が移る時期 締結日・引渡完了日・指定日の3択
第6条 引渡しの期日・場所・方法と、鍵や取扱説明書 期日・場所・方法と「その他引き渡す物」
第7条 引渡しが終わったことの相互確認 なし(締結後に運用)
第8条 運搬・撤去・据付けの費用を誰が持つか 甲・乙・各自の3択
第9条 受け取った側が自由に使える/負担を課さない なし
第10条 現状有姿と、契約不適合責任を負わないこと なし
第11条 渡す側が知っている故障・不具合の告知 告知した事項(無ければ「なし」)
第12条 所有者であること・担保が付いていないことの表明 なし
第13条 第三者から権利を主張されたときの対応 なし
第14条 登録自動車を含む場合の移転登録 含むか含まないかの2択
第15条 社内手続(重要な財産の処分の確認と決議) 決議の有無と決議日
第16条 利益相反取引に当たる場合の承認 承認の有無と承認日
第17条 会計処理と税務申告は各自の責任で行うこと なし
第18条 引渡し前に滅失・毀損したときの扱い なし
第19条 解除(書面によらない贈与を理由としない) なし
第20条 損害賠償の範囲 通常損害のみか、上限額を付けるか
第21条 反社会的勢力の排除 なし
第22条 権利義務の譲渡の禁止 なし
第23条 契約の変更は書面で行うこと なし
第24条 協議 なし
第25条 合意管轄 なし(甲の所在地が既定)

💡 動産を渡すために必要な条文だけを25条にまとめてあります

会員登録不要・Word形式でそのまま編集できます。上の表で太字にした10か所を埋めれば締結できる形にしてあるので、表を見ながら順に決めていってください。

👉 無償譲渡契約書テンプレートを無料ダウンロード

5. 空欄の埋め方|手を動かして決める10か所

電子契約の手順(アップロード→署名→送信)のイメージ

埋める順序が決まっています。前の条で決めたことが、そのまま次の条の判断材料になるからです。

(1)別紙「本件物件目録」に、渡す物を1点ずつ書く(第2条)

品名だけでは足りません。型式と製造番号まで書いてください。第10条で現状有姿とし、渡した側が契約不適合の責任を負わない形にしているため、どの個体を渡したのかが後から特定できないと、引き渡した物と手元に残した物の区別がつかなくなります。

記入例は、品名「業務用冷蔵庫」、型式「〇〇-〇〇〇」、製造番号「〇〇〇〇〇〇」、数量「1」、所在場所「〇〇工場 2階厨房」という粒度です。製造番号がない備品なら、社内の固定資産管理番号を書けば特定できます。

民法178条は、動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ第三者に対抗することができないと定めています。渡したことを主張できる根拠は引渡しなので、目録と第7条の確認書面はセットで残してください。

(2)配布テンプレートの第4条の価額(時価)を決める

この契約書で一番重要な欄です。渡した側の寄附金の額も、受け取った側の受贈益の額も、役員に渡した場合の消費税の課税標準も、すべて譲渡または贈与の時における価額を基準に決まります(第9章から第11章)。金額を書かずに送ると、両社の決算で数字が食い違います。

では、その時価はどう調べるのか。まず、帳簿価額ではありません

国税庁は、法人税法22条の2第4項の「引渡しの時における価額」を、原則として資産の販売等につき第三者間で取引されたとした場合に通常付される価額をいうとしています。また、法人税法上の時価について、売却を前提とした実現可能価額とされているとも説明しています。

噛み砕けば、その物をいま第三者に売ったらいくらになるかが出発点です。簿価が1円まで落ちている機械でも、中古市場で値が付くなら、その値のほうを見ます。

同型の中古機が販売されている価格、販売業者や買取業者の査定、自社が過去に同種の資産を売ったときの金額。第三者との取引でいくらになるかを示す材料を集めてください。

ただし、資産の種類ごとの算定方法まで示した公的な資料は確認できていません。金額を確定させるのは顧問税理士の仕事です

集めた材料と、渡す相手が誰かを添えて渡してください。相手によって使う条文が変わるので(第9章から第11章)、そこまで伝えると話が早く済みます。

書き方は2択です。金額が固まっているなら「本件物件の価額を金〇〇〇,〇〇〇円とする」を選び、別紙の価額欄に品目ごとの内訳を書きます。まだ固まっていないなら「本契約とは別に甲乙間で作成する書面により確認する」を選び、後から書面で補います。空欄のまま締結だけしてしまうのが一番良くない状態です

「別途書面により確認する」を選んだときは、その書面を作るところまでを段取りにしてください。決算期をまたぐと両社の申告が動かせなくなるので、期をまたぐ前に、渡す側が案を作って相手に確認してもらう形を勧めます。

書面に載せる項目は、対象物件(別紙の目録と同じ品名・型式・製造番号)、価額、価額の算定の根拠、確認した日、甲乙の商号または氏名で足ります。

配布テンプレートの第4条は、価額の算定の根拠となる資料を相互に提供すると定めているので、見積書や査定書の写しも一緒に綴じておくと、決算のときに経理が探さずに済みます。

(3)第5条の所有権の移転時期と、第6条の引渡しを決める

民法176条は、物権の設定及び移転は当事者の意思表示のみによってその効力を生ずると定めています。何も書かなければ、締結した時点で所有権が移ったと読まれる余地があります。配布テンプレートは、締結の日・引渡しが完了した日・指定した日の3択にしました。

「本契約の締結の日」を選ぶと、現物がまだ手元にあるのに所有権だけが相手に移ります。その状態で物が壊れたときにどうなるかは第18条に書いてあるので、第5条を決めるときは第18条と併せて読んでください。引渡しまでに間が空くほど、この2つの条文の関係が効いてきます。

第6条の期日・場所・方法は、現物を動かす日程が決まってから記入すれば足ります。記入例は、場所「〇〇工場 資材置場」、方法「甲の事業所における現物の引渡し」です。

あわせて渡す物も第6条に書いてあります。鍵その他の使用に必要な物、取扱説明書・保証書・整備記録、付属部品・消耗品の3つは固定の条文なので手を入れません。

角括弧になっているのは最後の「その他引き渡す物」だけです。渡す物があればそこに書き、なければ「なし」と書いてください。

(4)第8条の費用の負担を決める

運搬費・撤去費・据付費を、渡す側が持つのか、受け取る側が持つのか、各自が持つのか。3択です。ここは金額の話に見えて、実は税務の分かれ目でもあります。理由は第7章に書きました。選ばずに空欄で出さないでください

どれを選ぶかで迷ったら、甲(渡す側)の負担に印を付けてください。テンプレートを設計した側からの推奨です。渡す側が費用まで持てば、受け取る側に何の負担も課さない形がそのまま残ります。相手に持ってもらう取り決めにしたいなら、第7章を読んでから、締結の前に顧問税理士へ相談する順序にしてください。

(5)第11条の告知欄を埋める

知っている故障・不具合・損傷・事故歴・修理歴・欠品を書き出します。「起動時に異音がある」「左後方に外板の損傷あり」といった書き方で構いません。該当がなければ「なし」と書きます。ここを埋める意味は、次の第6章で説明します。

(6)残るチェックボックスに印を付ける(第14条・第15条・第16条・第20条)

登録自動車を含むかどうか(第14条)、社内の決議(第15条)、利益相反取引の承認(第16条)は、それぞれ第12章と第13章で判断の材料を出します。

ここでは第20条だけ先に片付けてください。損害賠償の範囲を「通常生ずべき損害に限る」か、「通常生ずべき損害に限り、かつ賠償の額に上限を付ける」かの2択です。上限額を決める根拠が社内にないなら、上限を付けないほう、つまり「通常生ずべき損害に限る」に印を付けてそのまま使ってください。

同条は、故意または重大な過失による場合にはこの制限を適用しないこと、無償の契約であることを考慮した定めであることも書き添えています。

Wordを閉じる前に、印の付いていない□が1つも残っていないことを確かめてください。

6. 現状有姿と契約不適合責任|「推定」を契約で確定させる

無償で渡した機械が、相手先で1週間後に動かなくなった。修理代を請求されたら払うのでしょうか。

払いません。配布テンプレートの第10条は、乙が引渡しの時の現状有姿のまま譲り受けること、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないものであっても、甲は履行の追完も損害の賠償もしないことを定めています。ただし例外が1つあります。同条は、渡した側が不適合を知りながら告げなかったときには、この免責を適用しないとしています。異音がすることを知っていて黙って渡していたなら、修理代の話が戻ってきます。

なぜ契約書にここまで書くのか。

民法551条1項は、贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定すると定めています。渡したときの状態のまま渡す約束だった、と読むのが出発点です。

ここで注意したいのは、条文が「推定する」と書いていることです。推定は、反対の合意や事情があれば覆ります。「無償なら責任は一切ない」と言い切れる条文ではありません。

有償で売った場合と比べると差がはっきりします。民法562条1項は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときは、買主は履行の追完を請求することができると定めています。お金を払って買った側は、直せ、代わりをよこせ、と言えます。無償で受け取った側は、原則としてそこまで言えない、という対比です。

配布テンプレートの第10条は、この「推定」を合意として書き直したものです。渡す側にとっては、第11条に知っている不具合を書き出しておけば「知っていて黙っていた」と言われる余地が消える、という守りになります。第11条の告知欄を面倒がらずに埋めてください。

第12条は、渡す側が所有者であること、所有権留保・譲渡担保・質権が付いていないこと、リースやレンタルの目的物でないこと、差押えを受けていないことを表明する条項です。リース物件を自社の資産だと思い込んで渡すと、他人の物を渡したことになります。工場や事務所に長く置いたままの設備は、社内の資産台帳とリース契約の一覧を突き合わせてから動かしてください。

7. 費用を相手負担にすると何が変わるか|負担付贈与の分かれ道

電子契約で注意すべき点のイメージ

「機械はあげるので、運び出しの費用はそちらで持ってください」。無理のない取り決めに見えますが、これを契約書のどこに、どう書くかで、契約の性質が変わる可能性があります。

民法551条2項は、負担付贈与について、贈与者はその負担の限度において売主と同じく担保の責任を負うと定めています。民法553条は、負担付贈与について、その性質に反しない限り双務契約に関する規定を準用するとしています。負担を付けた瞬間に、無償の契約に有償契約のルールが流れ込みます。第6章で見た「渡した側は責任を負わない」という組み立ても、負担の限度では崩れます。

税金の側にも同じ分岐があります。国税庁は、単なる贈与や寄附金は、原則として対価を得て行われる取引に当たらず、課税の対象にならないとしています。一方で、負担付き贈与については、その負担部分を対価として行われる取引になるとしており、負担付贈与も資産の譲渡に含まれるとしています。無償のつもりが、消費税の課税の対象を含む取引として扱われる余地がある、ということです。

ここで重要なのは、運搬費や撤去費を相手に負担させることが、ここでいう「負担」に当たるのかどうかの線引きが、公的な資料からは確認できないという点です。この記事では「相手負担にすると消費税がかかります」とは書きません。分かるのは、負担付贈与に当たるかどうかで扱いが変わるという構造だけです。

配布テンプレートは、この不確かさを前提に設計しました。第8条で費用の負担を3択のチェックボックスにし、その選択が譲渡の対価ではなく、受け取る側が譲渡を受けるための負担でもないことを同条であわせて明記しています。さらに第9条で、渡した側は用途の指定・使用場所や期間の制限・第三者への譲渡の禁止・返還・撤去・原状回復といった負担を課さない、と書いてあります。

条文をこう書いても、実際の運用がこれと違えば意味を失います。渡した後に「その機械はうちの元請け向けの仕事にだけ使ってほしい」と条件を付けたり、数年後に返還を求めたりすれば、書面の記載と実態がずれます。渡すと決めたら、そこで手を離してください。どうしても条件を付けたいなら、それはもう無償譲渡ではありません。契約の形から作り直す必要があるので、顧問税理士と弁護士に相談してください。

8. 収入印紙|動産なら不課税、不動産・無体財産権・営業なら第1号の1文書

配布テンプレートの対象である動産だけを渡すなら、印紙は要りません

国税庁の印紙税額一覧表は、第1号文書の一つとして「不動産、鉱業権、試掘権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書」を挙げています。

このリストのうち船舶と航空機は、民法86条2項が不動産以外の物はすべて動産とすると定めていることから動産に当たります。配布テンプレートが第2条でこの2つを対象から外しているのは、そのためです。

残る車両・機械設備・備品・什器・棚卸資産は、このリストに入っていません。加えて国税庁は、物品の売買契約は、継続する売買契約で第7号文書になるものを除き、不課税文書になるとしています。

国税庁が課税文書の要件の一つとして挙げているのは、印紙税法別表第1に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項が記載されていることです。どの号にも当たらないので、課税文書になりません。

ここは用語を正確に使ってください。課税物件表に掲げられたうえで印紙税を課さないものを「非課税」と呼びます。この契約書は課税物件表のどの号にも当たらないので、正しくは「不課税」です。印紙税額の全体像は印紙税額の一覧表にまとめてあります。

対象物を書き換えると、結論が変わります。配布テンプレートに印紙欄を設けていないのは、このためです。第2条の本件物件に不動産や無体財産権を書き足すと、その契約書は第1号の1文書になります。外してある船舶と航空機を書き足した場合も同じです。ここでいう船舶は、国税庁の説明では船舶原簿に登録を要する総トン数20トン以上の船舶などを指し、それ以外の船舶は物品として取り扱われます。国税庁は、不動産をその同一性を保持させつつ他人に移転させることを内容とするものは、対価を受けるかどうかを問わず第1号の1文書に該当するとしています。無償で渡す場合も課税文書です

このとき、印紙はいくらになるのか。印紙税法基本通達23条は、贈与契約においては譲渡の対価たる金額はないから、契約金額はないものとして取り扱うとしています。国税庁の印紙税額一覧表は、第1号文書のうち契約金額の記載のないものの税額を200円としています。

「契約書に時価を書いたら、その金額で印紙が上がるのでは」と心配になるところですが、上がりません。

国税庁は、贈与契約書に土地の評価額が記載されていても、その評価額は不動産譲渡の対価としての金額ではないので、記載金額には該当しないとしています。配布テンプレートの第4条に時価を書いても、印紙が増える心配はいりません

配布テンプレートが第3条と第4条で「価額は譲渡の対価ではない」と繰り返し書いているのは、この整理と揃えるためです。

無体財産権の範囲も押さえておいてください。

国税庁は、印紙税法上の無体財産権を、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、回路配置利用権、育成者権、商号および著作権とすると説明しています。この8つ以外、たとえばノウハウについては、譲渡する契約書を作成しても課税文書に該当しないとしています。

また、権利そのものではなく、無体財産権を利用できる権利(実施権又は使用権)を与える契約書は、第1号の1文書に当たらないとしています。

ソフトウェアはこの分岐の中に入ります。国税庁は、著作権の範囲が広まり、コンピュータ・プログラム等についても著作権に含まれるとしています。自社で作ったシステムやプログラムの著作権を無償で渡すなら、その契約書は第1号の1文書です。動産用の配布テンプレートは使えません(第13章)。

国税庁は、印紙税の課税対象は課税物件表の物件名欄に掲げられている文書であり、電磁的記録は文書に含まれないとしています。

ただし、動産だけを渡す本テンプレートはもともと不課税なので、電子にしたから印紙代が浮く、という効果はありません。印紙の節約が効くのは、不動産・無体財産権・営業を渡す場合だけです。

この論点は電子契約と印紙税で詳しく扱っています。

条文に手を入れて対象物を書き換えるとき、または金銭の受領に関する定めを置くときは、印紙の要否と税額を税理士または所轄の税務署に確認してください。

💡 印紙欄を刷り込まず、不課税の範囲に絞ったテンプレート

会員登録不要でダウンロードできます。第2条で対象を動産に限定してあるので、そのまま使う限り印紙は不要です。対象物を書き足すときは、この章の分岐を先に確認してください。

👉 無償譲渡契約書テンプレートを無料ダウンロード

9. 渡す側の法人税|無償でも時価で譲渡したものとされる

「タダであげたのだから、うちの利益には関係ない」。この読み方は通りません。1円も受け取っていなくても、渡した側に収益が立ちます。

法人税法22条2項は、益金の額に算入すべき金額を、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引に係る収益の額とすると定めています。1つの条文に「無償による資産の譲渡」と「無償による資産の譲受け」が並んでいます。渡した側にも、受け取った側にも、収益の認識が発生します

いくらで認識するのか。法人税法22条の2第4項は、益金の額に算入する収益の額を、譲渡をした資産の引渡しの時における価額とすると定めています。お金を受け取っていなくても、時価で譲渡したものとして扱われる、ということです。だから配布テンプレートの第4条の時価欄を空にできません。

では、渡した側の費用の側はどうなるか。法人税法37条7項は、寄附金の額を、いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をした場合の、その資産の贈与の時における価額によるものと定めています。国税庁も、寄附金の額について、金銭以外の資産の贈与の場合はその贈与の時における時価で計算するとしています。ここでも基準は時価です。

そして、寄附金は全額が費用として認められるわけではありません。

法人税法37条1項は、支出した寄附金の額の合計額のうち、その事業年度終了の時の資本金の額及び資本準備金の額の合計額若しくは出資金の額または当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、損金の額に算入しないと定めています。タダで渡したのに課税所得が増える、という結果が起こり得ます

限度額の計算式はここには書きません。自社の資本金と所得で変わる計算なので、顧問税理士に投げてください。

「では1円で売ればよいのでは」という発想は通りません。法人税法37条8項は、資産の譲渡の対価の額がその譲渡の時における価額に比して低いときは、その差額のうち実質的に贈与をしたと認められる金額を寄附金の額に含めると定めています。低い値段を付けても、差額が寄附金に戻ってきます。

相手がグループ内の会社なら、別の定めが入ります。法人税法37条2項は、法人による完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額を、損金の額に算入しないと定めています。国税庁も、法人による完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額は、その全額が損金の額に算入されないとしています。法人税基本通達9-4-2の5は、内国法人が他の内国法人に対して寄附金を支出した場合において、一の者(法人に限る。)による完全支配関係があるときの取扱いを定めています。この判定は自社で結論を出さないでください。資本関係の形によって当てはまるかどうかが変わります。該当しそうなら税理士に確認してください。

渡す側が個人の場合は、法人税ではなく所得税の話になります。所得税法59条1項は、同項各号に掲げる事由により譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その時における価額に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなすと定めています。同項1号が挙げている事由の1つが、法人に対する贈与です。社長個人が持っている車を自分の会社へ無償で移すような場面がこれに当たります。また、所得税法40条1項1号は、個人事業者がたな卸資産を贈与した場合に、その贈与の時におけるたな卸資産の価額を総収入金額に算入するとしています。在庫を渡すときは、ここも見てください。

配布テンプレートの第17条は、会計処理と税務申告はそれぞれ自己の責任で行うこと、契約書が税務上の取扱いを確定させるものではないことを明記しています。契約書は、決算のときに経理が数字の根拠として使う材料です。

10. 受け取る側|法人は受贈益、法人からもらった個人は贈与税ではなく所得税

もらった側にも申告の論点があります。相手が法人か個人かで、見る条文が変わります。

相手が法人なら、受贈益です。根拠は前章と同じ法人税法22条2項で、この条文は「無償による資産の譲受け」も益金に算入すべき収益として並べています。金額はその時の時価です(法人による完全支配関係がある法人から受けた場合の受贈益の額について、法人税法25条の2第2項が「贈与を受けた資産のその贈与の時における価額」による旨を明記しています)。

グループ内の場合は、渡す側の扱いと対になります。法人税法25条の2第1項は、法人による完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額を、益金の額に算入しないと定めています。渡す側は損金にならず、受け取る側は益金にならない、という対応関係です。ここも当てはまるかどうかの判定は税理士に確認してください。

相手が個人になると、見る税金そのものが変わります。会社の備品を個人に渡したら、贈与税の申告が要るのでしょうか。要りません。国税庁は、贈与税は個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金であり、法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかるとしています。相続税法21条の3第1項1号も、法人からの贈与により取得した財産の価額を贈与税の課税価格に算入しないと定めています。

つまり、会社から個人へ渡すときに贈与税の心配は要りません。代わりに所得税の問題になります。

所得税法36条1項は、収入金額とすべき金額について、金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その価額とすると定めています。所得税基本通達36-15(1)も、経済的利益に、物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合における、その資産のその時における価額に相当する利益が含まれるとしています。

物でもらっても、収入としてカウントされます

所得の区分をどうするか、いくらの税負担になるかは、受け取った個人の立場によって変わります。この記事では踏み込みません。渡す相手が個人なら、第4条の価額をきちんと確認したうえで、その金額を相手に伝えてください。受け取った側が確定申告で困らないようにするのが、渡す側にできることです。

11. 相手が役員・従業員のとき|役員は給与と消費税のみなし譲渡、従業員は消費税の扱いが違う

退職する役員に社用車をそのまま渡す。長く使った工具を担当していた従業員に譲る。この2つは、これまでの章とは扱いが変わります。

役員へ渡すと、寄附金の話ではなくなります。国税庁は、法人が寄附金として支出したものであっても、法人の役員等が個人として負担すべき性格を持つ支出は、その者に対する給与となり、寄附金から除かれるとしています。法人税基本通達9-2-9は、法人税法34条4項および36条に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」を、実質的に役員等に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすものと定めており、同通達の(1)は、経済的な利益の例として、役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額を挙げています。同通達の(2)は、役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合の、その資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額も経済的な利益に含めています。安く売る形にしても、差額が同じ扱いに戻ってきます

法人税法34条4項は、役員給与に、債務の免除による利益その他の経済的な利益を含むと定めています。そして法人税法34条1項は、内国法人がその役員に対して支給する給与のうち、同項各号に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、損金の額に算入しないと定めています。この当てはめは要件の判定が必要になるので、損金になるかどうかを自社で結論づけないでください。顧問税理士に確認する場面です。

給与の扱いになると、給与計算の側に作業が発生します。国税庁は、物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益を、給与が経済的利益をもって支給される例として挙げ、これらを一般に現物給与といい、原則として給与所得の収入金額とされるとしています。現金を渡していなくても給与です。そして所得税法183条1項は、給与等の支払をする者は、その支払の際に所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないと定めています。源泉徴収と納付が動き出します

ここで詰まるのが、モノからは天引きができないことです。車を渡しても、そこから所得税を差し引くことはできません。

所得税法222条は、源泉徴収をしていなかった所得税の額に相当する金額を、その者に対して以後支払うべき金額から控除し、またはその者に対し支払を請求することができると定めています。ほかの給与から差し引くか、本人に払ってもらうか、という手当てです。

どの月の給与に乗せるのかについては、現物給与に限った国税庁の記述を確認できていないので、断定しません。締結の前に、経理と給与の担当者に話を通しておいてください。

もう1つ、役員の場合は消費税が動きます。国税庁は、無償で行われる取引は消費税の課税の対象とはならないとしています。これが原則です。ところが消費税法4条5項は、同項各号に掲げる行為を、事業として対価を得て行われた資産の譲渡とみなすと定めており、同項2号が、法人が資産をその役員に対して贈与した場合における当該贈与を挙げています。国税庁も、法人が自社製品などをその役員に贈与した場合には、事業として対価を得て行われたものとみなされ、消費税の課税の対象となるとしています。

課税標準も時価です。

消費税法28条3項2号は、この贈与について、その贈与の時における贈与をした資産の価額に相当する金額を対価の額とみなすと定めています。消費税法28条1項ただし書は、法人が資産を役員に譲渡した場合において、その対価の額が譲渡の時における資産の価額に比し著しく低いときは、その価額に相当する金額を対価の額とみなすとしています。

配布テンプレートの第4条の時価欄は、ここでもそのまま計算の入口になります

従業員へ渡す場合は、役員と同じではありません。消費税法4条5項2号が挙げているのは「法人がその役員に対して」贈与した場合で、従業員は挙げられていません。所得税の側では、所得税基本通達36-15(1)が、物品その他の資産の譲渡を無償又は低い対価で受けた場合の利益を経済的利益に含めています。渡した物の価額が従業員の側で経済的利益になるという入口は同じで、給与として扱うことになるなら、源泉徴収の手当ても前の2段落と同じ形になります。一方で、消費税の扱いを役員と同列に書くことはできません。従業員へ渡すときの処理は、税理士に確認してください。

💡 役員へ渡す場面まで想定した条項が入っています

会員登録不要でダウンロードできます。第15条に取締役会・株主総会の決議の記録欄、第16条に利益相反取引の承認の記録欄があるので、稟議と契約書を1つの綴りにできます。

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12. 社内で通すための手続|取締役会の決議と利益相反取引の承認

税務の整理がついても、締結の前にもう1段あります。会社の中で誰が決めたのか、という話です。

1つめは、重要な財産の処分に当たるかどうかです。会社法362条4項は、取締役会設置会社について、取締役会は同項各号に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができないと定めています。同項1号が挙げているのが「重要な財産の処分及び譲受け」です。無償で渡すことも財産の処分なので、取締役会設置会社ならこの判定から逃れられません。取締役会を置いていない会社は、この条文ではなく自社の定款と社内規程で誰が決めるかを確かめてください。配布テンプレートの第15条も、この2つを書き分けています。

いくらから「重要」なのか、条文に金額の基準はありません。手がかりは判例にあります。会社法362条4項1号の前身である商法260条2項1号について、最高裁判所は、重要な財産の処分に当たるか否かは、当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきであると判示しています。価額だけを見て決まるものではない、ということです。この5つを並べても線が引けないなら、決議を取っておくほうが後から説明しやすくなります。配布テンプレートの第15条は、この確認をしたうえで締結すること、そして決議を経たならその日付を書き残すことを求めています。取締役会の決議を取るなら、議事録の書式は取締役会議事録テンプレートを使ってください。

2つめは、渡す相手が自社の取締役のときです。会社法356条1項は、同項各号に掲げる場合には、取締役は株主総会において当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないと定めています。同項2号が挙げているのは、取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするときです。会社の資産を取締役へ無償で渡す取引は、まさにこれに当たります。

取締役会設置会社なら、承認する機関が変わります。会社法365条1項は、取締役会設置会社における356条の適用について、356条1項中の「株主総会」を「取締役会」と読み替えると定めています。承認を取る場所を間違えると、手続としては取っていないのと同じになります。

承認だけでは終わりません。会社法365条2項は、取締役会設置会社において356条1項各号の取引をした取締役は、取引後遅滞なくその重要な事実を取締役会に報告しなければならないと定めています。契約書を交わして現物を渡したあとに、もう1度取締役会に戻る、という手順です。配布テンプレートの第16条は、承認の記録欄と、この事後報告の定めの両方を含んでいます。承認の書式は利益相反取引承認書テンプレートにあります。

受け取る側が法人の場合も、その会社の中で承認が要ることがあります。第15条は、受け取る側についても、決議その他の社内手続を要するときはそれを経たうえで締結する、と定めています。無償で受け取るだけだから何もいらない、とは限りません。相手の稟議が通っているかを、締結の前に確かめてください。

13. 契約書だけでは終わらないもの|移転登録・登記・著作権の特掲

契約書に署名しても、それだけでは終わらない手続があります。渡す物によって、次の手が変わります。

車を渡すなら、移転登録です。道路運送車両法13条1項は、登録自動車について所有者の変更があったときは、新所有者がその事由があった日から15日以内に移転登録の申請をしなければならないと定めています。申請するのは、渡した側ではなく受け取った側です。期限も決まっています。契約書を取り交わすだけでは名義は変わらないので、渡した側は「あとは名義を変えておいてください」で終わらせず、譲渡証明書・印鑑証明書・委任状といった書類の交付まで済ませてください。

配布テンプレートの第14条は、登録自動車を含むかどうかを最初に選ばせる形にしました。含む場合は、受け取った側が期限内に申請すること、渡した側が書類の交付その他の手続に協力すること、その費用は第8条で選んだ区分によることまで書いてあります。含まない場合は「含まない」に印を付けて閉じてください。

不動産を渡すなら、このテンプレートは使えません。民法177条は、不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ第三者に対抗することができないと定めています。動産の対抗要件が引渡しであるのに対し、不動産は登記です。加えて、第8章で見たとおり、印紙税の扱いも第1号の1文書に変わります。必要な条項が違うので、不動産用の書式を使ってください。

著作権を渡すなら、特掲が要ります。著作権法61条1項は、著作権はその全部又は一部を譲渡することができると定めています。問題は同条2項です。著作権を譲渡する契約において27条又は28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定するとしています。「著作権を譲渡する」とだけ書くと、翻案などの権利が渡らないと推定されます。自社で作ったプログラムや制作物を無償で渡すなら、この特掲を入れた条項が別に必要です。国税庁はコンピュータ・プログラム等についても著作権に含まれるとしているので、印紙の扱いも第1号の1文書になります。

備品を「まとめて」渡すときは、営業の譲渡になっていないか確かめてください。国税庁は、営業の譲渡の「営業」を、営業活動を構成している動産、不動産、債権、債務等を包括した一体的な権利、財産としてとらえられるものとし、一部門であっても財産的組織体として譲渡する限り営業の譲渡に含まれるとしています。ある店舗や部門の設備を丸ごと引き渡し、そこで働いていた人や取引先との関係も一緒に移るなら、動産の譲渡ではなく事業の譲渡です。その場合は事業譲渡契約書テンプレートを使ってください。

引渡しそのものの証拠を別紙で残したいときは、受領書テンプレートを併用できます。第7条の確認は書面によることとしているので、そのまま使えます。

14. ダウンロードしたテンプレートの使い方手順

ダウンロードしてから締結までは、4ステップです。

ステップ1:甲・乙と別紙の目録を埋める

冒頭の角括弧に、渡す側(甲)と受け取る側(乙)の商号または氏名を登記どおりに書きます。次に別紙「本件物件目録」へ、渡す物を1点ずつ書き出します。行が足りなければ追加してください。ここが決まらないと、以降の欄が決まりません。

ステップ2:第4条の時価を決めて、第5条・第6条の日付を入れる

時価が固まっているなら金額を、固まっていないなら「別途書面により確認する」を選びます。第三者に売ったらいくらかを示す材料を集め、金額は税理士に確定させてもらう順序です(第5章)。所有権が移る時期を3択から選び、引渡しの期日・場所・方法を書きます。ステップ3以降より先に決めておくと、社内の説明が早く済みます。

ステップ3:第8条の費用と、第14条から第16条まで、それに第20条を確認する

費用の負担を3択から選びます。登録自動車を含むかどうかを選びます。重要な財産の処分に当たるかを確認し、決議を取ったなら日付を書きます。相手が自社の取締役なら、承認を取ってから日付を書きます。最後に第20条の損害賠償の範囲に印を付けます。ここを飛ばして締結すると、あとで社内監査に指摘される場所です

ステップ4:紙で交わすか、電子で交わすかを決める

配布テンプレートの末尾は、記名押印でも電子署名でも使える書式にしてあります。次のいずれかに当てはまるなら、紙のままで足ります

  • 現物を渡すその場に相手がいる。工場で機械を引き渡すときに、その場で2通に署名して1通ずつ持ち帰るなら、郵送の手間がそもそも発生しません
  • 相手が電子での取り交わしを望まない。無償で渡す相手に手順を強いる話ではありません
  • 社内規程で押印が必須になっている。規程を変えるほうが先です

そのうえで、電子が向くのはこういう場面です。渡す相手が遠方にいる、退職して出社しなくなった役員に送る、子会社が別の県にある。郵送で往復すると、投函から相手の署名・返送までが相手方の都合で動きます。返送が来ないまま決算期末をまたぐと、経理の資産除却の日付が動かせなくなります。

15. よくある質問(FAQ)

Q1. 「無償譲渡契約書」と「贈与契約書」は、名前を変えると扱いが変わりますか?

A. 変わりません。国税庁は、課税文書に該当するかどうかの判断は文書に記載されている内容に基づいて行い、名称や形式的な記載文言によるのではなく、記載されている文言などの実質的な意味を汲み取って行うとしています。表題を書き換えても、対象物と条文が同じなら判定は同じです。

国税庁は譲渡契約の原因として売買、交換、贈与、代物弁済、法人等に対する現物出資、寄附行為等を挙げており、贈与は譲渡の原因の1つという位置づけになります。社内で通しやすい題を選んで構いません。

Q2. 無償なのに、契約書に時価を書く必要がありますか。印紙が増えませんか?

A. 書いてください。印紙は増えません。

国税庁は、贈与契約書に土地の評価額が記載されていても、その評価額は不動産譲渡の対価としての金額ではないので、記載金額には該当しないとしています。印紙税法基本通達23条も、贈与契約においては譲渡の対価たる金額はないから、契約金額はないものとして取り扱うとしています。

一方で、渡す側の寄附金の額(法人税法37条7項)、受け取る側の受贈益(法人税法22条2項。完全支配関係がある法人からの受贈益の額は同法25条の2第2項)、役員へ渡す場合の消費税の課税標準(消費税法28条3項2号)は、いずれもその時の価額で決まります。書かずに送ると、決算のときに両社で数字が食い違います。

Q3. 1円で売る形にすれば、無償譲渡の税務の問題は避けられますか?

A. 避けられません。法人税法37条8項は、譲渡の対価の額がその譲渡の時における価額に比して低いときは、その差額のうち実質的に贈与をしたと認められる金額を寄附金の額に含めると定めています。

相手が役員なら、法人税基本通達9-2-9(2)が、低い価額で譲渡した場合の資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額も経済的な利益に含めています。消費税法28条1項ただし書も、役員への譲渡の対価が著しく低いときはその価額を対価の額とみなすとしています。

名目上の対価を付けても、差額の扱いが残ります。

Q4. 会社の備品を従業員にあげたら、贈与税がかかりますか?

A. かかりません。国税庁は、贈与税は個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金であり、法人から財産を贈与により取得した場合には贈与税ではなく所得税がかかるとしています。相続税法21条の3第1項1号も、法人からの贈与により取得した財産の価額を贈与税の課税価格に算入しないと定めています。

代わりに所得税の問題になります。所得税基本通達36-15(1)は、物品その他の資産の譲渡を無償で受けた場合のその資産のその時における価額に相当する利益を、経済的利益に含めています。

給与として扱うことになる場合は、源泉徴収と納付の手当ても要ります(第11章)。所得の区分と処理は税理士にご確認ください。

Q5. 親会社から子会社へ無償で機械を渡す場合も、同じですか?

A. 別の定めが入る可能性があります。

法人税法37条2項は、法人による完全支配関係がある他の内国法人に対して支出した寄附金の額を損金の額に算入しないとし、法人税法25条の2第1項は、法人による完全支配関係がある他の内国法人から受けた受贈益の額を益金の額に算入しないとしています。当てはまるかどうかは資本関係の形で決まり、法人税基本通達9-4-2の5が判定の取扱いを定めています。

自社で結論を出さず、資本構成の図を持って税理士に確認してください。契約書の作り方そのものは変わりません。配布テンプレートの第4条で時価を確定させ、第15条で決議を確認する流れは同じです。

Q6. 撤去費用を相手に負担してもらうと、負担付贈与になりますか?

A. 負担付贈与に当たれば、扱いが変わります。

国税庁は、単なる贈与や寄附金は原則として対価を得て行われる取引に当たらないとする一方、負担付き贈与についてはその負担部分を対価として行われる取引になるとしています。民法551条2項は負担付贈与について贈与者が負担の限度で売主と同じ担保責任を負うとし、民法553条は双務契約に関する規定を準用するとしています。無償の契約に有償契約のルールが流れ込む、という構造です。

もっとも、撤去費用を相手に負担してもらうことがここでいう「負担」に当たるかどうかの線引きは、公的な資料から確認できていないため、この記事では断定しません。

配布テンプレートは第8条で費用の負担を3択にし、それが譲渡の対価でも譲渡を受けるための負担でもないことを明記しています。迷うなら甲(渡す側)の負担に印を付けるか、顧問税理士にご確認ください。

Q7. 車を無償で渡す場合、この契約書だけで名義は変わりますか?

A. 変わりません。道路運送車両法13条1項は、登録自動車について所有者の変更があったときは、新所有者がその事由があった日から15日以内に移転登録の申請をしなければならないと定めています。申請するのは受け取った側です。配布テンプレートの第14条で、登録自動車を含むことに印を付け、渡す側が書類の交付に協力する旨を確認したうえで、期限内に申請してもらってください。

Q8. 自社で作ったソフトウェアを無償で渡す場合も、このテンプレートを使えますか?

A. 使えません。配布テンプレートは第2条で対象を動産に限り、無体財産権と営業を除いています。

著作権法61条2項は、著作権を譲渡する契約において27条又は28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定するとしています。特掲の条項が要ります。

印紙税の扱いも変わり、国税庁はコンピュータ・プログラム等についても著作権に含まれるとしているので、その契約書は第1号の1文書になり、契約金額の記載がなければ200円です。ソフトウェア用の書式を別に用意してください。

16. まとめ:無償かどうかより、時価・相手・負担の3点を書き残す

最後に、締結までにやることを順に確かめてください。

  • 配布する無償譲渡契約書は動産専用の全25条。不動産・無体財産権・営業・船舶・航空機は第2条で対象外にしてある
  • 書面にする法的な効果は民法550条。口約束のままなら、まだ履行していない部分を解除される
  • 第4条の時価は空欄にしない。第三者に売ったらいくらかを材料に集め、金額は税理士に確定させてもらう
  • 現状有姿で渡すが、知っている不具合は第11条に書き出す。黙っていると第10条の免責が外れる
  • 費用の負担は第8条で1つ選ぶ。迷うなら渡す側の負担にし、渡した後に用途を指定したり返還を求めたりしない
  • 動産だけなら不課税。不動産・無体財産権・営業・船舶・航空機を足すと第1号の1文書になり、契約金額の記載がなければ200円
  • 渡す側が法人なら時価で譲渡したものとされ、受け取る側は時価で受贈益を計上する。相手が役員なら給与と源泉徴収、消費税の論点が加わる
  • 取締役会設置会社で重要な財産の処分に当たるなら第15条に決議日を、相手が取締役なら第16条に承認日を書き残す
  • 車を渡すなら、移転登録の申請は受け取った側が15日以内に行う(第14条)

税務の結論を契約書が決めるわけではありません。決算のときに経理が「なぜこの金額なのか」を説明できる材料を、いま作っておくことが目的です。

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対象を動産に限定 — 第2条で範囲を切ってあるので、印紙の判定が1つに定まります

時価の確認欄つき — 第4条で金額を書くか別途書面で確認するかを選べます

別紙「本件物件目録」つき — 品名・型式・製造番号・数量・所在場所・価額を1点ずつ書けます

所有権の移転時期を3択 — 第5条で締結日・引渡完了日・指定日から選べます

引渡しと受領確認を分けて条文化 — 第6条と第7条で、渡した記録が残ります

費用の負担を3択 — 第8条で運搬・撤去・据付けの負担者を決められます

現状有姿と告知欄 — 第10条と第11条で、免責と告知を対で残せます

登録自動車の移転登録つき — 第14条で期限と協力義務を確認できます

社内手続の記録欄つき — 第15条の決議日、第16条の承認日をそのまま書けます

税務の確認先を明記 — 第17条で、契約書が税務を確定させないことを両者で共有できます

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本記事および配布テンプレートは一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談・税務相談に代わるものではありません。具体的な事案の適法性や税務上の取扱いについては、弁護士・税理士にご確認ください。

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